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第七話 1億倍返しはこちらもダメージがくるな

~~~~ スパイラル事業部 ~~~~~~~~~~~~~~

オレは、写真週刊誌スパイラルに1人で乗り込んでいた。

今日掲載した内容にいて抗議に来たといい。

担当者を呼び出したのだ。

すると案内されたのが、今いる会議室である。


一人でいるのは危険だ。

いろいろな事がフラッシュバックする。

特に詐欺師の杉本だ。

あの女との会話が脳裏をよぎりイライラが募る。

トラウマになりそうだ。


編集長「お待たせしました。編集長の稲垣です。」

ジュン「プロダクションTES、社長をしております。田中です。」


編集長「存じていますよ。」

ジュン「編集長自ら出席してくださるとは、話が早くていい。」


編集長「ご用件は、今朝の記事の件でしょ?

    内容にご不満があるようなので伺いましょう。」

ジュン「はい。

    この記事によって事務所は世間で注目を集めており、

    おたくの雑誌の内容を元にワイドショーが、あることないこと言い。

    うちは朝からバッシングを受けています。

    業務に支障をきたしており、事実でない部分について

    次週号で撤回して頂くようお願いに参じました。」


編集長「撤回といわれてましても、事実なのでしょ。」

ジュン「確かに彼女とホテルへ行ったのは事実です。

    ですが、彼女は財布とパスポートを無くしてしまったため、

    あのホテルで宿泊できるよう手配しただけです。」


編集長「でもあれでしょ。人の弱みに付け込んで

    朝までよろしくやってたんでしょ。

    うらやましい。

    オレもこんな美人だったら部屋取ってあげちゃうよ。」

ジュン「元々あのホテルを予約してたので、

    確かに同じホテルには宿泊しましたが、

    部屋は当然別々でした。

    この記事では娼婦のように扱われてますよね。」


編集長「はいはい。

    別々の部屋で寝てたって証明できるの?

    できないでしょ。

    なら、こう書くしかないでしょ。」

ジュン「憶測で書かれては困ります。

    私は世間から言われもないバッシング浴びてる。

    名誉棄損だ。

    撤回してください。」


編集長「でも下心はあったんでしょ。なら間違ってないでは?」

ジュン「人権侵害だ。

    密入国の件だって、警察の誤認なんです。

    彼女は入国審査を受けて正規に入国したのです。

    嘘だと思うなら警察に問い合わせしてください。」


編集長「今となっては無実なかも知れませんが、

    我々が執筆していた時点では未確定だった。。

    疑われて署まで連れていかれたのは事実なのでしょう?

    なら、記事は間違ってないし、

    文句を言うなら警察に言ってくださいよ。

    こちらも迷惑です。」

ジュン「未確定?

    この記事、どう読んでも密入国者で前科のある凶悪犯に

    なっているはないですか。

    いくら何でもありもしないことまで記載してますよね。

    あなた達はジャーナリストではないのですか?

    一般の人が目にするんです。

    事実を正確に書いくのが使命ではないのですか!」


編集長「おいおい、うちは写真週刊誌ですよ。

    新聞と一緒にされては困ります。」

ジュン「こちらも撤回するきはないのですね。」


ジュン「あと写真についてですが、

    連れの顔もはっきり映っているではないですか。

    彼女、一般人ですよ。

    これ肖像権侵害になりますが。」


編集長「彼女、おたくのタレントじゃないんですか?

    今知りました。」

ジュン「わざとらしい。知ってて敢えてやったんですね。

    一般人の外国人だからいいとでも思ったのか。

    裁判を起こすことはまづないと。」


編集長「そろそろいいですか?

    私、忙しいもんで。」

ジュン「内容について撤回する気も謝罪する気もないと!」


編集長「はい。何か問題でも?」

ジュン「彼女に対して謝罪もしないと!

    これ問題にしますがいいのですね。」


編集長「どうせロシアで買って来た売春婦だろ。

    騒ぎになったら、あなたの方が都合が悪くなるんじゃありませんか?」

ジュン「問題発言だ。

    ここ来てから会話を録音している。

    今の発言を撤回しろ!」


編集長「それ。脅してるつもりですか?

    撤回も謝罪もしませんよ。

    気にくわないなら裁判でもなんでもすればいい。

    慣れてるので。

    あと、その音声、ネットで拡散しても構いません。

    ご自由にどうぞ!」


なんなんだ。こいつ。

まったく会話が通じない。

他人の心をなんとも思ってない。


編集長「ユイさんのスクープを持って来てくださいよ。

    それなら前面的に謝罪もするし、次号で撤回もさせていただきます。」


ジュン「話しにならん。

    SNSに拡散していいんだな。

    是非そうさせていただく。

    後悔するなよ。」

編集長「逆にお願いしたい。

    今週号の販売につながるので。」


かなり頭にした。

オレは席を立ち無言で会議室を出る。


編集長が折れないのは想定内だ。

だが、オレはに勝算があった。

前田に頼めば力でねじ伏せるられるからだ。


では、なぜオレがわざわざここへ来たかというと

スパイラルと交渉したという建前が欲しかっただけなのだ。


だが、編集長と会話して考えが変わった。

権力で勝ったところでオレのこのもやもやは解消できない。

自分で言ったことを後悔させてやる。と胸に刻むのであった。



