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第四十一話

ブクマ・評価ありがとうございます。

「……」

「……」

「……」

「……」


 冒険者ギルドの受付で何やら手続きをしたベルハルトに連れて来られたのは、酒場『リキユ-ル』。

 表通りから一本路地裏に入った所に、その店はあった。ボロボロな外観に反して、店内はきちんとした造りになっており、少々無法者(アウトロー)な方達が酒を呑み話に花を咲かせる。

 そんな店のマスターに、ベルハルトが頼んだオリジナルブレンド『キリン』。結果、個室へと案内されたわけだ。どうやら、彼ら(・・)専用の個室のようだ、

 この個室からは魔力の動きが感じられる。何らかの魔法的措置、若しくは魔道具が働いているようだ。孤児院の結界(・・・・・・)と似ているような気がする。状況から察するに、恐らく外部への音漏れ防止のものだろう。なるほど、内緒話には持って来いである。

 その個室は今、静寂が支配している。魔法的なものは一切関係なく、ただただ誰も言葉を発しない。クロエはいつも通り、ベルハルトはどうにかしろと言う視線を送り、カールは引き攣った笑みを浮かべ、そしてナンシーが絶対零度のプレッシャーを放っていた。

 冒険者ギルドでは一人だったベルハルトは、元々この酒場で待ち合わせをしていたようで誘われるがまま中に入ると、カールとナンシーの両名が居た。俺がベルハルトに続いて部屋に入ると、カールは驚いた表情を浮かべたがそれも一瞬で、次の瞬間には歓迎するように笑みを浮かべてくれた。

 そしてナンシーは、カールと同様一瞬驚いた表情をするが、すぐに嬉しさを抑えきれないようなニヨッとした表情になった。理由があったとは言え、二ヶ月以上放置していた身としてはホッとした。そのままナンシーに声を掛けようとしたのだが、俺に次いで入ってきたクロエを見て嬉しそうな表情から一転、完全な『無』の表情となり次第にその瞳から熱が無くなっていった。そして、今に至る。


「ナンシー」

「……なによ」


 良かった話は聞いてくれるらしい。声には怒りが込められているが。


「嫉妬かい?」

「そっ……!?そ、そんな訳ないじゃない……」


 やはりナンシーも耳にしているのだろう。あの不快な噂を。

 噂を聞いてそんな訳ないと思っていたが、俺の傍にメイド(クロエ)が居てまさかと動揺している、とそんなところかな。


「俺と殿下は噂のような関係じゃないし、このメイドさんも仕事で一緒にいるだけだよ。護衛としてね。ほら、俺弱いから」

「…でもっ……!」

「第一、俺には噂の様な事は出来ないって知ってるだろう?」


 そう知っている。ナンシー達には春香の事は話しているから。


「あっ……!ご、ごめんなさい……」

「いいよ。忙しかったとは言え、二ヶ月も連絡すらしなかった俺も悪い。お互い様だよ」

「うん……」


 なんか俺が責めてるみたいになってしまったな。これじゃダメだろ。


「ナンシーおいで……よっと」

「きゃっ……!」


 躊躇うナンシーに構わず、強引に引き寄せ膝の間に座らせる。そのまま後ろから抱き付き、優しく頭を撫でる。


「……んっ……」

「ナンシーありがとね。心配もしてくれてたんでしょ?」

「ん……」


 反省だな。手紙でも伝言でも連絡を取っておけばよかった、素直に撫でられる程不安にさせていたとは。


「わっはっはっはっ!相変わらず、見事だな!」

「ですね」


 部屋に温度が戻ってきたのを見逃さず、ベルハルト達の笑い声が広がる。

 あ、そう言えば他にも人いたんだった。これナンシーが気付いたら……あーあほら、羞恥に震えだしちゃった。


「~~~~っ!!!!」

「ほらほら、気にしない気にしない。俺だけ見て俺の手だけ感じて、ね?」

「~~っん」


 甘ったるい雰囲気を出し始めた俺達に、呆れた様子のベルハルトにカール。


「グレン様」

「ん?」

「いい加減、本題に入ってください」


 そんな雰囲気を物ともせずぶった切ってきたのは、やはりと言うか何と言うかクロエだった。

 クロエのその声はいつも通り平淡なものであったが、その中に含まれた『怒り』を読み取り誤魔化す様に仕切り直す。確実に評価が一変してる。


「そ、そう!お前らに聞きたい事があったんだ!」

「お、おお!そんな感じの事言ってたな!」


 恥ずかしさがあった事もあって少々慌ててしまったが、気を取り直す様に当初の目的であったキャメロン・コナーの件について大まかに説明する。ヴィクトリアと交した誓約については端折る。こんな事で心配かけるのも、アレだしな。

