レナトゥスとの出会い。
ふぅ、長い夢みたなぁ。
『王様の椅子』なんて。俺って厨二病か!っての。
「目覚めたと思ったらノリツッコミとは忙しい奴よの。いい加減少しは落ち着け。」
ぎぎぎぎ。
「まさか…マジでまた同じ夢なのか?こんな事あるのかよ…」
腰にある日本刀がカタカタと鍔きを鳴らしながら喋ってる。しかもノリツッコミなんて現代風だな、コイツ。
「ふむ。ようやく気絶しなくなったか。ではこの状況が夢でないと言う事もソロソロ受け入れろ。草をむしってみろ。良い香りがするだろう。こんな香る夢があるか?」
喋る日本刀から逃げ出したいけど、触るのも怖いし。仕方ないから言われた通り草をむしってみる。。ふむ、確かに草の香りがする。
むしゃむしゃ。
ペッペッ。味は不味いぞ。
でも、味までするとなると夢の中説は諦めるしかないのか。
「相変わらず斜め上行動の男よな。良いか、この草が毒草だった場合は考えなかったのか?」
あれ?超呆れ声のツッコミ、ムカつくなぁ。
「あのな、俺は夢の中説を諦める為にもやるしかなかったんだよ。それにこれって貧乏草だろ?何故だか親近感があってこの草くらいは知ってるさ。」
そう言ったドヤ顔の俺にため息が聞こえてきた。今度はなんだ?
「ふぅ。何故お主なのだろうな。全く疲れるわい。良いか、よく聞け。ここはお主の記憶にある世界ではない。全く別の場所だ。その証拠にワシが今話をしておるではないか?」
納得しなくないけど、周りを見れば一目瞭然なのだ。だって、あんな鳥見たことがない。
何故、人間の数倍もある真っ赤な鳥が飛んでるんだよ。
「アレはこの世界でも珍しい鳥だ。恐らくお主を見に飛んで来たのだろうて。さ、帰れ。」
うわっ。足元から突風が噴き上げたよ?
あれ、まさか突風、鳥に当たった?
間違いなく当たったな、あれ。
だって、どうやら風に当たったらしくかなりヨロヨロして山の方へ飛んでいったからな。
しかし…
ここまで来ると諦めるしかないのか。
これは現実だと。
「分かった。とにかく現状を受け入れる。だから教えてくれ。俺って何?あんた何?」
そのセリフがキッカケだったんだな。
腰にぶら下がった日本刀が、空中に浮きあがって勝手に手のひらの上に移動してきた。
「抜け」
はいはい。もうヤケです。やりますとも!!俺は、やけに手に馴染む日本刀を抜いた。
かなり長い剣は、陽の光を反射しながらスッと抜けた。刀身がキラキラ反射して綺麗だなと、思ってたら。
「我が名はレナトゥス。」
「レナトゥス…あ!!」
名前言ったらダメだったのかよ。手首に痣が出来たじゃん!!
「それは我が主人の印。盟友から主人に変わった意味が其方に分かるか?。。。
無理そうだな。ま、追々でいいだろう。
とにかく、吾は其方に従おう。」
日本刀ってば、いい奴じゃん。ちょっと現状把握が出来てない俺にはマジ助かります!!
グルルル。
またか、腹の虫め。何というKYなのだ。俺もずっとKYだと言われてたけどお前ほどじゃないわ!!
ん?
んん??
俺をKYって呼んだの、誰だっけ。。あー、ダメだ。本当に思い出せない。
「旨いもの食いたい。でもこんな場所じゃ無理だよね。貧乏草なら天ぷらとかできるのに…」
一面に咲く貧乏草を恨めしく眺めてたら。
あらま。
「人間は、肉がいるのだろ?
これなら食えるな。」
。。あれ?
腰にぶら下がったはずのレナトゥスが、串刺しの鳥と一緒に帰って来た。
ちょっと、目を逸らしていいですか?
串刺し系は、初めてなんで。
「そうか、火だな。人間は焼くのだったな。」
展開早っ。
ボッと刀から火がふいてあっという間に焼き鳥の完成!!
でも、美味しそうにも鳥には顔がくっついていてさ。ちょっと…でも。
「旨っ。」もちろん美味しく食べましたとも。
「主人はそう言う奴だな。食欲に全てが負けるタイプだよ。」
奴のツッコミも気にならない。出来たての焼き鳥は旨かった。背に腹は変えられない。
それに。
昔から食べ物を粗末にするやつは大嫌いだったしな、俺。
[自分の名前も誰なのかも忘れているのに、本性は変わらぬか。彼奴らは必死に主人を探しているだろうけど、無駄な事だ。選択は為されたのだから。]