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叫ばずにいられないーー!!



ーとある男の視点ー


「まずは、大量にフルーツを買い込んだ客がいないかを当たれ。」


いつもは黙って従う部下達に僅かに躊躇いがみえた。何故だ?


「そんな悠長にしてる暇があるなら、各地に散らばって探した方が宜しいのではないでしょうか?」


いつもは黙って従う副官の逆らう声に腹の中がグツと煮える音がした。お前らバカなのか?俺以上に彼を知るモノなどいないだろう!そう怒鳴りそうになって、現状を思い出してまた気持ちが深く沈む。


「いいか?俺たちに見つからぬ様に姿を消されたのだ。だとすれば我ら如きの魔力探索に引っかかるはずもない。レナトゥス…さまとアルクトス様がご一緒なのだ。それがどう言う事か分かるな?」


悔しそうに唇を噛む副官以下部下達全員を見回して号令を発する。


「これより、本格的な探索に入る。もちろん全員が同じ気持ちだと思うが見つかるまで国に帰れると思うなよ。よいな!!」


「「「ハッ!!!」」」


強い瞳がこちらを見返していた。一人たりとも否やはなかったのが見て取れた。

ま、当然だろう。それだけの恩を我々は受けてきたのだから。


リベル…さ……ま。

本来の名は、確かカズキ様だったか。

その名で、たった一度だけ呼びかけた時の彼の屈託のない笑顔が答えなのか。


あの消えた瞬間の絶望感。まるで身体が地の底に落ちてゆくかの如く深く沈み込む我が心は、今も変わらない。


いや、彼に教わったではないか。絶望は役に立たないと。。



***


「もう絶望しそうだよぉーー!!」


嘆く俺の言葉にレナトゥスもアルクトスも、それどころかペットのヒーちゃんまでも冷たい視線を送ってくる。




こうなったのも俺のせいだって言うのかよ。だって俺は純正の日本人なんだよ?ご飯と醤油のない世界には生きられないから!!!


って言っただけなのに、なんでまた森なんだよー?!恐らく社畜仲間のレナトゥスの早技であっという間に反対側の森へに到着してたし(あのさぁ、ちょっと落ち着いて話を聞いて欲しかったよ…。まさか米と大豆の苗探しを森ですると聞いてたら。。あ、でもやっぱり諦められなかったかな?)

でも、反対側の森は良い森だった。歩いやすい小道に程よく差す陽は暖かで高尾山を遠足した思い出が…アレまた頭の中に何か過った気がしたけど霞の様に消えちゃったか。。

とにかく!!途中までは『なんて暢気なピクニックなんだ』と上機嫌だったのに。


なのに何故こうなった?!

コイツ等何処から来たんだよ。


俺だけ、沢山のカエルに囲まれているんだけど。

しかも、アマガエル的可愛い系のカエルじゃない。もっとデカイヤツ。身長が俺と同じくらいのカエルなんだよ、コレ。ほら、ドラ○エの敵キャラに似た奴いるじゃん。もしかして体当たりとかするのか?いや、魔封じとかは俺には意味ないし。

。。んな場合じゃない。

まだ増える気か?

こんな緑一色の中に立たされても困るんだよ、俺は米と大豆の苗探しにだな。


「ゲコ。ゲコゲコ…」


あれま、また喋れない系なのか。Siriとかみたいな通訳さんとかいないかね?


「ご主人様。コヤツ等はご主人様に挨拶に来たと言っております。」


おぉ、まさかヒーちゃんって通訳も出来るペットなのか?!鳥なのに…まさかのインテリとは…スゲッー。


「じゃあ、こんにちわって伝えて。」ま、とりあえず穏やかにな。挨拶は基本だしな。


あ、今度は通訳いらないのか。全員で跳ね回ってるから喜んでるの俺でも分かる。いやぁ、俺ってカエルにモテモテの能力持ちだったのか?


「主人よ。もう少し考えて話をしてくれ。物悲しくなるわ。モテモテって、主人はこんな風にモテたいと願ってたのか?」


な…お前それは言っちゃダメだよ。モテたかったのは本当だけど人外の訳ないじゃん!!もう。


「ゲコ、ゲコゲコ。」

「何?お前たち如きが何そんな望みを持ってるんだ!!そんなの無理に決まって…」「おい、翻訳家!まずは俺にちゃんと内容伝えろよ。」


あ、ヒーのやつめっちゃ顔を顰めてるし。しかし何でまた変化してるんだ、コイツ?せっかくの可愛いペットなのに人間の姿が気に入ったのか?あの顔を見ていると怪しい記憶が甦って何故か心が叫ぶんだよ。

(イケメン爆ぜろって!!)。。。


「ご主人様。ペットとしての立場は譲りませんから!!それだけは確認しておきますからね?

ゴホン。では…

コヤツ等はご主人様の側にいさせて欲しいと。こんな風に見えて本来の姿とは違うのですが元に戻れなくなったので住処がなくなったと言っています。」


森に住めないなら、何処でも引っ越せば良いんじゃないのか?


「主人よ。コヤツ等は行く場所がないのだ。」


なるほど。分かる、分かるよ…。この世界でも地価が高騰してるんだな。俺も家賃5万円が払えずに大家から隠れて…ん?何か、小さな部屋が見てた気がしたけど…ダメだ。思い出せない。

それにしてもカエルでも家賃に苦労するなんてこの世界ってエゲツない。カエルたちよ、悲しそうな目で見るなよ。

うーん。気の毒だけど俺に出来る事なんて…。


そうだ!!


「名案がある。俺の沢山あるあの温泉を…」「「「ゲコゲコ!!!」」」「主人、それは…」「ご主人様ぁ〜、ダメです!!」


え?声が出て重なって聞こえないよ?

話な途中なのに、何でまたレナトゥスの転移魔法発動した?もう家の前だし…カエルは?

それに、大切な俺の探しモノはどうしたんだ?


「主人よ。彼奴らが暴発したのでとにかく今日のところは戻ったのだ。まぁアレを見てくれ。」


いや、途中から耳に入らないよ。それほど衝撃的な光景が見えてますから。


「何で外の温泉じゃなくて、俺のお気に入りの岩風呂にもカエルが入ってるの?カエル用にちゃんと池を整備して…そう思ってたのに。俺の風呂は?」


そうなんだ。全ての風呂にそれぞれカエルがいる。満員でな。

緑一色の風呂って…。


「主人よ安易に提案するな。彼奴は主人の風呂目掛けてあっという間に転移魔法で飛んだのだ。主人の提案はそれほどの歓喜のを奴らに齎したのだ。しかも不味い事に恐らく変化を…あ、もう手遅れか。」


なんと…まさかのイケメン風呂完成ですか?!

カエル変化=イケメンカタログですか?しかも背中の羽は何でしょう?まさかの天使=カエルなのか?!


「主人よ。彼奴らは本来羽を持つモノ。恐らく力も戻ったに違いない。そんな顔をするな、顔面偏差値だけが、男の全てではない。ハートこそ全てだ。何度もそう言ってたのは主人ではないか?」



しまった。溢れるイケメンに頭に内容が入って来ない。そしにしても誰だよ、『お為ごかし』をレナトゥスに教えたのは?

あ、過去の俺か。


俺のバカァー!!


大量のイケメンに囲まれた上に今日の風呂は絶望的とは。叫ばずにいられない。



「もう、ココロのイケメンなんて嫌だあー!!」




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