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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
100/203

ヤシロ 訓練体験終了

100話達成しました


いつもお読みいただいている方々、これからもよろしくお願いします

戦闘訓練1本目が終了した後、ヤシロが2人の攻撃を躱すコツを全員に教えていく。

今までの実戦経験が無ければかなり難しい内容なのだが、この2週間本物の修羅場の様な訓練を行って来た8人はヤシロの話に納得した様な表情を見せる。

「なるほど・・・威力の弱い弾幕には瓦礫を盾に、高精度射撃には意図的に撃ち込まれる箇所を誘うって事ですね」

ラインハルトはそう言いながら、自分ならどう対応するかを考えていく。

「非殺傷弾なら瓦礫を貫通する事は無いからな。パワー系とスピード系で組んだら上手くいくんじゃないか?」

「そうだね。ちょっと組み合わせ考えてみようか」


それぞれが対シド&ライト対策を考えていく。

「んで、あの2人は何やってんだ?」

ヤシロは、少し離れた所で頭を突き合わせているシドとライトの方を向く。

「ああ、あの2人はどうやってヤシロを撃破するか考えてるみたいだよ。よかったねヤシロ。格上と認識されてるじゃない」

レオナはそういいながらヤシロに笑顔を向ける。

しかし、あの2人に狙われることが確定したヤシロは勘弁してくれと空を仰ぐことになった。




その後訓練は続き、ヤシロのアドバイスを元に行動すると、劇的に生存時間が伸びることになった。

30分という時間の中だけならば、シドとライト2人を相手にしても複数のメンバーが生き残る事にも成功しており、ヤシロとレオナの指揮でライトには直接攻撃を仕掛ける事が出来るようになり、数発の被弾も与えている。


今まで以上に目に見える成果に、全員の疲れた表情の中にも満足感が浮かんでいた。

ヤシロは唯一 一度も撃破されずに訓練を終了し、全員の尊敬の眼差しを一身に受ける事となった。

しかし、ヤシロ自身は立っている事すら億劫なほど疲れ切っており、今すぐにベットに倒れ込みたいという思いを押し殺し根性で立っていた。

「本日はここまでにしよう。明日からはまた俺かライトどちらかが模擬戦を担当する事になると思うからよろしくな。リンさんに関しては初参加だから1週間は俺達が連れて帰るよ。もう立てる状況じゃ無さそうだしな」

シドとライトは、車にリンと道具を積み込み走り去っていく。

この場にいる全員は自分の足で宿まで帰らねばならない。これも訓練の内と、重い足を動かし宿まで帰ろうとする。

メンバーと一緒に宿まで行こうとしていたヤシロにキクチが話しかけてきた。

「ヤシロ、おつかれさん。ちょっと車で話を聞きたい、宿まで送ってやるからレオナと一緒に来てくれないか?」

久しぶりに死ぬ気で走り回り疲労困憊のヤシロからすれば、天の助けともいえる言葉に飛びつきそうになるのを堪えて冷静に返答する。

「ん?ああ、この訓練のレビューか?いいぞ」

「よし、車の中へ入ってくれ」

そういい、2人をオフィス専用車の中に案内する。


キクチは2人に椅子を勧め、この訓練の評価を聞く。

「それで、高ランクハンターとシーカーの評価を教えて欲しい」

「効果的だと思う。俺でも足にキてるんだぞ、やり遂げられたらかなりの成長が見込めると思うな。期間は1ケ月だったか?体力がどこまで向上するかはわからんが、生き残るという一点においてはこれ以上無いと思う」

「そうだね。体力的にも回復薬のブーストでかなり鍛えられると思うよ。これはハンター、シーカー関係なく恩恵があると思う。でも、このままワーカーオフィスの訓練に当てはめるのは無理だろうけどね」

ヤシロとレオナは、この訓練の有用性を認識しながらも、オフィス主導の訓練施設にこのまま導入する事は難しいと見解を示した。

「だよな~・・・・」

キクチもその辺りの事は理解しており、此処からどうするかについて頭を悩ませる。

この訓練、そのまま実施するのは無理があり過ぎる。まずは、あの2人が必須だと言う1箱100万コールの回復薬だ。

それを参加してくる訓練生全員に配布すれば、それだけで膨大な予算が必要となる。

それと訓練強度があまりにも高すぎると言う事。やる気がある者達を厳選したにもかかわらず初日でワーカー志望のメンバーが半分にまで減少した事を考えれば、その辺りも調整が必要になってくるだろう。

そして、最大の問題点が、

「教官をどうするか・・・だな」

ヤシロがそうキクチに言う。

「・・・・・」

ヤシロの言葉にキクチは眉を寄せ頭を悩ませる。

「だよね~、あの訓練を行おうと思ったらさ。教官は私たちクラス以上の実力が必要でしょ?最低限で考えて。しかも、訓練生と同じようにコースを走って、戦ってそれを平然と熟せる体力と実力がある教官。・・・・ヤシロ、心当たりある?」

「ねーな。ゾシアのトップクラスにならいるだろうけどよ」

「止めてくれ・・・・」

ダゴラ都市3大ギルドのトップである、ゾシアの名が出てきたことに顔をしかめる。

あのギルドのトップランカーに教官など頼もうモノなら1日で幾らかかるか分かったものではない。それに、クリスティア・マガラの方針ではギルドを頼ることはしない方向で考えなければならないのだ。

明日の会議ではその辺りの事もよく話し合わなければならない。

「とはいっても、質を落としたら意味が無くなるだろうし・・・調整が難しそうだな」

「キクチ、頑張ってね」

他人事だと思って気軽にほざく目の前の2人に怒りが湧いてくる。

しかし、事は喜多野マテリアル直属の案件だ。出来ませんは通らない。ゴンダバヤシからの指令で動いている限り、何が何でも形にしなければならなかった。

(・・・・・・ん?・・・・それなら喜多野マテリアルの兵隊を借りればいいんじゃないか?)

