俺の魂が騒ぐぜ!!
賑やかな大通りには、楽器の音が鳴り響いていた。店先に立つ店主らの「これこそ、○○産の名品だよ、買わなきゃ損・損!!」と言う威勢の良い掛け声の中身はちっとも分からなくてもこの胸の鼓動の激しさはホンモノだ。祭りは俺の中の何かを熱く燃やしている。
あー、担ぎたい…。
ん?何を担ぐんだっけ??
コホン…とにかくだ。
素晴らしい祭りだけど買い物したくても、出来ないんだ。
あ、お金はアルクトスが用意したって言ってたけど、あれ何のマークなの?!
値段が『″€50→』
やっぱり『¥』か『$』じゃなきゃね。
最後の→なんてさっぱりだよ。
アルクトスがくれた変なマークのコイン3枚。さっぱり分からないオジサンの顔のコインだけど価値がさっぱり。お菓子くらいは買えるかな?
しかし…コインって顔の絵付きが常識なのかね?
「ご主人様。どれでもちゃんと足りますとも。だから何でも好きなもの買って下さい!!」って言われても(それに五歳児の女の子に言われる違和感半端なくてさ。)さ!
しかし、見れば見るほどアルクトスの変装年齢ミスってるよね?!落ち着きのあるその声に幼な子って明らかにミスマッチ。
なのに…。
「おや、お嬢ちゃんしっかりしてて偉いねぇ。お兄ちゃんのお世話かい?」
前方のいい匂いの店屋の店主が声を掛けて、アルクトスの頭を撫でている。
(リアルに嫌そうな顔するのヤメテ…アルクトス。)
少し漂う空気の悪化に気づいた勘の良い俺はすかさずオジサンの売り物を注文する。
「イカ焼き5本下さい!!」
え?本音を言えって。
まぁね…だって匂いで一発で分かったんだよ。俺の魂を揺さぶる品物だって!!
あれ?せっかくのお客さんだよ?何で店主にドン引き??
その疑問に答えてくれたのは、クザンで。
「イル焼きは高価で庶民向けじゃないから。ましてや、小さな子供では…」
おい、お兄ちゃんや。誤魔化そうと声を小さくしてもダメだよ。
言ってはならない事を。。、
背の低さ=幼な子
そんな方程式は絶対に許さん!!
「おい、威勢のいい坊や。もしかしてイル焼きの事かい?これは高いよ。お金…え?
ええーーー!!!」
俺の魂、イカ焼きを手に入れるためにアルクトスから貰ったコインを3枚突き出した。
非常識なアルクトスだけど、知識の泉なのは間違いない。
だから!!!
大丈夫…だよね?このオカシナ雰囲気。まさかの偽札とかじゃないよね?(それを言うなら偽コインだけど…)
「お、お、お前。それをさっさとしまえ!!良いか?そのコインはここいらに出回っているモノじゃない。中央の中枢のみしか、使えんなに。なんてものを持ってる餓鬼だよ…。」
ち、ちゅうお…。ま、何か分からんけど使えぬとは。
どうした、アルクトス?!
「ご主人様、申し訳ございません。配慮が足りませんで。」
ぎゃっ!!アルクトス。やめよくれよーー!!
お前、自分が幼な子なの忘れてるでしょ。間違いなくこれじゃ俺、ただ今悪者よ(幼な子に土下座とか…非人間だわ。)
とにかく。
こう言う場合は逃げる一手!!だよね?
「オジサン。これでイル焼き一本下さい。」
なんと…ココで逃げる姿勢(満々だった)の俺を助けたのはクザンだった。高価なんだよね,お金大丈夫かい?
良いのかな。。
「とにかく、あっちで食べましょう。少し注目を集め過ぎましたから。」
幼い兄弟二人に導かれてらかなり歩いてたどり着いたのは、祭りの喧騒から外れた静かな場所で三人でイカ焼きを分け合った。
旨すぎる.コイツってば!!
ふぅ。これで俺の魂は戻ってきたな。
「ククク。相変わらずカズキさんは面白いね。あの、ココから近くにめっちゃ美味しいお菓子の店があるんだ。行ってみる?」
素晴らしいクザンの提案にすぐさま飛びついて着いて(だって菓子だよ。菓子は正義だから!!)俺たちは目を疑った。
そこにあったのは期待していた菓子屋は無く単なる『あばらや』だったから。
「あれ?クザンってば、場所間違えたな!」
と笑って振り返れば、何故か泣きそうな兄弟が『あばらや』を見つめて「お爺ちゃん、お婆ちゃん。」と呟いたから驚いた。
え?まさかココ…二人の祖父母の家??
「おや、誰だい。家の前で泣いてるのは?」
その時、まさかの『あばらや』から老婦人が出て来て声を掛けたから飛び上がって驚いた。(5㌢は浮いたぞ?たぶん…)
ココってまさかの現在進行形で住める場所なのか?!
「良かった。お爺ちゃんも元気ですか?」
「もちろん元気だよ。でもね、お菓子屋は辞めたんだよ。」
いつもの事だけど…。
こんなのんびりした会話の後で、あんな展開になるとは俺…ちっとも予想出来なかったんだ。