~~~~ アーカイブ出版本社 ~~~~~~~~~~~~~~

次に訪れたのはアーカイブ出版本社である。

スパイラルの親元だ。


アポなしで、半ば強引に

「スパイラルの件で抗議に来た。社長に合わせろ!」

と無理やり会議の席を設けさせた。


待機していると、社長と秘書の2名が入って来た。

社長に合わせろと言って、本当に社長自ら来てくれるとは。


社長 「お待たせしました。」

ジュン「予約を取らず、押しかけてすみません。」


社長 「今日発行の週刊誌の件ですよね。

    先ほど拝見させていただきました。

    スパイラルの方にも行かれたそうで

    ご無礼なことをされたようで。」


ジュン「はい。相当失礼なことを言われました。」

社長 「誤解をあおるような内容を掲載しまして御社には失礼いたしました。

    大変申し訳ありません。」


こいつ。心から言ってないな。

この場が何とかなればいいくらいにしか考えてない。

言い方は違えどスパイラルと同じだ。

何を言っても無駄だろう。


となれば作戦変更だ。

こいつから欲しい言葉を引き出すまでだ。


ジュン「今朝の週刊誌を見て頂いたのなら話は早い。

    記事の内容に誤りがあります。

    彼女は犯罪者でなければ、娼婦でもありません。


    言いたいことは4点。

    1つ、彼女密入国者でも犯罪者でもない。

       面白おかしくするために脚色したと認めてください。

    2つ、彼女は一般人なんです。顔がはっきりと映ってます。

       謝罪し再発防止を掲示してください。

    3つ、ホテル同伴は泊る所がないから手配したまで。

       下心があるような記載の撤回と謝罪をお願いします。

    4つ、編集長自ら彼女を娼婦発言しました。

       編集長の謝罪を要求します。


    これらの内容を、書面にて弊社へ送ってくいただくようお願いします。

    ここに来た理由はそれだけです。」

秘書 「その謝罪文はどうされるのでしょうか?」


ジュン「もちろん、マスコミの各社に配布させていただきます。

    御社の記事のおかげで、弊社は業務が回らなくなってます。

    汚名を挽回する手段として使わさせていただきます。」

社長 「申し訳ないが、書面にすることはできません。」


ジュン「なぜです?

