『王様の椅子』が見えたので、取り敢えず逃亡します?!
新しいお話を投稿させて頂きます。
今回は、予約投稿を利用して(書き溜めた分のみ)参ります。
宜しくお願いします。
現在途中の作品よりも先の投稿になりすみません。
そちらもいずれ完結させたいと考えております。
楽しんで頂けたら、幸いです。ちかず
前方に立派な椅子が見える。
真っ赤なビロードに金ピカな細かな装飾。
これこそ『王様の椅子』そのもの。
何故、ココにいるんだ?
何故、あの椅子へ向かって歩いてるんだ?
分からないことダラケで、考えようとしても頭の中がぐるぐる混乱するばかりで考えが纏まらない。
そんな混乱中なのに、どうしたんだ?俺の足?!何故、止まる事なく真っ直ぐ椅子へと進んで行くんだ?!だが、違和感はソレだけじゃない。
厳粛な雰囲気は、俺の立つ真っ赤な絨毯の左右に並んでるこのおじさん達だよ。あのー、誰です?!
でも誰の顔を見る事も出来ないんだ。だって、俺が進む度に全員が次々と頭を下げてくるし。直角に頭を下げてる人久しぶりに見た気がするよ。
でも、そんな場合じゃない!!だってもう椅子は目の前でその椅子までにある数段の階段が迫ってるんだよ。俺の心の中は一つの言葉でいっぱいで。
それは…。
『あの階段登っちゃダメだ。絶対ダメだ。』だった。
どうしたんだろ。不思議なくらい確信的にそう激しく思う俺の焦りが最高点に到達した時、とっさ俺の口から変な台詞が溢れたんだ…。
「あの俺…高所恐怖症なので階段登れません!!」
いや、自分でも何言ってるんだって、自分にツッコミを入れたい。でもさ、その暇もなかったんだよ、
だってさ。
叫びと共に俺の視界がぐにゃりと歪んで…そして。
今ココ。
大草原の真ん中ですよ。
いや、ヘタな冗談とかじゃないし、実際俺の足を擽るこの感じは間違いなく草の感触なんで間違いはないんです!!
そうか。。
ここまで来てようやく俺は気づいたのだ。
そうだよ、これって夢だよと…遅いよな、俺。そりゃこんな取り止めもない状態、夢以外のなんだっての。
しかし、そう思う(思いたい?!)俺も暫く経つと風とか草の感触とかあまりにもリアル過ぎて泣きそうになってきて。もうこりゃ目覚めるしかないよねって!
ま、定番だからね、まずはほっぺたを抓って…。
痛いっ!!
あれ?リアルに痛いのに目が覚めない?!ではでは…もっとマジでやらねば。ぎゅっーーーっと。。。
痛いぃぃぃぃぃぃーー!!
ほっぺたに穴が開くわ!!こんなんで痣とかになったら、明日会社に行く時笑われるから、俺。
あれ?
会社…それってなんだっけ?
。。。
うぉっ。マジかよ。記憶が変じゃね?ちょっと真剣に思い出さなきゃだよな。
えーっと。俺の名前は伊佐山一輝、27歳の独身。住所は、東京都荒川区…あれ?電話番号は09098…あれれ?
夢の中だからなのかなぁ…こんなに記憶が虫食いなのってさ。
ダメだ…どうしても思い出せない。
えーと、そうだ!!一つ思い出したぞ!確か俺の仕事ってば、『社畜』という名前で、24時間働く戦士と呼ばれてたな。俺。。ちょっとカッコよくないか?
ふふふ。
そんな感じに悦にいってたらブワッと一陣の風が吹いて目の中にゴミが入る。涙目を擦ってるうちに周りの風景に目がいって。
そのまま固まりました。
だってさ。
大草原の草が波のようにウネって遥か向こうに見える山々が青々しててさ。こんな景色、あまりの美しさに誰だって固まるさ。特に疲れている戦士の心に染みるよ。だがそんな俺の感動を台無しにする音が響いたんだよ。
グルルル。
ふう。いつもながらKYな腹の音だな。
夢の中でも腹は減るのか。
腹に手を当てても何の慰めにもならない。それに目の前の美しい景色だって、腹は膨れるはずもない。それに俺ってば、腹が減るとめっちゃ気が滅入るんだよな。。ふぅ。
思わずため息をついた俺の耳に何処からか声が聞こえてきた。誰もいないのに…。。
「相変わらず、万年飢餓状態の奴だな、お前は…」
ええーーー!!!
どこ?誰?
怖すぎるよ、声だけ出演は。
「馬鹿者。俺様を忘れるとは天罰を加えねばならぬな。」
今度は声の方向が分かった。
俺の腰だ。いや、腰の辺りだ。ん?
まさかの日本刀?!これが喋ってるのか!!
衝撃だったのか、疲れだったのか。ここにきてようやく俺の頭は夢から覚める予定らしく意識がブラックアウトしたのだ。
え?決して喋る日本刀に恐怖して気絶した訳じゃないから!!