表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/186

第七十三話

ブクマ・評価ありがとうございます。

 ヘレンの話を聞いて最初に感じたのはコナー家に対する憤り、そして夜魔族に対する呆れだった。

 その先代との間にどんなやり取りがあったかは知らないが、些か詰めが甘すぎる。契約を結ぶなら、あらゆる可能性を考慮して一つずつ詰めていかないと。だから、そんな目に遭うのだ。

 とは言え、それを口にはしない。夜魔族も必死だったんだろうし、何やら事情もあったかもしれない。今言えるのは、コナー家を一秒でも早く滅ぼしたい、という事。


「予想通り、いやそれ以上か……ありがとな、ヘレン」

「礼には及ばぬのじゃ。協力すると約束したからの」


 後はいくつか確認しないと、だな。場合によっては計画の変更もある。


「確認したいんだが、ダリル・コナーは領地だから良いとして、キャメロン・コナーを王都内で殺すと言った場合、夜魔族としては介入せざるを得なくなる。これは間違ってないな?」

「うむ。『王都内での危機』じゃからの」

「じゃあ、捕縛はどうだ?」


 これがダメだったら、王都内から連れ出さなくてはいけなくなる。そうなると手間も時間も掛かる上に、近衛騎士団との同時作戦の意味が無くなる。ダリル・コナーの捕縛の方が先に済んでしまえば、必ずキャメロン・コナーの耳に入り警戒される。それは避けたい。


「それは恐らく大丈夫じゃ。生きる者にとっての危機は『命』に関わる事が、第一に来るじゃろうからの」

「そうか…‥‥」


 作戦の変更は無し。後はタイミングだな。


「では計画通り、例の執事を捕らえますか?」

「いや、まだ確認したい事がある。ヴェディ、いるな?」


 夜魔族と戯れている時も、ずっと気配を感じていた例の暗部の娘に、声を掛ける。色々と見られただろうし、親父からもそれとなく聞いているだろう。今日は、このままの口調でいく。


「……はい、ここに」

「「「っ!?」」」


 驚くヘレン達。彼女達も気付いていなかったようだ。この暗部の人の隠形スキルは訳が分からない。どうやって、俺だけに気配を知らせているのか。やはり、魔法か?


「どこじゃ!?」


 戦闘態勢のヘレン。他の夜魔族も彼女を囲う様に立ち警戒している。


「あ~~、ヘレン。大丈夫だから。この人、王様の配下の暗部の人。協力者だ」

「……全く気配が感じられぬ。この国の王は、こんな者まで飼っておるのか……!」


 何か失礼な言い方だ。まあ、時間も惜しいし放置だ。


「クロエ、予定している作戦の説明をヘレン達にしといてくれ」

「……はい」


 クロエの説明を受けるヘレン達を尻目に、俺は虚空を見上げる。


「それで、ヴェディ。オスカー達の動きは?」

「順調の様です。早くて今日のお昼頃、遅くても今日の午後には突入できるかと」

「では少し急いで貰って、作戦決行は昼に、とそう伝えてください」

「……畏まりました」


 ……どうやって伝えるのだろうか。やはり、魔法か?ああ、羨ましい。ユニーク魔法を目の当たりにしてから、その想いが再燃してしまった。羨んでも仕方ないのに。


「上手くいっている……」


 大丈夫。慎重に時間を掛けたんだ。上手くいくのは当然。後は一気に、畳み掛ける。


「グレン様」


 クロエの声に振り向くと、どうやら説明が終わった様子だった。


「ヘレン、この作戦に不都合は無いか?」

「無いのじゃ。『命』の危機が無い限り、妾達は介入せぬ」

「そうか、良かった」

「ただ、一つ問題があるのじゃ」

「何?」


 何か見落としがあったか?


「恐らくじゃが、一族の男の中に『宴』に参加た者がおる」

「っ!……あいつらかっ!?」


 脳裏に過るのは、クロエを下卑た視線で舐め回すように見ていた男達。

 あの状況でそういった事が出来るのは、それだけ性根が腐っている証拠。そして、普段から女をそういった目で見てるという事。

 あの時、殺しておくべきだった。いや、それだと夜魔族と完全に敵対していたかもしれない。くっ、ままならないな。


「そうじゃ。お主が痛めつけた奴らじゃの。それと他にも数名」

「ここにおる者達に関しては既に殺したのじゃ」

「そうか……ここに?」

「うむ。コナー家に常時張り付いてる者達がおる。警戒・監視と連絡員と言う名目じゃが、殺した男達含め全員男じゃ」


 はぁ~~、ホントどうしようもない奴らだな。どうしてこう、下半身で生きてるようなのが存在するのか。そんな奴らがいるから、『男って奴は』などと一括りにされるんだ。


「是非とも俺の手で殺してやりたいが、実力を隠している身としては難しい。頼めるか?」

「元よりそのつもりじゃ。そのつもりなのじゃが、ここで問題の核心じゃ」

「何だ?」


 もしかして、ヘレンでも手に負えないとかか?


