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第三十一話

ブクマ・評価ありがとうございます。

 何も出て来ない。

 姫様に異世界の料理を披露してから一週間。目立たぬようこっそりキャメロン・コナーについて調べるが、ホントに何も出て来ない。出てくるのは良い話ばかり。

 やれ誰々を助けた、やれ強い魔獣を倒した、やれ孤児院に寄付した等々。話を聞けば聞く程良い人にしか思えん。

 こうなったら直接お目に掛かりたいのだが、奴隷の身としてはそんな簡単に行く訳も無く、ただただ無駄に時間が流れるばかりである。


「はぁ~。陛下はどうしてこんな事をお命じに……何も出て来ないじゃないですか」


 姫様の屋敷の一室。リビングに当たるのだろうか。そのソファーに腰掛け、深い溜息を吐く。今は経過報告中。


「ふんっ。だから言ったのだ、キャメロンはそんな男ではないと。貴様のような軟弱者とは違い立派な男だ」


 例の如く突っ掛かってくるヴィクトリア。やはり彼女はキャメロン・コナーの事が好きなのではなかろうか。

 それといい加減、当たり柔らかくなってほしい。知っているんですよ?貴方が俺にばれない様にこっそり、されど足繁くプリンを食べるために厨房に通っているのは。

 ルフィーナは勿論、屋敷の料理人達は既に掌握している。あれから食のレベルを向上させるために、惜しげも無くレシピや調理法を教えてるからな。ヴィクトリアのそんな行動など筒抜けなのだ。いずれ彼女にはカスタード系のお菓子を作ってあげるとしよう。このままだと胃袋を掴んだ方が早い気がするからな。


「期限は決まってないのでしょう?焦る必要は無いんじゃない?」


 これ以上は今の俺(・・・)だけじゃ無理だ。手伝って貰いたいけど皆乗り気じゃないし。姫様も好き、とまでは言わないもののそれなりに信頼しているようだし。クロエは相変わらず何考えているか分からんし。どうにかして会えるよう取り計らって貰うか?


「あねうえーー!」


 終わり無い思考に耽っていると、やや舌足らずな元気な声と共に幼女が入ってきた。次いで、そのお付きであろうメイド。そのメイド服には薔薇の意匠が。

 いままで屋敷の女性に警戒されない様必要以上に視線を向けないようにしていた為気付かなかったが、ロゼリア騎士団の団員達の着ているものには等しく薔薇の意匠が施されている。つまりこのメイドも騎士団員という事だ。


「あら。ヴィヴィ」

「あねうえ!あそぼー!」


 ヴィヴィアナ・フォン・カーネラ。第三王女で姫様の腹違いの妹。3歳ぐらいだったか。ふわふわな髪が特徴的だ。


「ヴィヴィ、遊んであげる時は王宮の方に私が行くといつも言っているでしょう?今仕事中なの。また今度ね」


 窘めるような口調だがどこか仕方がないな、という思いを読み取れる。

それにしても時々王宮に行っていたのは、仕事だけじゃなく遊んであげたりもしていたのか。良いお姉さんもしている様だ。


「やーっ!あそぶのーっ!あーっそーっぶーっのーっ!」

「ああ、姫様。申し訳ありません」


 癇癪を起したかのように大声で叫び始めたヴィヴィアナに、慌てるメイド。彼女にはどこか疲れた雰囲気が見られる。日常的に振り回されているのだろう。


「ヴィヴィ、我儘言わない」

「やーっ!」

「どうせ勉強抜け出してきたのでしょう?」

「ぎくぅっ!」


 子供の我儘は可愛いものだが、ただの子供じゃなく王族だからな。幼い内からの勉強は大事だが、まあ今は遊ぶ方が大事なんだろう。子供だからこその我儘、やっぱり可愛いじゃないか。


「はぁ~」


 深い溜息を吐く姫様に、ヴィヴィアナは視線を忙しなく動かし、決して合わせようとはしない。ほっこりと眺めていると、忙しなく動いていた視線が俺を捉えた。


「あー!」

「へ?」


 何だ?

 彼女は俺の元まで小走りで来ると、指を差しこう言った。


「おまえ、知ってゆ!女みたいに弱っちい男だ!ちちうえが言ってた!」

「女みたい……弱っちい……」


 分かっているとも、そんな風に見られているのは。だが知っている側の王様が何故言い触らす。それも口の軽い幼女に。


「おまえは今からあたしのどれーだ!まずはうまになれ!」

「えー……」


 物凄く嫌だ。あれやってる事は単純で簡単だけど、中々にきついからな。

 チラリと姫様を見る。


「貴方に任せるわ」

「……本当に任せてくれますか?」

「ええ、そう言ってるじゃない」

「文句は受け付けませんよ?」

「?何を言ってるの?好きになさいな」


 そこまで言うんならしょうがない。任せてもらおう(・・・・・・・)


