プロローグ
サクラ王国と云えば言わずと知れた多種族混成国家である。
人・獣人は勿論、夜魔族や鬼人族をはじめとする魔族や、エルフ・ドワーフ・セイレーンなど数多の妖精族、長らく幻とまで言われた神族を擁し、国土こそ小さいものの中央大陸一の国力を持つ。
そんなサクラ王国の英雄として必ず名が挙がる者が二名いる。
サクラ王国初代女王、アリシア・フォン・ヨザクラ。
そして彼女の夫、グレン・フォン・ヨザクラ
両者共に絶大な人気を誇り、王国内外どころかこの中央大陸の外にまでその名は轟いている。
常に人々の先頭に立ち、凛とした佇まいで老若男女を惹きつけ魅了し続けたアリシア。戦闘、政治、産業などあらゆる分野において高性能ぶりを発揮し、彼女を支え続けたグレン。
そんなグレンには数々の噂や逸話があるが、内九割は女性に関するものである。
曰く、神獣を降し従えた
曰く、魔獣の氾濫を一人で鎮めた
曰く、女にもなれる
曰く、常に女性に振り回されている
曰く、事有るごとに周りに女性が増えていく
曰く、百や二百を優に超える女性をハーレムとして囲っている
曰く、全種族制覇
曰く、幼女から熟女まで選り取り見取り
曰く、男の娘もイケる
曰く、母・娘だって見境なし
等、一つ一つ挙げていけばキリが無く、目を見張るものから本当かどうか疑わしいものまで様々だ。
果たして彼はどういった人物だったのか。
本書は、このグレン・フォン・ヨザクラを主軸に取り上げつつ両雄の活躍を描いていく物である。
―――――エドワード・ルゥ・スーウェル著 【サクラ王国の英雄】冒頭より