親しき友人
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「変装するって言っても……」
「…あ!」
いるじゃないか!最適なヤツが…!
ポケットに入れていた鈴を出す。
『妖精の鈴』。対になるものと音を響かせ合う。今オレの鈴と対になっているのは…。
「『商人』!!聞こえるか!」
商人なら、何か変装に使える魔法道具を持っているかもしれない…。
鈴を大きく鳴らす。
鈴の音は返ってこない。
「商人?聞こえてないのかよ…!」
商人からの返答を待つが、ダメそうだ…。
「リード!どうだった?」
エイルは大きなフードを被った。
「俺は翼竜派に顔が割れている。その俺と歩いているキミも不審人物扱いは免れないだろうな。特にキミは人間種だしな…」
「でもどうするよ?オレもフードか何か被って誤魔化すしか無いか…?」
商人と連絡がつかない今、どうにか顔や体型を見せないようにするしかない。
「そうだ!仮面があるぞ。キミみたいな人間種用の面だ!」
「人間種用の仮面…?竜国になんで…」
竜種の人間種を排斥する思想は100年以上続いている。
「オレや商人の前に誰かが訪れたのか…?」
「さぁな…。俺もよく知らない…だけど頭領はコレを大切に扱えと言っていた。来るべき日に備えてって」
仮面を受け取る。裏側に何かが書かれていた。
「…許されないことをした。しかし命は紡がれる。それを信じてる…」
この文章は…。
「誰かへのメッセージ…?」
今はそれが何を示すかは分からない。
「どうした?リード」
「どうもしてない。案内頼むよ、エイル」
人竜派頭領に会って、母の手がかりを手に入れる。そしてこの竜国で起きていることを知らなければ。
ー
カバンの中からチリチリとした音が鳴り続ける。
「今だけは…。今だけはダメだリード君…!」
商人は対峙していた。
強大すぎる魔力を持った、大きな銀翼の竜と。
「なぁ貴様…。どうやってその通行証を手に入れた?」
竜は商人へ問う。今、商人の姿は魔法道具、『人狼の毛皮』の効果によって翼竜派一般兵の見た目をしている。
「…っ。ど、どうされました?この国の大臣様がわたくしのような一般兵に…」
カバンの鈴は鳴り続けている。彼が呼んでいる。
「貴様から、同種と違う匂いがしている。外側を上手く誤魔化せたとて、竜の感知力にかなうわけが無い」
「本当に何を仰っているのだ!疑うのはやめて頂きたい!」
「もうよい。下手な演技はやめておけ。
「惨めな遺言を残すことになるぞ…」
竜は笑いながら言う。
「まだ取り引きが残ってるんだけどなぁ…」
ー
「もうすぐ竜の心臓!この国の中央だ!」
国のはずれにある人竜の里から歩いて30分ほど。里とは打って変わって、高い建物が並んでいた。
「あの塔は権利管理署で、あっちは学校、そんでこっちは工場だ。そんで…ここが頭領の住まう、竜の塔だ!」
エイルが一際大きな建物を指さして言った。
外観は白く、ただ白く無骨な塔だった。
「大きいな…」
「立派だな!さぁ行こう。頭領が待ってる」
ー
建物の中は外から見た時よりも広く感じた。
「広いな」
「俺もいつ来ても、そう思う。頭領がここに『光』の『空間魔法』を使っているらしい。外と中の光を曲げて、見え方を変えてるらしいぜ」
空間魔法…。初めて見る魔法だ。『照らせ』と同じ『光』の魔法なら、何か掴めるのかもしれない。
オレは『照らせ』、使えないけど。
「頭領!久しぶりにご挨拶に来ました!人竜派副頭領エイル・シアンです!」
「おかえり。エイル。お前は変わらず騒がしいな」
竜の白い鱗が光を跳ね返す。
「エイルよ、お前の横の者は?」
龍の目がこちらを向いた。
「オレはリードです。頭領様、初めまして」
竜の目に見られると、身体が固くなるような気がする。
「リード…。リード・ローゼンティーヌか。あの寛容な王国から追放された人間種の!」
ハッハッハ!と笑いながら竜は言った。
「相当な変わり者だな貴様!面白い」
「そりゃどうも」
ビビりながらも応える。身体の固みは取れないが。
「そうだ。我の名前を教えてやろう。我の名前は…」
「ロロ・エクリュ。だろ!」
竜が名前を言う前に、誰かが声を出した。
「お前は…。ノキコ!!」
ノキコだった。
ー
「ノキコ!何してたんだよお前!やけに静かだと思ってたら!」
ちっさいキノコがテクテク歩く。
「だからー!おいらは人竜に捕まえられないように隠れてたんだよ!」
「隠れてたって言ったって!なんで今出てきたんだよ!」
「なんでって…。おいらの知ってるやつの魔力が近づいたから」
知ってる魔力…?出会った時に言っていた賢者のことか?
「久しぶりだな『森の賢者』ノキコよ」
「おう!久しぶり!『白の賢者』ロロ!」
白い竜、ロロとノキコがハイタッチを交わした。
「前に言ってた賢者の知り合いってロロさんのことだったのか」
「おう。おいらの予想以上にコイツ、弱ってたけどな…」
弱っている?この魔力量と圧を持っていて?
「ときにリードよ。お前の生まれを聞かせろ。王国から忌み嫌われし者の始めを知りたい。『白の賢者』として」
「オレの生まれ…?興味あるんですかそんなの」
「あるから聞いている。早うしろ」
怖ぇ。
「オレが目覚めて初めて見た景色は赤色でした…
ー
「ハァッ…。ハァッ…!」
商人は逃げ続けていた。
「規格外過ぎるね!竜ってのは!」
『爆ぜろ』
商人の足元が爆発した。
「やばいッ!」
「まだ逃げ続けるか…。しつこい…。さっさと失せろ…!」
「まだ策はあるさ!ボクは商人だぜ!」
商人はカバンを探る。
「これじゃない!これも違う!…。これだ!」
「『影法師の糸』開け!裏道!」
商人の身体が地面へ沈む。影に沈み、裏側へ逃げる魔法道具。
「ほう…。魔法道具か…。」
銀翼の竜は追う事をやめた。
「次は殺す」
ー
「ふむ…。中々に酷い話だ。お前が話すそのヒトとやらは、対象を真っ二つにする魔法を使ったのだろう?それならば捜索も容易いのではないか」
「そうは言ってもなぁ…。おいらでさえ知らない魔法だぜ?」
「ノキコ、貴様は引きこもりだから仕方がない」
「引きこもりって言うなー!!!!」
ポコポコポコとノキコがロロさんを叩いている。
「してリード。どうする。我の知識を使うか?」
賢者の知識を…。それも2人分も使える…!
「使わせてください!」
大きな声で応えた。
「よい。我の知識を読み込め…!…『空間作成』」
だだっ広い、真っ白だった空間に、たくさんの本が並んだ。
「図書館…」
「そう図書館だ。王国のものよりは小さいかもしれんがな」
オレの目の前に数冊の本が落ちてきた。
「お前の探す魔法なら…。これらが近しいかもな」
本に手を乗せる。
オレの手に光が走った。魔法発動の光だ。
「…『変質』」
見たことの無い魔法の情報が頭に流れ込む。
「これが…!魔法…!!」
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イシン




