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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
102/214

遺跡探索訓練 ワーカー志望生 

次の日の休日は、体を休める者、防壁内へ繰り出す者、自室で訓練に精を出す者など、各々が自由な時間を過ごした。


そして、遺跡探索訓練当日。


参加者全員を乗せた車が荒野を走っていく。車の中で今日のメンバー割り振りが発表され、それぞれの組み分けに従って行動するように言い渡された。

ワーカー組の引率者はタカヤ・ユキ、アズミ・ミリー、アリア・リン、ラインハルト・キサラギのチームに分かれることになった。

アリアとラインハルトが別のチームになっているのは、キサラギとリンを組ませるとそのチームがほぼ素人チームになってしまう為この組分けにしたのだった。


遺跡外周部に到着し、ライトは遺跡の様子を探る為に先に遺跡に入って行き、訓練参加者はそれぞれのチームに分かれて整列する。

まずはタカヤ・ユキチーム、彼らはワーカー志望者3名とスラム組2名。

次にアズミ・ミリーチームはワーカー志望者2名とスラム組3名

アリア・リンチームはワーカー志望者3名とスラム組2名

キサラギ・ラインハルト組はスラム組5名となる。

整列したチームを見渡し、シドは今日の訓練の趣旨を伝える。

「今日はチームリーダーに従って遺跡の中でモンスターと戦ってもらう。遺物を発見した場合の持ち帰りは自由、でもリーダーの指示は絶対だ。違反者は直ぐにリタイアとし、即刻車まで連れ戻す。いいな?」

「「「「「はい!」」」」」

ワーカー組以外の参加者はしっかりと返事を返す。

この3週間と少しの訓練である程度の練度は確保できたとシドは満足げに頷いた。

「リーダーはそれぞれ ユキ、アズミさん、アリア、キサラギとする。探査時間は8時から15時まで、16時までには必ずこの車まで帰還する事。もし守れなかったらそのチームは追加訓練だ。死んでも引きずり回してやるからそう思え!」

「「「「「「はい!!」」」」」」

シドの言葉にワーカー組も震え上がる。後でしっかり時計が合っているか確認しておこうと全員が思った。

「よし!それでは8時になるまでは探索方法の打ち合わせにでも当ててくれ。時間になったら各組自由に行動開始だ」

シドがそういうと、各チームはリーダーを中心に今日の行動方針を固めていく。


「シド、今日の訓練は実戦形式だが、安全マージンはどれくらい取れてると判断してるんだ?」

一緒に付いてきていたキクチがシドに質問する。

「ん~、俺的にはギルドの引率付きで遺跡に潜ってるくらいのマージンは取れてると思ってるぞ?たぶんだけどな」

「そうなのか?・・・まあそうなんだろうな、ワーカー組全員が中層で活動できるくらいの実力は持ってるわけだからな」

「キサラギは遺跡探索の経験がないから少し不安だけどな。その代わり実力も高くて判断能力も優れてるラインハルトを付けた。リンさんにはアリアが付いてるし。キサラギチームには俺が付くし、アリアチームはライトが気を配る様にしてるから大丈夫だろう」

「ほぉ~」

キクチは良く考えられていると評価する。しかし、この組分けを考えたのは当然イデアだ。訓練成績と遺跡での活動時間を考慮し、一番バランスが取れるように組分けを行った。

「俺も準備するか・・・」

キクチはそう言うと、持っていたバッグを降ろし中から4つのドローンとモニターを取り出す。

「なんだそれ?」

シドはキクチの作業を見ながら質問した。

「これは偵察用ドローンだ。設定した人物を追跡してこのモニターに投影してくれる」

キクチは遺跡内での訓練の様子を記録する為、ドローンを持ち込んでいた。

「へ~」

興味深そうにドローンを見るシド。

ドローンは羽も無く横に広い楕円形の形をしており、跳ぶことも転がる事も出来そうにない。しかし、恐らく謎技術で上手い事追跡するのだろうと漠然と予想する。

「こいつの稼働原理は空走バイクと一緒だ。光学迷彩・音響迷彩・熱感迷彩が搭載されていて、中層のモンスターにも気づかれることは無い・・・・・・・以前だったらな」

キクチは今のファーレン遺跡中層でコレの迷彩が通用するとは考えていない。しかし、浅層なら大丈夫だろうと考えていた。


キクチの準備が終わるころ、偵察に向かっていたライトが帰って来た。

「ただいま。特に問題なさそうだよ。いい感じにモンスターの気配もあったから、ただ散歩して帰ってくるって事にはならないと思う」

「お、そうか。いい訓練になりそうだな」

キクチは2人の会話を聞いて少し胃が痛くなってくる。

(コイツ等のいい感じの気配ってなんだ?100匹単位でたむろしてるんじゃないだろうな?頼むぞ?)

