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クラスのマドンナのお見舞いに行く

 ピーンポーン。ピーンポーン。


「一回押すと二回鳴るタイプか」


 天重さんの家の前までたどり着き、インターホンを鳴らす。

 彼女の両親は仕事で忙しいみたいだし、一人で家にいる可能性が高い。

 だからプリントを届けるだけならその主を伝える手紙と一緒にポストに突っ込むだけでも良いのだが、根がお節介気質の俺は一応天重さんの体調の確認もしておきたい。


『……はい』


 出た。天重さんの声だ。

 ということはやはり天重さん一人か。


「天重さん?紗良斗だけど。プリント届けに来たよー」

『紗良斗くん…。今出ますね』


 しばらくして扉が開き、厚着して熱下げシートをおでこに付けた天重さんが顔を出した。

 ……一目でわかるくらい顔が赤い。結構熱があるようだ。


「わざわざありがとうございます」

「気にしないでいいよ。君の家を知ってるの俺だけだったし。……風邪、酷そうだね」

「……はい。正直、立ってるだけでも辛いです…」


 プリントを渡しながら言うと、風邪で目をトロンとさせている天重さんは弱々しく頷く。

 それはいけない。早くベッドに横になってもらわないと。


「じゃあ早く家の中に戻らないと。寒いでしょ」

「はい。それじゃあ……」

「あと、家にあがってもいい?」


 俺の言葉に目を見開く天重さん。

 一瞬警戒した様子を見せるが、俺がプリントを持っていた方とは逆の手に持っているビニール袋を見て、それはすぐに解かれた。


「もしかして……」

「うん。風邪が軽そうならプリントを届けるだけのつもりだったけど……そんな様子じゃ、マトモにご飯を食べれてないでしょ?」


 俺はここに来る前に寄ったスーパーで買った食材たちを見せて言う。

 これはもう、誰かが傍についてあげてないと駄目な奴だ。


「いいかな?家にあげるのが嫌なら、俺んちでご飯だけ作って持ってくるけど」

「……………ありがとう、ございます。お願い、出来ますか?」


 やはり心細かったのだろうか。

 天重さんはしばらく逡巡したあと。弱々しく微笑み、申し訳なさそうに了承してくれた。


――――――――――――――――――――――――


 天重さんをベッドに寝かせて、キッチンに立つ。

 人様のキッチンを勝手に使うのはアレな気がするが、天重さんはかなり辛いみたいだし、しかも今は親もいない。

 世間体など気にする必要はないだろう。


 天重さんは今朝お粥を作ってもらったらしい。

 さすがにまたお粥っていうのは飽きるだろう。だからうどんを作ることにした。

 必要な調理器具を探しだして、手をよく洗ってさっそく調理に取りかかる。


 まずはボウルに小麦粉をざるでふるいながら入れる。

 小麦粉の真ん中に窪みを作って、その窪みに塩水を投入。塩水を作る際は、よくかき混ぜておくことだ。

 そしてスプーンでかき混ぜて、小麦粉が全体的にぼそぼそとした感じになったら、手で捏ねて生地にしていく。


 出来た生地を、食材を入れていた袋とは別で買った大きなビニール袋に入れて、足で踏んでいく。

 生地がある程度伸びたら袋から取り出して、折り込むようにして丸めていき、また袋に入れて踏んでいく。

 踏む作業を合計三回やったら、生地を丸めて30分ほど休ませて、生地を柔らかくする。


 その間にネギを小口切りにして、鶏肉を塩茹でにする。

 空いているコンロで卵焼きを作り、それを金糸卵にした。……おー!我ながら綺麗な金糸卵が出来たな。


 金糸卵を作り終わったあと、水、しょうゆ、どっかのメーカーの出汁、酒、みりんでうどんつゆも作る。


 ちょっと時間が過ぎてしまったが、休ませたうどんを取り出して麺棒を使って生地を伸ばしていく。

 この家に大きいまな板があって良かった。おかげで伸ばしやすい。


「……すごく、本格的ですね」


 と、そこに天重さんが声を掛けてきた。

 飲み物を取りに来たらしく、スポーツドリンクを冷蔵庫から取り出した。


「まぁね。乾麺でも良かったんだけど、まだ夕食にはちょっと早い時間でしょ?こんな時間にご飯食べたら変な時間にお腹が空くだろうし、だったら一から作ろうかと思ってね」

「そうなんですね。……………その、ごめ」

「謝らないでね」


 俺は彼女の謝罪の言葉を遮り、笑顔を向けて言う。


「俺が好きでやってることだ。ていうかあんま知らない相手に、お節介が過ぎる自覚があるくらい。でもそんなに弱ってて、心細そうにしてる人を放っておける訳ないじゃん。だから謝らないでよ」

「……はい」


 彼女は申し訳なさそうに。でも、嬉しそうに頷いた。

 ……お節介の押し付けが過ぎに過ぎた発言かもと思ったけど、あまり気にしてなさそうだ。ちょっとほっとした。


「ほら。風邪のせいでそうしてるだけでも寒いでしょ?うどん出来たら持っていくから、ベッドに戻りなさいな」

「……………はい。ありがとうございます」


 お礼の言葉を言い、天重さんは自室に戻っていった。


「さてと、うどんを切っていきますか。大きい包丁とかないかな~って、麺切り包丁あるし!?」


 バイト先でしか見たことない麺切り包丁を使って、折り畳んだうどんを切っていった。

 ……これ。バイト先の奴より切りやすいし、使いやすいんですけど。結構良い奴じゃね?

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