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変質の竜殺し  作者: 高山イシン
1/9

別れと1歩目

※1話では主人公の魔法が出てきません。ご了承ください。

1ー目覚め


「おはよう」

誰かの声で目が覚めた。

目の前に広がる景色は真っ赤だった。

身体が傾いた。

髪の長い女性が視界に入った。抱きかかえられたのだと感じた。

理由もなく、その人が母だと分かった。

「おはよう。生まれてきてくれてありがとう。そしてごめんね」

「あなただけは生かしてみせるから」

冷たい手が顔に触れた。ぬるりとした何かが皮膚をつたう。

目の前の赤色は血だった。

「見つけた。あと2人、女とガキ」

視界が揺れる。

モヤのかかったヒトがいた。

断裂(だんれつ)

母の腕がちぎれる。血が流れ出る。よく見れば母の身体に下半身は無かった。

「しぶといな」

『彼の者を守護せよ』

母の手が輝く。

一瞬の煌めきと共に光に包まれた。

「あなたに未来永劫の幸せがありますように」


断裂(だんれつ)

「また会おう。汚れた名よ」



2ー薔薇の花


「リード!リード!いつまで寝てんだ!今日の仕事も大量だぞ!」

下の階から大きな声が響いて、思わず目を覚ます。

ペラペラのベッドの上で身体を起こした。

「もう朝か…」

服を着替えて、顔を洗う。

「おはようございます…」

下の階に降りると男が待っていた。

現在働いている酒場のマスターだ。

「おう起きたか!今日もバリバリ頼むぜぇ」

朝から大きな声で唾を飛ばしながら話す。


「らっしゃい!今日も沢山依頼が入ってるぜ!」

酒場に訪れた冒険者や兵士達にマスターは言う。

この酒場は冒険者たちに依頼を紹介する場になっている。

重そうな鎧を着けた剣士がマスターに話しかける。

「マスター!これを受ける!」

「あいよ。リード!こいつらに依頼説明を頼む」

マスターはオレに毎回、依頼内容の説明をさせる。

「はーい。」

テキトーに返事をして、冒険者の方を向く。

「今回の依頼は魔兎20匹の討伐です。報酬は30シルバー。討伐の証拠として角を集めて来てください」

簡単な説明をして冒険者たちを送り出す。

「頑張ってくださいね」

このくらいの依頼が、1番人気だ。

魔獣に殺されることも無いし、報酬も充分だし。

でも不意に思う時もある。


「寂しいなァ…」


今日は客が多かった。普段の冒険者たちに加えて、王国お抱えの兵士が代わる代わる訪れたからだ。

「もうクタクタだぜ俺ァ」

マスターもやつれているように見える。

「でもなんでこんな兵士が来たんですかね?」

思わず問いかけた。

「あァ…。噂だと汚れた名前ってやつを探しているらしいぜ?なんつったっけなァ〜。ローゾ?ローン?見てぇなやつ」

嫌な予感がした。


リード・ローゼンティーヌ

これがオレの名前だ。


明日の分の食材や備品を買いに街に出た。

兵士たちはずっと走り回っている。

果物屋のオジサンに話しかける。

「どうも!オレンジ15個とブドウ8個とイチゴ30個と…」

「はいはい、いつもの山盛りフルーツね」

オジサンはオレに大きなバケットを渡す。

「はいよ。450シルバーくらいだな」

「また値段上がったの?」

文句を言いながら銭袋を開く。

「兵士たちがみんな買って行っちまってよ。お前んとこの店の分だけ置いといてやったんだ。感謝しな」

「そりゃどうも」

シルバーをオジサンに渡して、酒場に戻る。

酒場の前に人だかりができていた。鎧を着た兵士たちが集まり、何かを言っている。


人だかりを抜けて酒場のドアを開ける。

中にいた兵士たちが一斉に俺を見た。

「何があったんですか」

オレはマスターに問いかけた。マスターは何も言わない。

「貴様の名前は?」

オレの前に出てきた大柄な兵士が声をかけてくる。

「急に酒場まで来てなんだよ。どうせ汚れた名前ってヤツを探してんだろ?」

「貴様に質問権は無い。さっさと応えろ」

兵士はオレの話なんて聞く気もない。

「貴様の名前はなんだ。さっさと言え」

オレの背中に冷たい刃が当たった。同時にマスターの苦しそうな声が聞こえた。

「この男も何か隠しているのか?」

「マスターは関係無い。やめてくれ…」

マスターは見ず知らずのオレを拾ってくれた恩人だから。傷ついて欲しくない。

「ならさっさと吐け。いつまでこうして愚図っている気だ」

マスターの頬に傷が付けられた。

「ッツ…!」

「言うよ…。オレの名前は」


「リード・ローゼンティーヌ。これが俺の名前だ。」


「やはり!やはり貴様が汚れた名前!この国の敵であり、国王殺しの血!」

兵士は狂喜の表情でオレを見た。

「国王から貴様に、2通りの選択肢を与えられている。1つはこの国から追放し貴様の持っていた権利全てを奪うこと。もう1つはこの国の牢獄へ落とし、飢えて死にゆくまで管理することだ。」

「貴様はどちらを選ぶ」

オレは…

「オレはこの国から出ていく。」

マスターにこれ以上迷惑はかけられない。それに果物屋のオジサンや街の人も、オレの関係者としてマークされているだろう。

「賢明な判断だ。マスター殿?これでいいかね」

兵士はにこやかに語りかける。

「あァ…」

「本日0時をもって、リード・ローゼンティーヌの全権を奪取し、国外追放とする!」

そこからは早かった。

オレの武器も金も全部回収された。何度か顔を合わせていた冒険者達も、オレの送り出してくれた。

「マスター。じゃあね。本当にありがとうございました」

涙は出なかったけど、それでも、心が空っぽになるみたいだった。

「おい、リード。これ持ってけ」

オレの背中に袋がぶつかった。中を見ると宝石と100枚以上のゴールドが入っていた。

「これって…」

「いいんだよ。持ってけよ…」

これは今までの酒場の売上全部だった。

「ありがとう…」

「元気に死ねよ。またな」

マスターありがとう。また。



王国の門が開き、オレをまた1人にした。

お読み頂き感謝致します。

感想等あればご自由にお願い致します。

質問等も受け付けます。

では。



イシン

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