キクチは今までの経験からシドとライトの基準が自分達とは大幅に狂っていると考えている。

ライトの言う良い感じとはどの様な感じなのか非常に心配だった。しかし、訓練内容には口を出さないと最初に約束した手前、何も言うことは出来ない。

どうか無事に終わりますようにと願いながらキクチはドローンの設定を終わらせる。

すると、ひとりでにドローンが浮き上がり姿が見えなくなる。その様子を見ていたシドとライトは驚きの声を上げた。

「「おおぉ~~~・・・・」」

<まあ、ここにあるって事は分かるけどな>

<そうだね、空間サーチを使えばモロバレだね>

シドは強化された感覚器で、ライトは唐澤重工製の情報収集機でドローンが何処にあるのかがはっきりと認識できていた。

<でもこれならモンスターの的になることはなさそうだな>

<うん、浅層なら問題なく使えると思うよ>

キクチは、消えて見えなくなっているハズのドローンを目で追う2人を見て(コイツラやっぱりおかしい・・・)と思うのだった。


時刻は8時を回り、それぞれのチームが遺跡の中へ突入していく。

ここに遺跡探索訓練が開始された。



ユキ・タカヤチーム


「この先にラクーンが5体いるよ。皆、焦らずに行動すれば大丈夫だから集中して」

ユキがそうメンバーに声をかける。

しかし、初めての遺跡でモンスターと戦う事に緊張感を隠せない5人。

そこにタカヤも声をかける。

「安心しろ。あの2人に比べれば屁でもねーから」

その一言は非常に効果があった。この3週間、最初はライトにボコボコにされ、最近はシドにも揉まれた彼らはラクーン程度に後れを取るほど弱くは無い。緊張のあまりミスさえしなければなんて事の無い相手だ。

若干の怯えを見せていた彼らだったが、その怯えは気合へと変わっていった。

「よし、行くよ」

ユキの合図で彼らは全員戦闘態勢に入り、モンスターへと向かっていく。


アズミ・ミリーチーム


「訓練だと瓦礫の上を乗り越えて走ったけど、遺跡では極力控える事。あれは逃走時の最終手段であって、普通の探索は陰に身を隠しながら移動する事を第一に考えなさい。モンスターは自分たちが先に発見して、必ず先制攻撃を行えるように心がける事」

アズミが初心者組に説明しながら遺跡の中を進んでいく。

遺物が残っていそうな場所や、モンスターに狙われやすい地形などを説明し徐々に遺跡の奥へ進んでいった。


「止まって」

アズミが小さく指示を出し、全員が動きを止める。

アズミが所有している情報収集機が、モンスターの気配を捕えたのだ。

「向こうにモンスターがいるわ。この反応ならラクーンね・・・あなたたちで討伐してみなさい」

そういわれた初心者たちは緊張に顔をこわばらせる。

「大丈夫。向こうは気付いていないし、シド君やライト君みたいな理不尽な存在じゃない。でも、ある意味で彼等より危険な存在だから、しっかり狙って。落ち着いてやれば必ず倒せるから」