「いいから早くうまになるのーっ!きゃーっ!!」


 痺れを切らし地団太を踏むヴィヴィアナを抱え上げ、両膝にの上にうつ伏せに寝かせる。


「やーっ!おーろーせーっ!」

「はいはい、静かにねー」


 暴れる体を抑えながらドレスのスカートを捲り上げる。こんにちは、可愛い花柄ぱんちゅ。リナ達のモノより上等そうだ。流石は王族。


「貴様!何をしている!?」


 幼女とは言え一国の王女に対する俺のセクハラに、周りが殺気立つ。数人が今にも飛び掛かりそうな雰囲気を醸し出している。とは言え、下手に飛び掛かってヴィヴィアナを巻き込み怪我をさせたら一大事だ。そんな訳で慎重になっている今がチャンス。


「何って……躾ですよ躾」


 素早くパンツを下げ可愛らしいお尻を露出させる。皆が呆気に取られているのを余所に、腕を大きく振り上げ――――


パチンッ


 ――――その可愛らしいお尻に大きめの紅葉を作った。

 母直伝夜桜家秘奥義『お尻ぺんぺん』。

 屈辱的な格好で受ける事になるその罰は、肉体的にも精神的にもダメージを与える。たとえ3歳児でも姉やメイド達の前では堪えるだろう。俺も高校までこの罰を受けていたが、最初から最後まで決して慣れることは無かった。

 彼女の我儘が助長しない様に、俺が飴と鞭を上手く使って躾け手懐けるとしよう。


「あぁっ。な、なにをするかーっ!」


 パチンッ


「ひんっ。ど、どれーのぶんいぎっ!」


 パチンッ


「ひぃっ。や、やめろーっ!」


 パチンッ


「あぁっ。や、やめて…」


 パチンッ


「いぃっ」


 パチンッ


「ひぅっ。ご、ごめ……」


 パチンッ


「うわ~ん。ごめ゛んな゛さい~」


 こんなものかな。


「はっ!?き、貴様!!」


 ヴィヴィアナの泣き声をきっかけに、呆気に取られていたヴィクトリアが動き出す。あまりの光景に、脳が処理しきれていなかったらしい。我に返った今は、すぐにでも槍を構えそうだ。お付きのメイドも短剣を逆手に構え出している。

 このままでは俺の首が飛びかねないので、姫様に念を送る。彼女達を止めて~、と。


「……トリア、待ちなさい。ニーナもよ」

「姫様……?」

「し、しかし……」


 取り敢えずは大丈夫そうかな。気を取り直して次は飴といこう。


「なぜ叩かれたか分かりますか?」

「…ぐすっ、うるちゃい……ひっく…どれーのくちぇにっ……!」


 まだ鞭が足りなかったようだ。

 謝ったのは、痛みから取り敢えずってとこか。恐らく可愛がられ甘やかされて育てられているのだろう。謝る、という事を教えてあげよう。


「悪い事をしたら怒られるのは当然です。後はどうするか分かりますか?」

「ふんっ…ぐす……」

「悪い事をしたな~、と思う人に謝ってください」

「ひっく……わるいのはおまえだっ!バーカ!」


 あ~あ、優しく教えてあげたのに。そんな態度ならお兄さん本気出しちゃうぞ。


「良いですか、ヴィヴィアナ殿下。悪い事をしたらちゃんと謝らなければなりません。でないと怖い鬼が来てしまいますよ」

「バ~カ!おになんて来るもんか!うそつきなおまえなんかドラゴンに食われちゃえ!」


 え、なにそれ。嘘つきって泥棒になるんじゃなくて、ドラゴンに食われるの?そっちの方が怖いんだけど。じゃなくて。

 優しくしてやったのにこの態度。あ~あ、知らないぞ。


「嘘なんか吐いてませんよ。私は殿下の為を思って……おも…てがぁっ!あががががががが!がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!顔がっ!ああぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「ふぇ……」

「「「!?」」」


 ヴィヴィアナを優しく諭していた所から突然、180度変化し顔を抑え痛がる振りをする。顔を抑える指の隙間から周りの様子を見ると、痛がり暴れる演技をする俺に皆動揺している。本気の演技に騙されてくれている様だ。ヴィクトリアも『お、おい。グレン・ヨザクラ……?』とやや心配してくれている。やはり、根は優しいみたいだ。

 姫様は話の流れからある程度察しているのだろう。演技である事は見破れるはずは無いのだが、聡い御人だ。


「あぁぁぁ!ヴィ、ヴィヴィアナ殿下!早くっ!お゛ぉぉぉぉぉ!早く謝ってください!奴が!がぁぁぁ!奴が来ます!うぅ……うがぁぁぁぁぁ!」

「ほぇ……やつ?」

「クケ、クケケケケケ。ミヅケタ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 奴が来る!? どうなるか楽しみです
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