人間種と人竜
こんにちは。よろしくお願いいたします。
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「汚れた名前。だと」
商人は言った。
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リード・ローゼンティーヌ
産まれた瞬間、母の身体はすでに半分を失っていた。そして片腕も。
あの時、母を殺したあのモヤは確かにヒトだった。
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「リード君。君の名前の秘密をボクは知っています。そして真相は闇の中に落とす気はない」
商人は表情を変えて言った。さっきまでのヘラヘラとした顔じゃなく、冷たく刺さるような目だった。
「あんたは何を知ってるんだ…?オレの秘密ってなんだよ!」
「まだ言えない。伝えちゃいけないんだ」
「どうして!なんで!」
目の前に手がかりがあるのに!
「まだ。なんだ
「ボクは君を待ち続ける。その時までさ」
商人はまたヘラヘラとした顔に戻った。これ以上は何も答えないつもりだとわかった。
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「ボクはそろそろ竜国へ戻る。リード君はそこの人竜くん達とお喋りでもして国へおいで。…じゃ」
商人はオレ達に背を向けて、竜国の方へ歩いていく。
「あぁ!ひとつ渡すものがあった!」
商人がオレになにかを投げた。
「それは『妖精の鈴』。対になる鈴を鳴らせば声が届く。ボクを呼ぶ時に使ってくれ」
「じゃ、また会おう」
商人の姿が小さくなっていった。
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商人の姿が見えなくなった頃、人竜が話しだした。
「お客人…。いや、リードさん。あなたを人竜の里へ案内いたします。
「あなたは我ら人竜の恩人でありますから!」
急な提案に少し驚いた。
「でも、竜国って人間種を嫌ってるんじゃ…?」
「大丈夫。我ら人竜は人間種との交流を望みます。一方で翼竜の奴らは異常な嫌気を持っていますが…」
同じ竜種でも、ここまでの思想の違いがあるのか…。
「しかし、竜国の門番を務めているのは翼竜たち。正門からは入れません。
「なので!我ら人竜が先祖代々作り続けた隠し門からお招き致します!」
ひとまず、助かった?
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「本っ当に申し訳無い!!!」
盗賊達を懲らしめてから、大体3時間くらいが経った。
オレの目の前には頭を地面に埋まるぐらい下げた人竜が1人。
鱗はオレンジ色で、光の差し方で色が変わる。
「別に気にしてないよ…?」
オレの言葉を聞いて、目の前の人竜は立ち上がった。
およそ2mくらい。オレに視線を落としながら彼は言った。
「俺は人竜派の副首領、エイル・シアンだ。この度は我らの民が無礼を働いてしまった。本当に申し訳無い!」
彼、エイルは立ち上がってからも謝り続けている。
「本当に気にしてないから!大丈夫だから!」
オレも何度も応える。大丈夫だよ。と
「そして本当にありがとう。彼らは国の外に遊びに行ったり、散歩をしに行ったりで、行方不明になっていたんだ。まさか盗賊に捕らえられて連れていかれそうになっていたなんて…」
エイルは盗賊に捕らえられていた彼らをそう言った。
「でもまだまだ足りないんだ…。まだ行方不明の仲間がいる…
「俺の知っている以上のことが起こってるんだ…」
エイルは手で顔を覆いながら言う。
「恥ずかしい話だが…。キミ!我ら人竜派の行方不明者捜索を手伝ってくれないか?」
竜種との協力関係は魅力的だ!断る理由もないしな。
「分かった!引き受ける。よろしくエイル!」
「あぁ!よろしく!我が人竜派の恩人よ!
「ところで…キミの名前は…?」
オレの名前…。汚れた名前…。エイルに伝えるべきか?この名前のせいで国を追い出されたのに…?
「オレの…。オレの名前は…。
「リード・ローゼンティーヌ」
どうなってもいい。後悔するくらいなら。
「リード・ローゼンティーヌか!いい名前だ!ローゼンってのは薔薇の事だよな!美しいじゃないか」
エイルは顔色ひとつ変えることなく言った。
「オレの名前は汚れた名前だって…」
声が震えてしまう。
「汚れた?なぜそんなことを言うんだよ。既に君が王国から追放されたことは耳に入っている。だがそれとこれは関係ないだろう?」
あまりにも真っ直ぐな言葉。心からの言葉だと分かった。
「人竜の俺が人間種の問題なんて気にしない。リード、キミを1つの魂として見てるんだ」
彼が人竜の副首領である理由がわかる気がした。
「さぁ!情報を共有しよう!」
里の人竜達と作戦会議が始まった。
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イシン