喜多野マテリアルの兵隊であれば、ワーカー達より高レベルの者たちを大勢抱えているはず、それならば彼らを教官として借り受ければ何とかなるのでは?とキクチは考えた。

(これも提言するべきだな)

頭の中で会議で報告する内容を纏め、キクチは会話を〆る。

「よし、2人共レビュー提供に感謝する。このまま宿まで送るからゆっくりしていってくれ」

「おう、助かるぜ」

「ありがと、もうへとへとだよ」

キクチの言葉にヤシロとレオナは体の力を抜き、椅子に体重を預ける。

ランク40以上のこの2人をここまで疲労させるシドとライトにある意味で感心するキクチだった。



天覇所属の3人は、宿に帰り夕食と入浴を終わらせた後、一室に集まっていた。

「リン、体の方は大丈夫か?」

「はい・・・なんとか動けるようになりました」

「食事もちゃんと取ってたし、回復薬は多めに飲んでおくんだよ?そうじゃないと明日の訓練までに回復しないからね」

「はい、わかっています」

レオナは2週間ほどこの訓練に参加していた者としてアドバイスを送る。

「しかし、ワーカーとはこうも過酷なものだったんですね。私の認識が甘かったと思います。ですが、必ずやり遂げて見せます」

ふん!と気合を入れるリン。

「そうか、頑張れよ」

ヤシロはそういうが、心の中では過剰訓練では?と思っている。レオナもランク10の者が受ける訓練としては度が過ぎていると思ってはいるが、自分たちのチームに入るなら是非とも耐え抜いてほしいと思っていた。

「明日は今日ほど理不尽な戦闘訓練にはならないと思うけど、他の皆にシッカリついていくようにね」

「はい!それでは、私はこの辺りで失礼します。明日に備えて早めに休もうと思います」

「おう、しっかり体を休めておけよ」

「うん、おやすみなさい」

リンは退室し自分の部屋に戻っていった。

「・・・・・思ったより根性据わってたな」

「そうだね、でもヤシロ。ずいぶん若い子に目を付けたじゃない?」

レオナはニヤニヤしながらヤシロにそういう。

「バカな事言ってんじゃねーよ。お守りで遺跡に同行したら何故かやたらと懐かれただけだ」

「ふ~ん」

ヤシロの言い訳を聞いてもレオナはニヤニヤを止めなかった。

「ふん・・・・・しかし、この訓練で俺の認識も改めねーとな」

ヤシロはそういい、今日の事を振り返った。

シドとライトとの模擬戦。他のメンバーは生き残ったことに賞賛してくれたが、実質は逃げ回っていただけに過ぎない。最後の方では2人の動きにも慣れ始め、ライトを追い詰めるくらいの所まで持っていくことが出来たのだが、本来ならヤシロがあの2人を打倒しなければならないはずだった。

しかし、理不尽といっても良い運動能力と攻撃能力を持つシドとライトに、翻弄されてしまったと言うのが実情である。

自身の鍛え直しは当然として、装備に関してももう一度考え直さないといけないと感じていた。

「そうだね、私もライト君の真似をしてみようかな。方法は教えてもらったし」

レオナはライトに時間圧縮と並列思考に関する鍛錬法や、エネルギーシールドを使用した曲弾の撃ち方の方法を聞いていたのだった。

「なんだ、ライトの真似っこするのか?」

ヤシロはからかう様にレオナに言うが、彼女は意に介さなかった。

「そうだね。もう後輩とかそんなことを気にしてる余裕はないって思ったから。ユキはライトの技術と私の戦い方を学んだ。このまま何もしなかったらどんどん差を縮められる・・・ううん、追い抜かれる」

レオナは一緒に戦った後輩から追い上げられるプレッシャーを感じていた。

ヤシロも今日の模擬戦を一緒に戦ったメンバーの成長率には目を見張ったのだ。シドとライトの攻撃のいなし方を教えたのだが、本来言われてすぐできる様な事ではない。しかし、各々がアドバイスを自分の中に落とし込み、回数を重ねるごとに的確に対処できる様になっていく姿を目の当たりにしていた。

「・・・そうだな。タカヤとラインハルトの上昇率は異常だった。他の奴等も中層で活動するのに申し分ない実力だし、キサラギなんかワーカーでも無いのにあの実力だ・・・・・俺達だけの問題じゃねーぞ、オフィスの訓練所が軌道に乗ったら天覇もその他大勢の組織になりかねない。あれで全員ランク20にも達していないってのが信じられねーよ」

「訓練が終わった後のリンの実力を見れば大体の目安が付くね。私たちは今後の予定を考えとこうか」

「そうだな。リンには是が非でもこの訓練をやりきってもらいたいね」

始めはワーカーに成ると言い出したお嬢様を諦めさせるためにこの訓練に放り込んだと言っていい。

しかし、リンの思わぬやる気と根性を見たヤシロは考えを変える。

自分たちのギルドの新人教育に影響を与えうると考え、上層部をどう動かすかを考えるのだった。


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