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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
110/213

魔王ライト と シドの帰還

シドの襲撃を受け、中央崇拝者達はパニックに陥っていた。


「おい!!侵入者はどうなってる?!」

「ダメだ!強すぎる!!この施設での迎撃は無理だ!!」

「早く逃げろ!!もうすぐそこまで来てるぞ!!!」

「戦闘部隊がほぼ全滅させられた!早く脱出しろ!!!」


施設内の中央崇拝者達は大慌てでトラックに乗り込み、カモフラージュされていた脱出口から逃げ出そうとする。

全力でトラックを加速させ、地上まで到達すると脱出口から飛び出していった。

脱出口から飛び出た勢いで数秒浮き上がり、地面にタイヤが付いた衝撃でトラックが大きく揺れる。

「このままバハラの拠点まで移動すれば・・・!!!!」

生き残る希望を口にしようとすると、上空から無数の弾丸が降り注ぎ、トラックの運転席や動力部分に命中する。

荒野仕様とは言え、弱点部分に正確に着弾した弾丸はその威力を遺憾なく発揮し重要機関を蹂躙する。

運転席に座っていた者は即死し、傷つけられたエンジンは燃料を吹き出し引火。一瞬のうちに爆発を起こし乗員全ての命を吹き飛ばした。


後続のトラック達も同じ運命を辿り、トラックの残骸で脱出口が塞がれてしまう。


「クソ!外にも敵がいるのか!!装甲車を使え!!載せられるだけ積み込んで脱出するぞ!!!」

この施設にある最も防御力の高い車に乗り換え、別の脱出口から離脱を図る。

全面に装甲が施され、エネルギーシールド発生装置も搭載されている装甲車には、この施設の重要データや指揮官等が乗り込み脱出しようとする。

「この襲撃は一体なんなんだ?!」

「まさか・・・ダゴラ都市が裏切ったのか?」

「バカな!!!あれだけ金を払ったんだぞ!!!」

「いや・・・最近喜多野マテリアルの部門長がダゴラ都市に来ていると言う情報がある・・・・まさか我々の存在が露見していたのか?」


彼らもまさかイザワの依頼と遺物調査のついでで攫って来た少年と、その相棒にボコボコにされているとは考えていなかった。

兎に角別の拠点に身を隠さなければ命が危ない。

企業に捕らえられてしまえば、死よりも恐ろしい目に合うのは分かり切っている。

「この車は大丈夫なんだろうな!」

「はい、通常の荒野仕様車とは比べ物にならない程頑丈です。普通の銃器では掠り傷一つ負いません」

運転手はエネルギーシールドを最大出力に上げ、脱出口を目指す。


脱出口を通り抜け、荒野に飛び出すと同時に無数の弾丸が降り注いできた。

しかし、エネルギーシールドがその全てを弾き返し、特殊弾頭ですらも強固な装甲で弾き飛ばした。

「おおお!!」

これならば安心だと乗員たちも盛り上がる。

猛烈な弾丸の雨を抜け、そのまま荒野を走り去ろうとした。


が、荒野を全速で走る装甲車に、一発の弾丸が撃ち込まれる。




ライト視点


岩場の上空に陣取り、敵アジトから脱出を図る車をライトは次々に破壊していく。

脱出口は全部で3つ、全てが都市とは真逆の方行に作られている様で、その全てを狙い撃てる場所にライトは居た。


地下から上がって来る車の情報を情報収集機で感知し、その弱点部位を調べ、その部分に正確に弾丸を送り込んでいく。

当然運転席も入念に攻撃し、動力部を傷つけられなくても運転が不可能な状態に追い込んでいった。


3つ中2つの脱出口が破壊されたトラックで埋まり、もうそこからは脱出できないだろうと考えていると、最後の一つから少し大きめの反応が出て来ようとしているのが分かった。


(これで最後かな?)


