インスタントハウスの中身は?
俺は煩い男なんだよ。
だってさ…。
部屋と台所は別。更にはトイレと風呂も別なんて高度の注文しても言うべきところはちゃんとだな…ん?
あれ?
ここってさ。
確か俺一人の家だったよね?
見た目と中身の乖離があまりにも激しいんだけど。。
それにさ、玄関ってこんな野球場の様な広さいるか?
玄関がコレじゃ部屋までダッシュしなきゃダメじゃん。どうするんだよ、コレ。
「主人よ。遠慮は無用じゃ。
奥は更に大きくしておいたのでな。」
「。。。」
戯言中のレナトゥスは放っておいて、遠くでピカピカしてるドアノブへ行くぞぉ。これでも元帰宅部なんだぞ!舐めるなよ、ダッーシュ。
ん??
俺今まだ、ダッシュしてないよね?しようとしてたけど…何で一瞬でドアノブ到着なのさ?え?まさかの瞬間移動装置付きの家なのか?すっげー。
「主人よ。とボケるのも大概にせよ。お主ほどの空間魔法の使い手などおらんぞ?」
レナトゥス。いつもぶつぶつ話すなよな。もう、小声で聞こえないレナトゥスはこの際無視で、ピカピカ光るドアノブに開ける事にする。
ガチャ。。
うぉ、ここもか…やられた。家の中に荒野発見(広さがね…)とは。迷子が出るぞ、ココ。
だって既に端が見えないんですけどね!まさかココって台所のつもりじゃないよね??
…じゃあ俺ってば、まさかの荒野でぼっち飯ですかぁー!!
「おい、礼は後で良いからサッサと寝床へ行かぬか。あの部屋は特に念入りにな…なんと既に行ったか。本当は嬉しかったのだな。」
満足感いっぱいぽいレナトゥスはともかく放っておいて、瞬間移動装置で次のドアへ。
だってさ、ここまで来るとオチは分かるじゃん?
まあ、定番だと広すぎて、荒野の次は砂漠とかかぁ?
。。。
また…やられた。またも予想外とはね。
まさかの謎の螺旋階段とは。更に空まで続いるとか何かの冗談だよね?そう言ってくれぇーー!
「ふふふ。オシャレでしょ?『ロフト』って言うんでしょ。知ってるんだから。
貴方昔は憧れてたじゃない?だからちょっと奮発しちゃったぁ!」
「たぁ!」。。じゃねぇよ!!
最上階にどうやって行くんだよー!!
「もう着いたわ。お主も学習せぬのぉ。」
うぉ?
そうか、便利グッズ『瞬間移動装置』を一家に一台。あー、コマーシャルになりそうだな。
「また、訳の分からん事を。それよりも食事は良いのか?人間は食べねばガス欠する不便な生き物だからな。」
あのなー。それは生き物全般を敵に回した発言だぞ?と言うツッコミはともかく、確かに食事は重要だ。食べ物を探さねば…。
「だ・か・ら!!そこなレナトゥスに魔獣狩させといたから大丈夫よ。確か貴方、肉好きだったわよね?」
まさか荒野の台所の端っこでタワーと化してるアレの事か?あの積み上がってるのが夕食じゃないよな?!
「レナトゥス。まさか俺一人の為にアレ全部狩ったのか?」俺が静かな声で尋ねればレナトゥスの得意そうな声で返ってきた返事がさぁ。。
「まあな。ワシにかかれば朝飯ま…」これだよ。信じらないよ!!
「馬鹿野郎!!!
お前、何考えてるんだ?コレはどうみても狩り過ぎだ。無差別な殺生は絶対ダメだと何回も言ってきただろ!!
忘れたのか!!」
ふうふう…。
あんまり怒鳴って荒い息になったせいか、俺の呼吸音だけが辺りに響く。あまりにも頭に血が昇っていたから、何を言ったか覚えてないがやり過ぎなのだけは間違いないのだ。それだけは許せない。
「主人よ。まさか其方記憶が…」
掠れたレナトゥスの声が気がするけど。気のせいかな?
「そうよな。そんなに簡単にいく訳がないわな。主人よ。すまなかった。其方の一番嫌う事だったのにな。しかしだ。コレは吾の冷凍魔法で保存可能なのだ。だから無駄にはしないので許して欲しい。」
あれ?そうなの。じゃ、余計な事だったじゃん。もう!!恥ずいよぉ。。
頭に集まった血が急に下がった俺は一人冷や汗をかく。言ってくれよ。盛り上がっただけた恥ずいじゃん。そりゃこっちがごめんなさいだな。せっかく作って貰った家のお礼も言ってないしな。
「レナトゥスはやり過ぎなのよ。それに主人と言うモノはデンとしてるモノよ。この家如きでは我々の真価はまだカケラも出せてないわから。さあコレからよ!!」
ゲッ。いや、家の広さとかロフトのやり方とかやり過ぎ感満載だけど野宿だけは免れてたからとにかく有り難いの一言だけどさ。
大量の魔獣はあれど、コンロも竈門もない台所での料理は出来ずに結局バーベキュー状態は続いたけど『魔獣旨し!』で終わり良ければ全て良し、だな。
でも…エバ○焼肉のタレ欲しいなぁ。あれ最強なのに。
そうだ!!
俺が作ればいいんじゃね?
料理マスター目指すか、俺?
「いや、主人よ。お主これまでも料理マスターだそ?それにだ。夜は休まねば倒れるぞ?」
そう言われると疲れが急に出た気がする。
気絶以外の睡眠してないしな。
大量のロフト部屋へ行って横になるとやっぱり疲れてたのか、俺はそのままストンと寝落ちした。
「レナトゥス。貴方睡眠魔法まで使ったの?」
「そうじゃ。限界を超えても今の主人には気がつけぬのでな。それにだ。」
「そうよね。私達もやるべき事が多いものね。でも…あっちの方はもういいの?」
「仕方ないのだ。主人が決めた事。あ奴らがどれほど探そうと決して悟らせぬ。ましてや、ココじゃぞ?」
「そうね。私の方もまだ諦めないからやれるだけはやってみるから。」
「。。。」
家の外で大型の生き物の気配がしたが、それもすぐさま霧散した。後には、寝息だけが広過ぎる部屋に響いているだけだった。。