    今さっき、問題あったと認めたじゃないですか?」


社長 「いえ、そのようなことは口にしておりません。

    誤解をあおるような内容と言った次第です。」

ジュン「では、あの記事に関し御社としては

    問題はなかったと主張しいたいのですね。

    だから謝罪しないと。」


秘書 「いいえ、そいう訳ではありません。

    書面に残すのが難しいと社長がおしゃってます。」

ジュン「では、録音します。

    この場で4点について正式に謝罪してください。」


オレは、音声録音機をテーブルに置き。

録音中してますよ。はいどうぞ、とアピールする。


秘書 「大変、申し訳ありませんが。

    こちらも弊社では対応できません。」

ジュン「もう一度聞きます。

    雑誌記事の内容は不適切で訂正や謝罪をする気があるのか、

    ないのか、どちらなんです?」


社長 「弊社では回答できません。」

秘書 「今回の件は、スパイラル事業部の問題ですので、

    スパイラルの方で対応をお任せしております。」


ジュン「スパイラルでは、謝罪も撤回もしないと言ってます。

    SNSに拡散してもいいとまで言い出してる。

    裁判だってなんだって自由にしていいと。」

秘書 「あちらがそいう判断されたのであれば、そういうことになります。

    申し難いのですが、今回の件に関しては、

    弊社だけでなく御社の方にも問題があったかと思われます。

    一方的にこちらから謝罪することはできません。」


ジュン「理解した。」


ジュン「弱小事務所と侮られたな。

    社長さんよ。会社を守りたい気持ちはわかる。

    特にスパイラルは発売当初からトラブル続きだ。

    1つ1つ対応してたらきりがないし、

    発行部数もあるから口出しし辛いのだろう。

    だが、会社の頂点に立つ人間として、間違っているものは

    間違っていると認め、正すのが役目じゃないのか。

    そして、人として言いたい。

    弊社が世間からバッシングされて、なんとも思わないのか。

    少しでも悪いという気持ちがあるのなら、

    スパイラルに謝罪しろと命じれば全て丸く収まる話しなのに。」


・・・


ジュン「ふぅー。言いたいことは言った。

    では、弊社は御社に対して報復に出ます。

    失礼します。」


オレは席を立つ。

ここまで言われて、社長はだんまりかよ。

大会社の社長さんも大したことないな。

うちの事務所の掃除のおばちゃんの方が人として尊敬できる。


オレは、無言のまま会議室を出る。

これですべての準備が整った。

オレの怒りはMAXだ。

とにかく、社長と編集長だけは、人生最大の後悔を味合わせたい。


アーカイブ出版社を出ると、オレはアンナに電話をした。


♪プルル、プルル


アンナ「ジュン?」

ジュン「ああ。オレだ。」


アンナ「どうしたの?」

ジュン「アンナに頼みたいことがある。

    会って話をしたい。今どこにいる?」


この後、アンナの居場所を聞き、車でピックアップに向かう。

アンナを車に乗せると、誰にも聞かれたくなかったので

車の中で会話することにした。


まづ、アンナに事務所の現状を説明した。

今朝の週刊誌の事は、アンナはまだ知らなかったらしく驚いていた。

記事を読んで。


アンナは泣き出し、オレに謝罪したのだ。


アンナ「私のせいで恩人のジュンに、いっぱい、いっぱい迷惑を掛けました。

    ごめんなさい。

    ほんとうにごめんなさい。」


あぁ、やはりこの世界はいいなぁ。

悪い奴がいるが、こんなにも純粋でいい子もいるではないか。

アンナは何一つ悪いことはしてないのに。

オレに謝罪してくれた。

迷惑を掛けたというならオレと居たせいなのに。

謝罪すべきはオレの方だよ。


ピークだったオレの怒りは沈下した。

危ないところだった。

怒りで暴走ぎみだったところをアンナが止めてくれたのだ。

やっと冷静な判断ができる。


ジュン「謝ることはありません。アンナは何も悪くない。

    むしろ謝らなければならないのはオレの方だ。

    この週刊誌に対しての釈明会見をこれから開こうと思っている。

    大変申し難いのだが、オレと一緒に出てくれないか。

    アンナの口から直接言ってもらわないと伝わらない。」

アンナ「ジュンのお願いなら、会見でもなんでもします。」


ジュン「すまない。あこがれの日本に来たというのに。」

アンナ「あやまらないでください。悪いのはワタシなのだから。」


ジュン「この会見で、アンナは日本中のさらし者になる。

    もしかしたら、日本中出歩けなくなる可能性だってある。」


オレはアンナに頭を下げる。


ジュン「もう一度改めてお願いします。

    事務所のために、オレに協力してください。」


おれは過去に相手に迷惑を掛けると分かってて

頭を下げたことがあっただろうか。

この会見は彼女のためにはならない。

自分のためだ。

最低な人間だな。オレは。


アンナ「頭を上げてください。

    どうやってジュンに恩返しできるか悩んでたんです。

    これで少しでも返せるなら会見やりたいです。

    もう日本中歩けなくなってもいいです。

    それ以上の思い出ができたので。」


くっそ。本当にこれが最善の手なのか。


ジュン「ありがとう。

    これだけは言わせてくれ、日本にいる間は、

    何があっても全力でアンナ守る。これは約束する。

    では、記者会見の作戦を練ろう。」


この後、釈明会見の会場を押さえ、テレビ、雑誌、新聞、ネット

あらゆるメディアを莫大な資金を使って動かした。

緊急で生放送の特番を組んでくれる放送局も現れた。

当然のことながらアーカイブ出版系列は、出入り禁止だ。


~~~~ 都内某所 ~~~~~~~~~~~~~~

もしかしたら人生最大の大勝負かもしれない。

21:00 会見の時間がスタートする。