ミリーが彼らを落ち着かせ、しかし、適度な緊張感を与えながら討伐の準備をさせる。

全員が配置につき、ラクーンの急所を狙って一斉に引き金を引いた。


アリア・リンチーム


「私たちは遺物の収集は捨てるわ。このチームにシーカーはいないから索敵も難しいし隠し扉を発見することも出来ないからね。だから、モンスターを狩ることを最優先にする」

アリアはそういい、目的の場所まで移動していく。

その間は極力モンスターとの接触を避け、条件に合う建物へと入って行った。

「ここでモンスターを狩るんですか?」

ワーカー志望の1人がそうアリアに聞いて来る。

「そうよ、ここなら一方的に攻撃できるし、隣の建物に退避することも出来るからね」

アリアが選んだのは5階建ての建物で、その屋上に陣取ることにした。隣の建物までの距離は凡そ2.5m程、ここにいるメンバーなら難なく飛び移れる距離だった。

「なるほど、待ち伏せて攻撃するわけですか」

リンはアリアの考えを理解し、そう発言する。

「そ。安全確保と攻撃的有利が取れるこの場所でモンスターを討伐するわ」

しかし、遺物にも興味があったメンバーから不満の声も上がる。

「でも、遺物の収集にも興味が・・・・」

「その考えは否定しないわ。でも、さっき言った通り私たちのチームにシーカーがいないのよ。目と耳が無い状態で遺物捜索なんて自殺行為以外の何物でもないわ」

アリアはこれまでの訓練でシーカーの存在の重要性を学んでいた。

「・・・シーカーって戦闘じゃ役に立たないんじゃ?」

ワーカー志望の彼は養成所で習った知識を元に発言する。

「あんた、ライトの前でそれが言える?」

「あ・・・・・」

彼はシーカーであるライトに手も足も出なかった事を思い出す。

「ライトだけじゃない。天覇のレオナさん、それにユキもシーカーよ。彼女達が戦闘の役に立たないと本気で思うの?」

「・・・・・・」

「シーカーの存在は遺跡探索では必須の存在よ。その間違った考えは今すぐに捨てる事ね・・・・・・・・それじゃ、配置について。私が撤退の合図を出したら全員従う事。いいわね?」

「「「「「「はい!」」」」」」

「よし!散!」

アリアの合図で全員が攻撃位置につき、正確にモンスターの急所に攻撃を当て次々とモンスターを討伐していった。



キサラギチーム


ラクーンの群れを討伐し、一息つくキサラギ。

耐久力が一番高いキサラギを囮に、ドーマファミリーのメンバーが連携して素早くモンスターを仕留めていた。

「キサラギさん大丈夫ですか?」

ずっと前方で攻撃の的になっていたキサラギをメンバーの1人が心配する。

「ん?問題ねーよ。ラクーンの攻撃なら避けられるし。それに、ラインハルトのフォローが完璧だからな」

キサラギはそういい、ラインハルトに目を向ける。

「いや、まさか貴方だけが前面に出て行くなんてと思ったけど、このレベルなら問題なさそうだね」

ラインハルトは接敵したモンスターがキサラギを狙う隙をつき、危険度の高いモンスターを積極的に討伐していた。

そして、このチームの連携度もかなり高い。

元々スラムの組織メンバーであることが理由だろうが、連携に全く違和感がなかった。

それぞれが自分の役割を理解しそれを熟している。ワーカー同士の連携とは一線を画す、まさに組織としての動き方だった。

これはこれで参考になるとラインハルトは考える。


「あ、なんか他のワーカーが近づいてくるっすよ?」

メンバーの1人がそういうと、キサラギを目掛けて弾丸が飛んで来る。

あの地獄の様な訓練を耐え抜いたキサラギが、今更ただ撃ち込まれただけの弾丸を食らうわけがない。体を少しずらして避け、弾丸が飛んで来た方向を見る。

そこには3人のワーカーがおり、銃を構えてキサラギを狙っていた。

「おいビリー。記録を残しておけ」

キサラギは部下に小声で指示を出し、情報収集機を持つ部下は記録を取り始める。

「おい、俺たちはモンスターじゃない。なぜ撃って来た?」

本来なら撃ち返してしかるべきだが、今はワーカーオフィス主導の訓練の真っ最中だ。スラムの論理でドンパチ始める訳には行かないと、キサラギは会話を試みる。

「うるせーよ!スラムのゴミが!!!」

何故か憎悪を滾らせた男は、キサラギに向かって銃を撃ち放つ。

「チッ!」

キサラギは彼らの射線を見切り銃弾を回避する。

「よく分らんがやるぞオメー等!!!!」

部下に指示を出し、戦闘を開始する。

相手の3人は正式なライセンスを取得したワーカーなのだろう。だが、シドとライトの扱きを受けたこのメンバー相手に3人では少なすぎる。

倍の人数が居ても結果は変わらなかっただろう。ラインハルトが手を出すまでも無く、早々に決着が付き3人は物言わぬ屍として地面に転がっていた。

「なんだったんだ?」

身に覚えのない襲撃に首を捻るキサラギ。


そこに別の者が現れ、声をかけてくる。


「あ~・・嘆かわしい、仲間たるワーカーを人モドキ風情が殺すなど、許されることではないな」


声のする方を見ると、10人は超えるワーカーチームがこちらを見据えていた。


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― 新着の感想 ―
BCキター!(BC壊滅の予感にワクテカ) ハンター増やすための講習でハンターが激減しそう。
前々から名前だけ出てたブルーキャッスルかな 向こうからすれば冤罪吹っかけて成敗っ!というとこなんだろけど、残念ながらキサラギたちは新しい訓練法の試験員という扱いなので厄介な時に手を出しましたね
101と同じ内容です
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