ライトは両手のハンター5とA60を向け、車が脱出口から飛び出してきたタイミングで一斉に攻撃を行った。

しかし、その車は装甲車の様で、普通の弾丸はエネルギーシールドで弾かれる。特殊弾頭を使用してもエネルギーシールドに減衰され、装甲板に弾かれてしまい止めることが出来ない。

4丁の銃で執拗に攻撃を加えるも、表面に凹み程度の損傷しか与えられず、ライトは普通の攻撃での装甲車の破壊を諦める。


(でも、逃がさない)


装甲車が遠ざかっていき、辺りに被害が出ない事を確認したライトは、ハンター5を構え、専用弾を撃ち出した。

過剰ともいえる威力を発揮するハンター5専用弾は、正確に宙を飛翔し逃げていく装甲車に命中。

エネルギーシールドも装甲板も貫通し、装甲車内部で爆発。

装甲車に乗っていた者たちは一瞬で蒸発し、爆圧に耐え切れなかった装甲車も木端微塵に吹き飛んでしまった。


ライトの怒りを表したような炎は、着弾点付近を駆け抜け辺り一帯を焼き払った。


ターゲットの消滅を確認したライトは、そろそろシドさんも出てくるかな?と考えていると、キクチから通信が入る。

『おいライト。今の爆発はお前か?』

「はい、そうですけど」

『ワーカーチームも到着した。お前は攻撃を中止して降りてこい』

「そうですか・・・・わかりました」

『・・・はあ・・・・遠くから見てたが・・・お前、古代アニメに出てくる魔王みたいだったぞ?』

「ははは、それは大袈裟ですよキクチさん」

『・・・・・・・まあいい、部隊をアジトに突入させる。シドと連絡は取れるか?』

「はい、問題なく」

『わかった。伝えてくれ』

「わかりました」

ライトは通信を切り、イデアに外の状況を知らせ、キクチが居るであろう場所まで駆けて行った。



シド視点


シドは出口を目指し疾走する。


もうすぐ出口かと言う所で、外からこのアジトに入って来る者たちを感知した。

<ワーカーチームか?>

<その様ですね。いきなり接触しては攻撃される恐れがあります。ユックリ向かいましょう>


シドはイデアの言葉に従い、速度を落として出口に向かっていく。

暫く進むと、ワーカーチームの先頭と接触、両手を上げながら声を掛けた。

「俺はワーカーのシドだ!敵じゃないから撃たないでくれ!」


そういうと、先頭を歩いていた二人が仲間に何か言うとこちらに向かって走って来る。

「シド!」「シド君!」

それはギルド天覇のヤシロとレオナだった。

「あ、二人共お久しぶり?です」

2人を認めたシドは取り合えず挨拶をする。

「軽いなお前は!!中央崇拝者に攫われたと聞いた時は驚いたぞ!!!」

「本当だよ!一体何があったの?!」

「ええっと・・・アイツ等が探してる遺物を何故か俺が持ってると思われていた様で・・・それと、一年くらい前のイザコザのせいでもあります・・・」

イデアの事を言う訳には行かない為、嘘にならない程度に誤魔化すシド。

「そうか・・・」

「それにしてもひどい格好よ?」

今のシドは返り血で真っ赤に染まっており、心配されても可笑しくは無い。

「あ、大丈夫です。ご心配をおかけしました」

シドはそういい、2人に軽く頭を下げる。

「いや、心配はしてねーよ」

「うん、シド君だしね」

二人にそっけなく言われ、シドはガクっと力が抜けた。

「あ・はははは・・・・・」

シドは複雑な表情で頭を掻く。

<仕方ありませんね。この2人はシドの戦闘能力と頑丈さは嫌と言うほど知っていますから>

<それでも、ちょっと寂しい>

<それは大丈夫でしょう。ライトに会えば解消されます>

<ん?どういうことだ?>

<それは後のお楽しみです>

<?>

シドがイデアと話していると、ヤシロがシドの手にあるモノに気づいたようだ。

「それよりシド。その手に持ってるのはなんだ?」

「ああ、これですか?」

シドはあのサイボーグの頭をヤシロに見せる。

「これは中央崇拝者の頭です。サイボーグなんで記憶媒体は生きてるんじゃないかと思って」

「・・・なるほどな。メンバーに義体者がいたのか・・・」