オレとアンナが司会者の呼びかけで、入場すると

もの凄いフラッシュが浴びた。

この場面だけみたら世界的スターである。


オレは、軽く挨拶をし、問題の週刊誌を出し、

どのような内容が書かれているか改めて説明した。


その間、アンナは下を向いたまま、

オレの解説を聞き、泣きそうな表情でいる。


ジュン「1点目、密入国について釈明いたします。」


アンナ「私は密入国者ではありません。

    ただ、パスポートを無くしただけなんです。」


アンナは記者たちに自分のパスポートを見せる。


アンナ「パスポートはすぐに見つかって、このようにちゃんと持ってます。

    今朝、成田から入国審査をして、ちゃんと入ってきました。

    それなのに、警察も雑誌も私を犯罪者扱いしたんです。

    間違いはあると思います。

    パスポートを無くした私も悪いのですから。

    無実であると判明して、警察は直接ワタシに謝罪してくれました。」


ジュン「雑誌は犯罪者と決めつけ掲載してます。

    撤回して下さいとおねがいたところ、スパイラル編集長にも

    アーカイブ出版社長にも断られました。」


ジュン「これが証拠の音声です。

    SNSにもアップしたので視聴者のみなさんも聞いてみてください。」


会場がどよめく。


ジュン「2点目、社長とホテルで一夜を共にした件について釈明いたします。」

アンナ「社長とホテルに行ったことは事実ですし、

    その日、2人供そのホテルに宿泊したことも事実です。

    ですが聞いてください。


    ワタシは、元々別のホテルを予約してたのです。

    チェックインしたらパスポートがないと宿泊できないと断られたのです。

    財布も一緒になくしていたのでお金もありませんでした。

    そこへ社長が、私を助けてくれたのです。

    お金もパスポートも持ってない怪しい外国人のワタシをです。


    親切にも社長はその日泊まる予定だったホテルで

    私のために別の部屋を取ってくれたのです。


    雑誌に書かれているような、体を売るために付いて行ったのではありません。

    ひどい書かれかたです。

    ワタシはこの記事を読んで凄く悲しくなりました。

    命の恩人である社長にも申し訳ない気持ちでいっぱいです。」


アンナは涙まじりで説明する。


ジュン「これについてもスパイラルの方へ、

    次週、訂正文を出してくださいと言ったら断れました。」


ジュン「3点目、顔写真掲載について抗議いたします。」


アンナ「ひどいです。雑誌に写真が掲載されて。

    もう日本に居られないです。

    ワタシは小さいころから日本が好きになり、日本へ行くためにお金を貯めて

    その間日本語もいっぱいっぱい勉強したんです。

    ワタシ、昨日初めて日本に来たんです。

    あこがれの日本にやっとこれたんです。


    そしたら、今日、雑誌に写真が載って、犯罪者で娼婦扱いされてました。

    ワタシは何をしたのでしょうか?

    日本に来てはダメだったのでしょうか?」


SNSがバズってる。

彼女への同情であふれている。

やばい、投稿の内容を1つ1つ読み上げると泣きそうになる。


ジュン「この件につきましても編集長に謝罪してください

    と要求したところ、さらに酷い発言をされました。

    これがその編集長の言葉です。」


♪どうせロシアで買って来た売春婦だろ。


アンナ「ひどくないですか。人種差別です。ヘイトスピーチです。

    男女差別です。日本ってこんな国だたんですか?」


アンナはぼろぼろ泣きながらメディアに訴え掛けたのである。

テレビの生放送を見ていた視聴者からは出版社への怒り発言が飛び交い。

アンナへの謝罪も多く寄せられた。

そして、スパイラル事業部へは抗議の電話が殺到する。


ジュン「お聞きの通り、このような状況でしたので、

    私はスパイラルでは解決できないと判断し、

    本社であるアーカイブ出版へ直接出向き社長に抗議したのです。

    ですが、社長もですね。

    あなた方にも非があるということで、

    社としては謝罪しないと正式に断れてました。」


我々の主張は終了した。

この後、メディアからの質疑応答に入った。

本来の会見ならば、肯定派も否定派もで出て来てもおかしくない。


だが、今回の会見はオレがスポンサーなのだ。

お金を出して会見をしている。

なので、質問は出版社が悪役になるような質問しか出されない。


アーカイブ出版も反論したいところだろう。

出入り禁止にしたのでそれは不可能だ。

オレの計画通りである。


日本中が、アンナを憐れみ。

日本を嫌いにならないでという応援がすごい。

オレの作戦通りだ。


スパイラル対プロダクションTESの対決ではなく。

スパイラル対外国人の対決に持って行ったからだ。


会見は終了した。

オレのシナリオは成功した。

200点満点の出来だ。


ジュン「アンナありがとう。役者、向いてるんじゃないか。」

アンナ「そうですかぁ。」


ジュン「ほんとうに泣いてるよに見えたよ。

    心奪われた。横に居て目頭が熱くなったよ。

    凄い演技力だね。」

アンナ「最初は演技でした。

    でもしゃべってたら本当に悲しくなりました。」

ジュン「そっか。魂の叫びだったのか。

    さすがにメディアはアンナに感情移入したんじゃないか。

    少なくともテレビとネットはアンナの見方だった。

    明日の新聞、ワイドショーも悪くは取り扱わないと思う。」



会見後、アンナを1人ホテルへ戻した。

オレはというと、何かあったら即対応できるよう事務所へと向かった。

会見の感触は良かった。だが、果たしてどうなるかは先が読めない。

世論が味方に付いてくれれば、メディアはそれに乗っかるだろうと思っている。


我々の行く末がどうなるかドキドキものだ。


