賢者と縁
こんにちは。
まだ主人公の魔法は出ません。申し訳ない。
2ー幸運
この世界に生きる生物には、『幸運値』というものがある。これは産まれてから死ぬまでに起きる事象が、自らにどんな影響を与えてくるのかを示す値である。
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王国を出てから随分歩いた。
魔獣から逃げて、身体はボロボロだった。
「お腹空いたな…」
マスターから貰ったゴールドがあっても、行くあてが無い。
マスターに拾われてから、王国の外に出たことがなかった。
オレは簡単な魔法も使えない。
こんな時に魔法が使えていたら、暗い夜の道でも足を挫かずに済むのに。
『照らせ』
光の魔法。自分の手に光を集めて、明かりを作る魔法。これは小さな子供が初めて学ぶ魔法。
夜道を照らし、我が子の帰りを待つ親が子に教える最初の魔法。
マスターもオレに教えてくれたことがある。もちろん、なんの光も出なかった。
「あァ…。なんだかなァ…。人には得意不得意あるしな」
マスターに慰められたのを思い出した。
ー
王国の周囲には多数の国がある。王国は人間種が住む最大の国だ。その王国での全権を失ったオレは、もうどこの国にも属せない。
「国じゃなきゃいいんじゃない?」
誰かの声がオレに言った。
「へ?」
「だから、国じゃなきゃいいんだって」
声の主を探す。目の前にあるのは…
「キ、キノコ?」
「キノコじゃねぇよ!おいらは賢者!賢者のノキコ・ノコだ!」
「ノキコぉ…。ってもう魔獣にはこりごりなんだけど…」
流石に信じられない。このキノコ魔獣が賢者なんて。
「おいらの森へ来いよ!歓迎するぜ!」
ウェルカムポーズでオレに手を伸ばした。
「メシ食わせてもらえる?」
不意に聞いてしまった。
「もっちろん!」
手をとるのに1秒もかからなかった。
「よし。こっちだ!」
小さいキノコに手を引かれ、森へ進んで行った。
ー
ある生物種の中で頭1つ抜けた知識を蓄えたものを『賢者』と呼ぶ。彼らの寿命は蓄えた知識の分増えていき、『賢者』達に死は無いとされる。彼らが死を迎える時。それは誰かのために命を燃やし、知識を受け渡した時だけである。
ー
森の中は暖かかった。ずっと深いところに来たはずなのに、不思議と日差しを感じる。
「あの…。ノキコさん…?ここって何?」
「ノキコでいいぞ!そんでここが賢者の森だ!でっけぇぞ」
たしかに大きい。広い空間に大きな樹が生え、いくつか穴が空いている。あそこが居住空間なのだろう。
「でか…」
思わず声が漏れた。
「にゃはは!そうだろそうだろ。そらこっちだ!メシ食おう!」
ノキコについて行くと食堂のようなものが見えた。
「ノキコ!おかえりなさい」
「おう!ただいま」
魔カンガルー…??がフライパンを振っている。
「え…」
「お!ノキコが連れてきたのがその子だね」
魔カンガルーがこちらを向く。
「アタシはリンゼ。ここでみんなのメシを作ってる」
目の前の机に大きな肉が置かれた。
「食いながら話そうよ。アンタのこと聞かせてよ」
「おいらも聞きたいぞ!」
あまりの空腹に、思わず肉に噛み付いた。
「ゆっくり食べなよ」
ふとリンゼから暖かい想いを感じた。
「オレ、産まれてきてすぐに家族が死んで、それから…」
ー
リード・ローゼンティーヌ
『□□』
『幸運値』表示不可
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イシン