「あ、それとですね。奥に人体実験でもやってたのか、人が閉じ込められている場所がありました。助けてあげて下さい」

シドは奥の部屋に監禁されている人達がいることをヤシロ達に伝える。

彼らなら無下にはしないだろう。

「!・・・わかった。俺達は掃討戦と同時に救出へ向かう。この施設は外との通信が制限されているらしい。悪いがキクチに伝えてやってくれないか?」

「わかりました。粗方片付けましたけど、まだいるかもしれないんで気をつけて下さい」

「ああ、また後でな」

ヤシロはそういうと、追いついてきたメンバーと共に奥へと進んでいく。

その後ろ姿を見送り、シドは外を目指して駆け出していった。


シドが外に出ると、幾つもの車が止まり、大勢のワーカー達が警戒していた。

シドが出てくると、一斉に銃を向けられるが、シドは両手を上げて自分の所属を明かす。

「俺はワーカーだ!ワーカーオフィスのキクチって人と話したい!!」


その声が聞こえたのか、遠くからキクチが走って来る。


「お~~い!シド!!!」

「お!キクチ!!」

キクチはシドの元まで走って来ると、周りのワーカー達に説明を行ってくれた。

「コイツは大丈夫だ!皆、辺りの警戒に戻ってくれ!」

キクチがそういうと、シドに銃を向けていたワーカー達は銃を下ろし辺りの警戒任務に戻っていく。

「・・・・さて、何があったか話してもらうぞ」

「ライトから聞いてるんじゃないのか?」

「いや、アイツも焦ってる様だったからな。まだ詳しくは聞いてない・・・・・・・・それに、お前のその格好・・・何やってたんだ?」

「拠点を襲撃してきた奴らと戦ったんだよ。銃も無かったから素手で戦ったからな、返り血が酷かったんだ」

「・・・まあいい、こっちに来い」

シドはキクチに連れられ、大型トレーラーの中に入る。

キクチにサイボーグの頭部を渡すと、着替えを渡され全身の血痕を落とすようにと簡易シャワー室に放り込まれる。

「俺はこの頭部の処理をしてくる。勝手にどっか行ったりするんじゃねーぞ」

外からキクチの声が聞こえ、了承の返事を出しシドは体を洗い出す。

<しかし、イザワの野郎・・・思い切り殴りやがって・・・>

<まあ、一発ですが仕返しできたのですからいいじゃないですか>

<そうだけど・・・・できればもっと痛めつけてやりたかったぞ>

シドはイザワの土手っ腹をぶち抜いてもまだ気が済んでいない様だ。

<シドさん。戻って来たの?>

<ライトか。ああ、今キクチにつれられてトレーラーの中にいるぞ>

<わかった。ボクもそっちに行くよ>

ライトも無事に役目を果たしてくれたようだ。

<ブルーキャッスルのメンバーはほぼライトが討伐しました。これでもう襲ってくる心配は無いでしょう>

<そうか、それは上々>

シドは今日の面倒事はこれで終わったと考え、この後何を食べるかと考え始める。



キクチ視点


「統括、今シドからサイバネティック化した中央崇拝者の頭部を預かりました。至急そちらに送ります」

『わかりました。奪い返されることの無いようにお願いします』

「もちろんです。それでは」

キクチは統括への報告を終わらせると、シドから預かった中央崇拝者の頭部をケースに収め、ワーカーオフィスの警備部門責任者へ渡す。

「これを必ず統括の下に届けてくれ。後は統括が処理してくださる」

「了解した」

警備部門の者たちは言葉少なく頷き、すぐ様、車に乗り込み都市へと戻っていく。

ワーカーオフィスの警備部門は腕利きワーカー達の再就職先となることが多く、彼らの腕と信頼性は抜群だ。

必ず荷物は統括へと届けられるだろう。

キクチは警備部門が走り去るのを確認した後、シドが待っているトレーラーまで戻っていく。


「さて、シド。詳しい話・・・を・・・・・・」

キクチがトレーラーの中に入り、シドから聞き取りをしようとするが、その目に飛び込んできたのは、床に正座させられ、ライトに懇々と説教されているシドの姿だった。


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