「一族の男が減るのじゃ」

「……だろうな」


 男ばかりを殺す事になるのだから、当然だ。


「うむ。そうなると、子孫を残す事が難しくなってくるのじゃ」

「……」


 何が言いたいのか読めた。


「強い者の血を求める種族としては、一族の弱い男などどうでもいいが、やはりここは「グレン様」……ちっ!」


 鼻息を荒くして語るヘレンのセリフに、割って入るのはヴェディの声。先程断ったのに、逞しいと言うか何と言うか。


「どうかしたか?」

「準備が整ったとの事です。今は、コナー家の館のある街周辺で演習擬きをやって、待機中だそうです」


 早かったな。


「分かった。じゃあ、一時間後に突撃するよう頼んでくれ。それと、もし魔族の男がいたら、殺すようにも伝えてくれ」

「分かりました」


 オスカーの方はこれでいいか。後は任せるだけだ。こちらもそろそろ動き出すとしよう。


「それじゃ、そろそろ……ヘレン?」


 何やら考え込んでいる様子のヘレン。


「む。ヴェディと言ったか?お主のそれは『感覚魔法』か?」

「……」

「感覚魔法?何だそれは?」

「ユニーク魔法じゃ」


 またユニークか!!良いもん。羨ましくなんて無いもんね。無いったら無いもんね!!けっ!


「……良くご存知でしたね」

「くくくっ、伊達に長くは生きてはおらぬのじゃ」

「それで、感覚魔法ってのは?」

「その名の通り、感覚に関する魔法を使えるのじゃ。視覚を飛ばす事も出来るし、遠くの音を拾う事も出来る。他には、遠くに声を届けたり、それこそ気配すらも遠くに飛ばす事が出来るのじゃ」


 それって……、正しく今の状況じゃないか。気配や声の位置を正確に捉えられなかったのは、この魔法によるもので本人は遠くにいたのか。地味だが、かなり便利だな。


「逆に感覚を殺す事も出来ますね。視覚や聴覚とか」


 便利どころじゃない。恐ろしい魔法だ。


「昔、こんな話を聞いた事がある」


 ヘレンが語ったのは、こんな話だった。




 『昔々ある所に、大陸を征服しようと目論む悪い大国があった。その国は、次々と周辺国を侵略し、前線には常に大軍が砦を構えていた。その勢いは、止まる事知らず。しかし、ある時不思議な事が起こった。砦の兵が、一夜で全員息絶えたのだ。それも一度のみならず、何度も何度も。そしてある時、やっと一人が生還した。

「奴が来る」

 生還した兵はそればかりを口していた。仕方なく、回復を待って話を聞くと、こう口にした。

「夜になると、目が見えなくなるんだ。そして耳も。だけど、耳元では常に何か囁き声が聞こえるんだよぉぉ。他の音は聞こえないのにぃぃ。それで今度は気配がするんだ。真後ろにピッタリと。振り返ってもそこにはだれも……あああぁぁぁぁ!!!」

 暗闇の中、一人が狂乱すればそれは伝染する。ただでさえ、得体の知れない恐怖の中で極限状態になっている所に、それは起爆剤のようなものだったのだろう。最終的に砦には、数多の死体が転がる事になった、との事だった。そして、唯一帰還した兵もその後発狂死したらしい。

「私今、あなたの背後にいるの」

 それが、正気を失う寸前に聞き取れたセリフだと言われている』




「……」

「……」

「それが『感覚魔法』の使い手の仕業だったと伝わったのは、結構後の事じゃったらしいの」


 リアルメリーさんじゃねぇか。やべぇ、マジでリアルな想像しちまった。今日寝れるか?


「あ、あー、まぁ、凄い魔法って事だな!」

「あの、グレン様……」

「じ、時間も惜しいし、そろそろ作戦の方に移ろうか!」

「グレン様!」

「うん?どうした?」


 やや赤くなりながらの訝しげな視線。


「……何故私の手を握っているのですか?」


 全力で視線を逸らす。


「…………」


 怖いからです。

 それから暫くの間、妙に生温かい視線としつこい追及が止む事は無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