~~~~~ プロダクションTES ~~~~~~~~~~~~~~~~~

オレは、事務所にて深夜ニュースを見てる。

番組内では出版社を猛烈に批判し、我々をようごしてくれてる。

なんともありがたい話しだ。

良い方向へ流れてる。


会見から2時間後、とんでもないことが起こる。

CNNやBBC,FOXなど、海外の主要メディアが

さきほどの会見を取り上げたのだ。


放送は、涙で訴えているアンナの映像を流し、

アーカイブ出版は外国人に対して人種差別する会社だ。

という内容で報道された。


外国人人種差別という本来の目的とは異なっているが、

この報道は追い風になっるのは間違いない。

これによって、我々の問題が、国際問題へと発展していった。


もう各メディアは、オレとアンナを悪くは書けないだろう。

スパイラルもだ。


朝になると各ワイドショーは、昨日の放送で週刊誌の内容を

うのみにしたことを謝罪してくれた。

これはありがたい。

そして、スパイラルを非難する方向へと報道がシフトした。


昨日から引き続き事務所への電話は殺到している。

ただし、電話の内容は、アンナへの応援、支援へと変わっていた。


一夜にして、世論に対するイメージは180度一変した。

終わりよければ全て良し。

前社長の不祥事もなかったことになっている。


そして、さらなる強い味方が付いた。

ロシア大統領から「ロシア人の女性は売春婦目的で他国に行かない」と

声明が出たのだ。

おいおい、あの大統領が声明?


