竜と足
こんにちは。お待たせしました。
「『籠る者』はこの森さ!」
「へ?」
ー
突拍子もない発言に思わず声が出た。
「この森が魔法ってどういうこと…?」
「おいらの魔法は、森と繋がること。そしてこの森と外の世界を繋げることができる。お前に声をかけたのも外の世界と繋げた瞬間、出口にいたからだぞ」
「そんな滅茶苦茶な魔法ってあるのかよ…」
「あるぞ!おいらもいっぱい見たことがある。特に竜種の魔法は凄かったな」
「竜種か…」
竜種。マスターが話していたことがある。確かデカい身体と翼、そんで強い鱗と魔力を持っている。とか。
ー
「いっぱい話したな!そうだ、リードはこれからどうするんだ?」
ノキコは俺に向かい直して聞いた。
「そうだな…。どうしたらいいのかな…」
「ちなみに、おいらのこの森はどこからも繋がるし、どこへでも出られる。」
「おまえはどこへでも行けるんだぜ」
ノキコの言葉がオレに勇気をくれたようだった。
「オレは…。オレは、竜種の国へ行きたい!」
この汚れた名前の真相を知るために、母に抱かれながらみたあのヒトを探すために。
ー
『魔法』
魔法にはこの世界に住む生物全てが使用出来るものと、特定のタイミングで獲得するものがある。後者の場合、『(使用者)の魔法』と示される。
ー
「竜種の国か!いいじゃないか。おいらも行きたいぞ〜!」
「竜種は強いヤツらが多いって聞いたから、オレもより強くなれるように。と思ってさ」
「うんうん。よいよい!竜種なら、おいらの知り合いもいるからな!またアイツと会いたいぜ」
賢者の知り合い…?ソイツもまた賢者なのかな…。
「よーし。出口を開くぞ!準備いいかリード!」
「え?急に?!ちょっと待って!」
森がうねり、渦を作った。
「今日はいい所に開いたぞ!ほら見ろ。あれが竜種の国、竜国だ!」
「でっけぇ…!」
渦から出ようと1歩を出したときだった。
「待て!クソガキども!」
遠くから声が聞こえた。誰かが追いかけている声だった。
「逃げてんじゃねぇ!お前らは立派な商品なんだよ!鑑賞するも良し、鱗を剥いで装備にするも良しの最高級品だ!」
髭ヅラの男が見えた。
「ありゃ盗賊か?おいら、アイツらに見つかったら捕まえられちゃうぞ!」
「たしかに賢者の魔キノコなんて超売れそうだもんね…」
「リード!アイツらぶっ倒すぞ!」
ノキコはオレに言う。賢者の戦いをこの目で見れるんだ!
「やれ!リード!!!」
「オレ??!!」
ー
商品の仕入れを終えて、また灰色の髪はなびく。
「次はどの国へ行きましょうかね」
先程までいた国では、十分な取引が出来なかった。
「竜種の鱗…。これは中々興味深い」
冒険者への依頼書に書かれたそれになにかを感じた。
「次は竜国へ向かいましょう!良い取引が出来ますように…」
商人は神など信じてはいない。しかし手を合わせ、祈りを捧げた。
ー
「オレ??!!なんで?!」
「今お前しか戦えねぇんだよ!おいらの魔法は戦闘向きじゃねし、リンゼも戦えねぇ!だから頼んだぜ!」
そんなことを言われても、オレ自身、魔法が使えない。この世界じゃ無能なくらいだ。
「でも、オレは…。魔法が使えないんだって!」
「できるさ!おいらは分かるぜ!お前ができるって」
さっき出会ったばかりなのに、オレを信じている。目の前の命が輝いて見えた。
「だぁ…くそっ!」
「やってやるよ!」
やるしかないんだ。
ー
「そろそろですね」
灰色の髪が風で揺れた。
「思ったより大きいなあ」
ゆらゆらと大きなカバンが跳ねている。
国の入口には門番が検閲をおこなっていた。
目を凝らすと、人間種だけが入国を拒否されていた。
「どうしたものですかねぇ」
商人も人間種である。このまま検閲を受ければ、入国拒否は妥当だろう。
「なにかありましたっけ」
大きなカバンの中身を探る。
「あったあった。これですよ『人狼の毛皮』
人狼の毛皮。これを身にまとった者はその環境に適した姿を見せる。今は同じように竜種の姿をとるだろう。
ローブを羽織り、商人は国へ入った。
ー
「やってやるよ!」
とは言ったものの、本当にどうすればいいか分からない。
身体に魔力は満ちている。リンゼの料理のおかけだ。
「まずはオレに注意を向けないと!」
今盗賊たちは逃げ出した相手を追っている。なにか無いかと近くを見回す。
枝が目に入った。咄嗟に手に取りそれを投げる。
「頼む!当たってくれ!」
なんの奇跡かは分からないが、枝は盗賊の男へとぶつかった。
「なんだァ?!誰が邪魔しやがった!」
盗賊は周りを見渡す。
「オレだ!お前を倒しに来た!」
震えながらも声を出した。手にはリンゼから渡されたナイフだけ。遠距離武器を使われたらひとたまりもない。
「なんだテメェ!殺すぞ!」
盗賊はオレに向かって走ってきた。魔法を使っている様子はない。
盗賊が持っているのは長い剣。リーチは完全に負けている。
「落ち着いて…引きつける…!」
大振りの一太刀をかわして前を向く。長い剣は森の木に邪魔をされて上手く振れていない。
「ここだ!」
咄嗟にできた隙を生かし、ナイフを突き立てる。おそらく鎧は着けていない。ここで決める…!