 説明するのは陛下からの命、キャメロン・コナーの直接会って感じた事、ダリル・コナーの話。

 次第に硬い表情となる【麒麟の角】の面々。先程までの甘ったるい雰囲気もおちゃらけた雰囲気もそこには無い。


「むぅ……よりによってコナー侯爵家か……。第二王女殿下の婚約者だから妥当と言えば妥当なんだろうが……うぅむ」

「……何かあるのか?」

「あるって言やぁ、あるんだが……」


 言葉を濁すベルハルト。カールや腕の中のナンシーも苦虫を噛み潰したかのような、何とも言えない表情をしている。


「多少の危険なら構わないぞ。護衛にクロエさんもいるし」

「うーん、確かにそこのメイドは腕が立ちそうだが……そう言う事じゃなくてだな」

「あーもうっ!情報あるの?無いの?言うの?言わないの?はっきりしてくれ!」


 一体何があるってんだ?

 皆の態度からして、別にコナー侯爵家に義理立てているとかいう感じはしない。感じられるのは腫物を扱うかのような、距離を取るもの。


「ねぇ、グレン。聞いたら後悔するかもしれないわよ?」

「聞かない事には何とも言えないよ。それに殿下の事は割と気に入ってるんだ。危険な奴は排除しておきたい」

「む~」


 むくれるナンシー。姫様の事を気に入っているという発言が気に入らなかったらしい。

 何度かナンシーの噂は聞いたけど、どれも≪暴風姫≫の二つ名に恥じぬものばかりだった。ギルドの支部を半壊させたとか、セクハラしてきた冒険者を半殺しにしたとか、闇組織を街ごと物理的に潰したとか、挙げればキリが無い。

 しかし、今目の前と言うか腕の中にいる彼女からは想像できないので、俺自身は半信半疑だったりする。確かに気の強い所はあるが優しい子だ。俺の事も親身になって看護・世話してくれたし、心配してくれるし。

 ≪暴風姫≫を知る人物が、今のナンシーを見たらひっくり返るんじゃなかろうか。現にベルハルト達は、毎度目を剥くんだし。


「はぁ~、分かった。話してやるよ。ただし、俺達を巻き込むなよ」

「分かった。だけど、それほど危険があるのか?」

「何とも言えん。危険と言えば危険なんだろうが……。一部の冒険者の中ではコナー侯爵家に関してタブーにしてるんだ」


 ベルハルト達の話によると、こういう事だった。

 数年前、とある冒険者がコナー侯爵家の依頼を受注。その依頼の遂行中に何かしらの秘密を入手。それをギルドに相談しようとした矢先不審死。さらにそれを調べようとしたギルドの調査員も、同様に不審死若しくは失踪。たった一人生きて帰った者もいたが、その者もある言葉を残して自殺。


「ある言葉?」

「ああ。『魔族が関わっている』ってな。そんな訳で、あの件の真相はそのまま闇の中ってぇ訳だ」

「……?それだけ?」

「はぁ!?」


 確かにコナー家が怪しい事は分かる。不審死・失踪はタイミング的にコナー家の手の者の仕業と思っていい。それは同時に、そこまで躍起になるほどの秘密があるという事の証明でもある。

 だけどなぜそこで引いたんだ?国にも上奏しなかったのか?取り引き?

 いや、冒険者ギルドは完全中立だと言ってた。国にも貴族などの権力者にも属さない。取り引きなんてしてしまえば、冒険者ギルドは根本的な部分から瓦解する事になる。

 魔族が関わっていたから?良く分からんな。


「なぁ、魔族ってそんなに危険な奴なのか?」

「「「!!?はぁ~~~!?」」」

「うおっ、いきなり大声あげるなよ。びっくりしたー」


 どうやら俺の魔族に対する認識とこの世界一般の認識がずれてるようだ。もしかして、他の種族と比べて過激な思想を持っていたりするのだろうか。だとしたら確かに危険だ。今一度魔族について聞いておくか。


「グレンさん。魔族についてどこまでご存じで?」

「んーと、魔物が進化して知性を持った種族だという事ぐらいだな。見た目も能力も進化前の魔物の特徴を引き継ぎ、種族によっては人と魔物が組み合わさった姿だとか」

「ええ、それに加え個体数は少ないものの一体一体がAランク冒険者に相当する力を持ちます」

「一体一体、ね」


 少し漏れてしまった。

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