オレはこれらの一連を考察する。

そして理解した。

前田の仕業だ。

CNNやBBCがニュースに取り上げたのも違和感を感じていた。

だって、そうだろう。

世界から見たら、会見の内容は週刊誌の内容を訂正しろ、

という小さな小競り合いだ。


前田が裏で手を引いたのだ。間違いない。

あいつなら外交ルートを使ってロシア政府に

けしかけることなど容易だろう。


さて、アーカイブ出版は今のところ

だんまりを決めているがどう出てくるかだ。

世界を巻き込んでしまったのだ。

特にロシア大統領が声明を出した以上、

下手なことを口に出したら外交問題に発展する。

アーカイブ出版の問題だけでは済まなくなる。

おそらく、社内では大騒ぎになっていることだろう。


そして、この後もっと大きな問題へと発展することとなる。


~~~~~ 池袋 ~~~~~~~~~~~~~~~~~

オレは久しぶりに別の身体に乗り移っている。

現在、見た目50代でオールバックのダンディー姿でいる。

このおっさんだけは選ばないだろう思っていだが、

こういう日もくるんだな。


前田のおかげで、研究室に戻らなくともホムンクルスを

乗り換えられるようにた。

ありがたい話だ。

なので、時間的ロスが少なくなったといえる。


時刻は、午前11時。

池袋の大通りを車で走行している。

角を曲がり住宅街へと進む。

気が付くと、人通りの少ない路地裏に入り、

とあるビルの前で停車する。


オレは車を降り、正面の4階建てのビルを眺める。

なんとも年季の入っている建物だ。

地震が来たら倒れるぞ、これ。


オレは、一人単独でビルの中へと入る。

階段で2階へ上り、扉の正面に立つ。

身なりはブランド物のスーツを着ている。


♪ジリジリ。


男  「どなた様で?」

ジュン「(ぎょく)を売りたい。」

男  「少々お待ちください。」


玉とは宝石を意味し、闇取引で宝石を売りに来た、という合図だ。

30秒ほど経って。


♪ガチャ


男が顔を出し、オレ以外に人が居ないか確認する。


男  「1人か!」

ジュン「見りゃわかるだろう。」


男  「誰に聞いてここに来た?」

ジュン「Zって言えば通じるか。」

男  「OK!」


やすやすと入れてくれた。

本来なら入る前にボディチェックをするものだ。

おっさんだし、見た目が弱そうだからかなしなのか。


無言で部屋の中へと入る。

正面にテーブルがあり、反対側に女性が座っている。


女性 「始めまして、どうぞおかけください。」


おれは椅子に腰かけず、女性を見下ろす感じて正面に立つ。


始めましてか。

オレは2度目ましてだけどな。


久しぶりだがな。杉本さんよ。

テナントの件ではお世話になったな。

今日は宝石の仲介人ってか。


オレが、芸能事務所社長の姿だったら、

こいつはどんな反応をするかが見てはみたかった。


杉本 「最初にお断りしておきますが、我々は小さな額のものはお取り扱いしておりません。」

ジュン「そうかい。これはどうかな。」


オレは、カバンをテーブルの上に置く。

カバンが開けると、案内人の男が胸元に手を入れ、

いかにも銃を握るっぞというそぶりを見せる。

オレがカバンから銃を取り出して、乱射でもすると思っているのか。


カバンから13インチのノートパソコンサイズくらいの真っ赤な箱を取り出する。

それを開けると、中央にひときわ目立つ大きなダイヤが一つ。

その周りを小さなダイヤと金、銀で装飾されたネックレスが入っている。

そして、そのネックレスとおそろいのイヤリングもある。


ジュン「どうだ。これならおたくのテリトリーだろう。」

杉本 「ちょっと、調べさせていただきます。」


♪パタン


女性がダイヤに触れようとしたとき、先にオレがフタを閉め、

手のひらで抑える。


ジュン「待て!調べるならここでやれ。」

杉本 「持って逃げたりはしないわよ。下にお仲間もいるのでしょ。」


ジュン「いや、だめだ。」

杉本 「わかりました。」


杉本 「フィー!」


裏からもう一人、フィーという名の男が現れた。

女性が立ちあがると、その男がオレの正面に座る。

どうやらこの男は鑑定士らしい。


オレは、フタを開け、その鑑定士に見せる。

鑑定士は宝石を眺めると、白い布の手袋を付けた。

オレも椅子に腰かける。


ジュン「ケースは触ってもいいが、物は許さん。」

鑑定士「わかりました。」


鑑定士は、目にルーペをはめ、隅々を観察する。

一通り見終えると、箱を持ち上げ裏に書いてある文字を読み取る。