〈カキンッ…!〉
オレの刺したナイフがひしゃげた。
「なッ…!」
「坊主…。防御魔法ってのを知ってるか?これはただの布切れでも、金属みてぇに変えちまう!すげぇよな!」
勝てない…!武器がない!オレは魔法が使えない!
「魔法が無きゃ、なんにもできないよ…」
盗賊の剣がオレに向く。
「じゃあな。クソ坊主」
オレも魔法が使えていれば…。死ななくて済んだんだ。
剣が振り下ろされる。
〈ペチッ…〉
およそ金属とは思えない音が鳴った。
剣はリードの身体をなぞるように曲がっている。
「どうゆうこった…?」
オレは死んでない?何が起こってる…?
「テメェ!何しやがった!おいクソ坊主!」
コイツの反応を見るに、あっちの魔法じゃない?
なら、オレの魔法…?
身体を光が包んだ。魔法を使う時のあの光だ。
「オレが…魔法を使ってる…」
「クソ坊主がァ!」
武器を捨て、盗賊はリードへ殴りかかった。
〈ドゥルリ〉
リードの頬に触れた盗賊の腕は波打つように歪んだ。
「うわぁぁぁぁぁ!!!なんだ!俺の腕が!!!」
騒ぐ盗賊が見えないほど、リードは思考を続けていた。
オレは剣が振り下ろされるあの瞬間、何を考えた…。
死ぬこと…?あの防御魔法のこと…?
「違う…!オレが見たのは…。魔法の本質だ…!」
魔法の本質。それはその魔法が何を表し、どのような効果を生むのか。その真髄、深層。
「防御魔法は身体を金属のようにするものじゃない。物体の硬度を変化させるものだ…」
だからオレの身体に触れた剣や拳は硬くなるんじゃなく、逆に柔らかくなった。
やっと掴んだ。これは…オレの魔法だ。
「うるせェ!ぶっ殺すぞ!」
盗賊は叫ぶ。
「『燃えよ』・『火球』!!」
「攻撃魔法も使えるのか!」
よく見れば、盗賊の乗り物らしき中に数人の姿がある。おそらく盗賊の仲間だろう。
全部しのぎ切れるか…?身につけたばっかりのこの魔法で…。
でも…。やらなきゃ死ぬ!
目の前の炎を見る。
「この魔法を理解しろ…。オレの中で噛み砕け…!」
炎は燃える。それは高い温度で物体が変化されていくからだ。
「理解した…!」
炎がオレを包む。
「おいおい!やばいんじゃねぇのか!おいらお前が死んだら悲しいぞ!泣いちまうぞ!」
思わずノキコが叫んだ。
「大丈夫…。死んでないよ…。ちょっぴり火傷しただけ」
燃える服が飛んだ。
リードの身体に傷は無かった。
「どういうこったァ!俺の魔法が効いてねぇだと!?おいお前ら!コイツを殺す!出てこい!」
盗賊が仲間を呼んだ。魔法が次々と飛んでくる。それでも身体に傷はつかない。
「炎を操ることが出来れば…」
飛んできた火球に手を伸ばす。炎は触れられない。違う。これは魔法で作られた炎だ。
「『炎縛』」
炎が縄のようにしなる。
「解釈を広げるんだ…!」
炎は盗賊たちを次々と捕らえていく。
「なんだよこの炎!あちぃのに暑くねぇ!」
戦いは終わった。
ー
盗賊たちに捕らえられていた生物を見た。
それは竜種の老若男女だった。目的は鱗と研究、鑑賞のためらしい。
ひとまず一件落着だ。
「よくやったな!リード!おいら感激したぜ!あんな魔法があるなんてよ!」
ノキコがオレの頭に飛びついて撫で回す。
「オレだって知らなかった!あんな魔法!」
「でもさ…。おいらちょっぴり不安なのがさ…。あんな魔法、見たことないんだ」
森の賢者も知らない魔法…。いったいなんだ…?
「だからおいらが名前をつける!森の賢者のお墨付きだぞ!」
「ほんとに!?お願いするよ!」
「うーん。どうしようかなぁ。魔法の本質に触れる魔法…。
『変質』!ってのはどうさ!」
『変質』…。悪くない。
「いいね!オレの魔法!『変質』!!」
ー
「手を頭の上へ掲げ、降伏せよ!!」
何者かの声がオレたちの後ろから響いた。
ー
リード・ローゼンティーヌ
『変質』
幸運値:20(推定)
お読み頂き感謝致します。
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イシン




