祭り開催!!
提灯。
紙で出来た提灯が店々を彩るその様は、心の底から沸き上がるワクワクが止まらない。覚えてないはずの記憶でも分かる。
祭り。
それは俺にとって大切なモノだったと。
痛っ。
右手の痛みに握りしめていた手のひらの持ち主を見た。
可愛いまん丸ほっぺが、真っ赤に染まっている。キラキラと輝く瞳に思わず力が入ったんだと分かった。
左手を見れば,いつもは落ち着いている兄の方も子供らしい表情をしていた。
「な、提灯って凄いだろ?まだまだこの先は楽しい事が沢山あるぞ?」
クザンとルーナスにそう笑いながら言えば、ビックリした顔で「カズキって凄かったんだね…」としみじみ呟かれる。
まぁ…ね。
少しだけ上がった株に浮かれている俺の目に屋台の看板が目に入る。
『リン飴』…リンゴ飴
『ワタの実』…綿アメ
『焼きレン』…焼きそば
名前は慣れないモノだが、美味しそうな匂いは確実に覚えがある。
我がギルドのメンバー総出の祭りは、お囃子こそないけど最高だった。
繋いでいたはずの手はいつの間か空っぽになっていた。あちこちの屋台に首を突っ込む二人の姿に俺も目当ての屋台へと向かう。
『アン包み』…あんず飴
あんずがないこの世界で、この果物を探すのは大変だった。ヒーの協力無くせばまず無理だった。
木の棒に刺さった(この形しか出来なかった…)アン包みを口に入れて甘酸っぱい懐かしい味に満面の笑みになる。
そして振り返って驚いた。
だって…。
俺も全く同じ表情をしている男を見つけたからだ。嬉しいだけでない…郷愁の顔。
あの男は確か…キリさんだっけ。
何で覚えたかと言えば、目が合う度にあからさまに顔を背けるから。
嫌われてるなぁと。
今もまさに逸らしている最中だしな。
。。ん?
あの指にあるのは…。
何処かで見覚えがあるような気がする。
変わった指輪だし。
どこだっけ…。
「あ、待ってくれよ。確かキリさんだったよね?その指輪は…」「いや、急いでいるん…え?指輪?そんなモノしてない…ええーーー!!!」
慌てて逃げようとする彼の腕を掴んで指輪に目をやると、しどろもどろの彼が何故か叫び出す。
「こんな…何で…」
「いや、男でも指輪していいじゃん。もしかして許嫁がいるのかな?」
「主人よ…」
「あ、レナトゥス。クザン達の警護をお願いしたのに、放ったらかしたのか?」
「アルクトスに任せて来た。それよりも…」
「ぬ、抜けない…この指輪まともじゃない…」
何故か真っ青になって指輪を引き抜くのに必死なキリさんとそれを睨むレナトゥス。
そして声を掛けた事を後悔してる俺。アレはきっと過去の恋人との思い出の品物だったんだろうな。
とりあえず、謝ろう。
「いや、個人的哀しみに踏み込んで申し訳ない。思い出は大切にしてください。それじゃ…」
「いや、待って、待ってください!!!これをこれを抜いてーー!!」
「待て主人ーーー!!!」
へ?もう抜いちゃったけど?
で、お宅誰?
「久しいな、レナトゥス。我が名は貴方に告げる訳には参りません。」
金髪サラサラのロン毛のイケメンは、突然現れてキリさんを姫抱きして駆け出していった。
何処から現れたんだ?
そうか!あの指輪の相手なのか…え?
と、なれば今流行りのBでエルな訳か??
や、本物初めて見ちゃったよ。そんな相手の指輪なら…キリさんに悪い事しちゃったな。
「なあ、レナトゥス。後でキリさんに謝りに行こ…おまっ。なんて顔してんだよ。おっかないぞ、その表情。」
「失礼しました。さあ、クザン達が待ってますから行きましょう。」手を引かれてそのまま足早に引っ張っるレナトゥスに違和感をおぼえた。
は!
もしかして三角関係なのか?!
ビックリだ…。
***
主人がまた、明後日の方向に思考を飛ばしているのは分かっていた。
それでも、気配を悟れなかった自分に対する怒りとショックで今は放っておくしかない。
キリ。
前から怪しいと思っていたのだ。
鑑定に違和感が強く…気づくべきだった。
アイツを寄せる前に。
アイツを目覚めさせたのは、恐らく我が主人。
とにかく、アルクトスと話さなくては。
ニヤニヤ笑う主人の手を引きながら、この誤解が後々面倒な事になるとはその時は思ってもいなかった…。