鑑定士「ありがとうございます。」


さて、この鑑定士は本物なのか?

正確に査定で来てるんだろうな。


鑑定士と女性は口には出さないが、目で会話をし始める。

テーブルで視界が遮らているが、どうやら2人は指で金額の相談をしているらしい。


杉本 「お待たせしました。150でどうでしょう?」


おそらく150万で引き取ってくれるってことだな。

おいおい。普通に500万とかで売れる代物だぜ。


150って。このあと交渉して160、170とお互い徐々に競り合わせて

200で丸く収めようというのが見え見えだが。

そうはさせん。


ジュン「600だ。」


引くか?

こっちは600万を提示したんだ。面食らっただろう。

多分、向こうの査定額を超えたはずだ。


杉本 「さすがに、他でも600では引き取ってもらえないと思いますが。」

ジュン「わかった。なら300でどうだ。

    これ以上は譲れない。」


どうだ。微妙なラインだろう。

正直、売れなくてもいい。

隠し玉は他にもある。

こいつらと本気で取引をしに来たわけではない。

だが、この掛け引きは楽しいな。


杉本 「うちのルートで流すなら300は厳しい。」

ジュン「オークションにだせば最低でも400スタートだと思うが。」


杉本 「200でならキャッシュで今すぐお支払できます。」

ジュン「キャッシュは当然だ。マネーロンダリングが目的なんでね。」


・・・


ジュン「そうですか。残念ですね。

    これから長いお付き合いになると思ったのですが。

    まぁ、売り先など腐るほどある。

    今日は下見に来たみたいなものだ。」


オレは席を立つ。


杉本 「分かりました。ご提示・・」


女の言葉を遮る。


ジュン「気が変わった。400にする。」

杉本 「え!」


この間抜けな顔。おもしろ!

こっちは遊びに来てるのだ。楽しいぜ。


杉本 「先ほど300と」

ジュン「気が変わった。

    あんたらが悪いのですよ。即判断しないから。」


案内人「おい、てめぇ。ふざけてんじゃねーぞ。」


案内人でオレの真横に来る。

オレはポケットから手のひらサイズの時限爆弾を取り出し、

ディスプレイを女に向け。

スイッチを入れる。


20

19


ジュン「これが本物かどうかは、ゼロになれば分かる。」

周囲の3人は状況を理解する。

思考が追い付かずどうしていいか分からない。

ただ、じっとしているだけだ。


18

17


案内人「はったりだ。」

ジュン「オレに触るなよ。

    スイッチから指が離れたら、ここにいる全員あの世行だ。」


16

15


杉本 「ケイ!」

女が案内人に顔で下がれと合図する。

案内人は、オレから離れる。

女、かっこいいじゃねぇーか。


14

13


杉本 「大変失礼なことをしました。」


オレはスイッチを止める。

女は、ディスプレイが消えるのを見て安堵する。

どうだ、楽しかったか?


この時限爆弾は本物だ。

オレはここで死んでも構わない。

こいつらはそうはいかんだろう。


ジュン「客人に対してどいう教育をしてるのかね。ここは。」

杉本 「大変ご無礼をいいたしました。

    お詫びに、400で買い取らさせていただきます。」


ジュン「この状況で、まだ取引する気か。

    面白い。気に入った。

    あんたに免じて300で売ってやる。」

杉本 「ありがとうございます。

    只今、用意いたしますので少々お待ち願います。」


案内人がゆっくりと胸元に手を入れ、銃を握っているのが伺える。


ジュン「くれぐれも変な気を起こすなよ。

    下の連中を黙らせるのはオレでも出来ないからな。」


女は案内人に目で止めろと合図する。


杉本 「承知いたしております。」


女性は、裏の金庫からお金を取り出し、3つの札束をオレの目の前に置く。


ジュン「通し番号ではないよな。」

杉本 「もちろんです。」


オレは札束の1つ持って、お金の角をパラパラとめくりランダムな

数値になっていることを確認する。


オレは、金をカバンの中に入れ、宝石をテーブルの上に残したまま出口へと向かう。

そして外へと出る。


階段を降り、待機していた車に乗る。

発着室へと向かう。


あの女を見つけた時点で、恐怖を与えることは簡単だ。

だが、それじゃ治まらない。

オレと同じ屈辱を味合わせないと気が済まない。

今日の目的は、再会の挨拶と下見だ。

下見してよかった、大体やつらの状況を把握できあた。

奴らは、オレを信頼しただろうか。


~~~~~ 発着室 ~~~~~~~~~~~~~~~~~

♪プシュー


オレは、謎の売人からプロダクションTESの社長ではなく

第3の男に乗り換えた。


理由は、先ほどの闇宝石商からエージェントを通じて連絡が来たからだ。

なんでも、いい物が入ったんで見に来てくれないかとのことだ。


それ、さっき俺が売ったネックレスだろ!

と突っ込みたいところだが、オレが仕組んだ罠だ。

こうもすんなり乗っかってくれると面白くない。


オレのエージェント達が、あの闇宝石商を監視している。

奴らはもうオレから逃れることなどできないことを意味する。

あとは、オレがどうしたいかだけ。


あちらから連絡が来たのだ。

エージェントを通じて、金持ちのボンボンが今から伺うと言ってある。

そして、オレはまた奴らに会いに向かおうとしているということだ。


だが、奴らとばかり遊んでなど居られない。

写真週刊誌問題が完全には解決してないからだ。


アーカイブ出版は先ほど、会見すると発表があった。

謝罪するのか、反論するのか。どう出て来るか楽しみだ。


世間では朝から大騒ぎなっているらしい。

というかテレビが大騒ぎにしたというのが正しい。

当初は面白がってオレとアンナを批判したていた。

昨日の会見後、その付けがブーメランとして帰って来た。

恐れた各局は、矛先をアーカイブ出版に決め、

朝から攻撃したというのが事の流れた。


テレビは謝罪してくれたし、我々を加勢してくれてる。

悪い気はしないな。事務所的には良い方向へ進んでいる。


アンナはというと、一人ホテルで閉じこもっている。

今日一日は、出歩くなと言ってあるからだ。

観光に来たというのに申し訳ない。

この埋め合わせはしよう。


ここでとんでもないニュースが入って来た。

アメリカ、中国、オーストラリアが、アーカイブ出版への

パルプの輸出、出版物の輸入を一時停止すると発表された。


どういうこと。

CNNやBBCなどの世界メディアが、昨夜の会見を放送したところ

世界的に大反響になった。

スパイラル編集長の音声も翻訳され、アンナの涙の訴えと供に

ニュースサイトや動画サイトで見ることが出来るようになった。


ネットって怖えー。

昨日の今日だぞ。あの会見が世界で話題になっているのだ。

アンナの訴えが全世界の人に響いたということだ。


それを受けて、アーカイブ出版と取引がある各国の

企業が系列会社と疑われたらしく、防衛策として

一時的に取引を中止したのが経緯である。


なので、ニュースが大げさに報道してるだけで、

実際は各国が輸出、輸入の停止し決めたのではなく、

取引会社が停止したということなのだ。


こうなると、日本国内でも世界に合わせた動きにならざる負えない。

アーカイブ出版と取引のある運輸関連会社が運搬業を一時的に停止したのだ。


アーカイブ出版は、実質業務停止状態となってしまった。

各地の工場も止めざる負えない。


これはえらいことになった。

流石にここまで問題を大きくするつもりはなかった。


目的は、事務所の名誉回復だったのだから。

このままだと大手のアーカイブ出版は潰れてしまう。


100倍返しどころか、1憶倍返しではないか。

本来なら報復が成功し、気が晴れるところだろうが、

事が大きすぎてこっちが焦る。


オレは、宝石商へ向かう車の中で、アーカイブ出版の記者会見を見る。

記者会見には、社長を筆頭に4人の重役、計5名が登場した。


記者たちを前に、5人横一列に並ぶ。

カメラのフラッシュがものすごい。


社長「この度は、プロダクションTES、ならびに週刊誌に掲載した

   外国人女性に、大変ご迷惑をお掛けしたことを謝罪いたします。」


5人そろって、90度に頭を下げる。

カメラのフラッシュがさらにパワーアップする。


まぁ、そうなるわな。

相手は、もうオレではなく世界なのだから。


会見の内容は、アーカイブ出版が全面的に非を認め。

発売が可能状況であれば、来週号のスパイラルにて

謝罪文を掲載すると発表された。


スパイラル編集長の発言や、

社長の発言も不適切だったことを認めた。


事の重大さから、スパイラル編集長は解雇処分とし、

社長は自ら辞表を提出したという。

また、組織の体制も問題だったとし、

役員報酬を50%カットすることも決定した。


スパイラル編集長宅には、女性団体らが抗議に来ているそうで、

編集長は自宅に帰れないらしい。

記者会見にも来ず、どこかで雲隠れしていとこのことだ。


この後、記者による質疑応答をして、記者会見は1時間で終了した。

業務が早く回復することを心から願う。

オレもそこまで鬼ではない。

だが、ここまで悪いイメージが付くとなると、

現状回復までは相当時間が掛かるだろう。


下手をすると、不買運動が始まるかも知れない。

そうならないことを願おう。


そんな事を考えながら闇宝石商へと向うのであった。


~~後日談~~~~~~~~~

アーカイブ出版、記者会見があった夜。

オレは、芸能事務所社長の姿に戻り、

まづはアンナに一目散に電話を入れた。


♪プルル、プルル


アンナ「ジュン!」

ジュン「連絡が遅れてすまない。」


アンナ「記者会見、見たよ。」

ジュン「そうか。アンナには申し訳ないことをした。」


アンナ「なんでジュンが謝るの?」

ジュン「事務所のためにアンナをさらし者にした。

    話しが全世界にまで飛び火して。

    もう、母国(ロシア)にも帰りずらいだろう。

    両親になって謝罪していいか分からない。

    本当にすまないことをした。」


アンナ「ワタシはジュンに感謝してるの。

    恩返しが出来てすごくうれしいのよ。」

ジュン「君はいい子だな。」


アンナ「こんなこと言ってはいけないのでしょうけど、

    普通の人が一生味わないような体験ができてうれしい。

    ジュンに出会ってほんとよかった。」


この子はどこまでいいこなんだ。

やばい、まただ。オレの心がえぐられる。

この感覚はいったいなんだ。

恋でも尊敬でも感謝でもない。説明ができない。

この星は、オレに新しい感情を与えてくれる。


ジュン「そう言ってもらえると、少しは罪悪感が薄れる。」


ジュン「明日、一緒に出かけないか。

    日本に来たんだ。

    アンナに最高のおもてなしをしたい。

    観光に来た外国人がうらやむようなことをしてやりたい。

    チャーター機を用意する。

    日帰りで沖縄と北海道へ行くというのはどうだ?」

アンナ「行きたーい。

    沖縄行きたかったんです。

    東京都、大阪、京都しか予定してなかったから。」


ジュン「決まりだな。」


・・・


ジュン「時間がもったいない。今から沖縄行こう。」

アンナ「今から?もう20時だよ。」


ジュン「24時には到着できるだろう。

    30分後に迎えに行く。準備しててくれ。」

アンナ「準備って何持って行けばいいの?」


ジュン「服とか現地に用意するから。手ぶらでいい。

    すぐ外に出られるようにしておいて。」

アンナ「はぁ。わかった。」


-- 7話 完 --


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― 新着の感想 ―
[良い点] 出版社に対する報復は実にスカッとしました。やる以上はあそこまでやってしまって良いかと思います。社会の膿を出すという意味では。致し方ないかとつねづね思う次第です。アンナも非常に良い子で見てい…
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