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捨てられたヒト、拾われた瞬間  作者: 桜井良樹
2/14

男は全てを失う

男は、自分を見失う。

男はヒトを殺した。


男の髪は黒く、整っていた。


男は血色の良い顔だった。


でも、目だけは死んでいた。


男はこの世から逃げるように死んだ。


男に夢はなかった。


男は自分自身など、どうでもよかった。


でも、守りたいものがあった。


男には愛すべきヒト、育てるべきヒトがいた。


男は昔、弱かった。


全てが弱かった。


男には、自分自身を強くしたヒトがいた。


男にとって、そのヒトは関係は、特別となった。


男にとってそのヒトは、愛すべきヒトになった。


男には、育てるべきヒトができた。


男は、愛すべきヒトとの育てるべきヒトができて、うれしかった。


男は育てるべきヒトに、自分の全ての愛を注いだ。


男はもう一人、育てるべきヒトができた。


でも、男にはもう一人の、育てるべきヒトを見ることが、できなかった。


男は、自分を失った。




男、仙崎弥生せんざきやよいは何もなく、先すら見ることのできない、場所に立っていた。


弥生は、ある男性は話しかけられた。


「君は死んでしまった。 これから、どんな生き方をしたいかな?」


ある男性に話しかけられた。


彼は透き通ったような白い肌に、腰まで伸びた長く白い髪、目は赤く、まるで心を焼き尽くすような色をしていた。


 彼は舐め腐ったような目で弥生を見ていた。


「なあに、そんな深く考えなくていいさ。君はヒトを殺した後、死んだ。

 君を信頼していたヒトは失望しただろうね。

 でも大丈夫、君には新たな世界をあげよう。

 きっと君はその世界で覇を握るだろう。

どうだい、素晴らしいだろう?」と彼は告げた。


 弥生は彼の言葉に聞く耳を持たなかった。


彼はさらに話をした。

「ああ、そうだ。一つ言うことを忘れていたよ。君は気づかなかっただろうけど、「 」は死んでしまったよ。」


彼の言葉を聞いた弥生は、絶望した。


目からは数多の滴が溢れ落ちた。


弥生は守れなかった。


絶望した彼は、男の言葉を受け入れ、第二の仙崎弥生としての人生を歩み始めた。


弥生は目を覚ました。


 目の前には、広がる世界ガラスのような壁で空は覆われている、限りがある世界。

 中心部には巨大な城と、その上には天に浮かぶ島があった。


 弥生は城を目指した。


 彼が言っていた言葉、「君はこの世界で覇を握るだろう。」その言葉を信じたかった。


 弥生は歩き続ける中で、この世界の事情を知った。

 

この世界には神がおり、神は浮かぶ島の上に屋敷を構え、世界の創造にあたっているらしい。

 だが、誰も神を見たことはない。

 神が創り出すのは「()()()()」ただ二つだけ。


 別名     「()()()

  

この世界には国が四ヶ国ある。


 この世界において、圧倒的な力を持っている国

「スガーナ王国」

 浮いた島の下に城を構え、島の使者を城に入れ。

 島との貿易を行っている。

 島からの近さと、貿易の莫大な利益により、この世界において、圧倒的な力を持つ。敗戦国のヒトを奴隷としている。


 スガーナ王国の北東に構える国

    「サディールド帝国」

 圧倒的な軍事力を持ち、着々と領土を広げていたが、スガーナ王国と対立し、戦争を起こした。

 スガーナ王国との戦争に敗北し、領土を半分にまで削られ、過去ほどの創造主に対する発言権は失っている。


 スガーナ王国の南に構える国

    「ヒィアニア=ソルデー連合国」

 元はヒィアニア国、ソルデー王国であったが、ヒィアニア国に敗北し、ソルデー王国は併合された。

 ヒィアニア国の屈強な軍事力、ソルデー王国の並外れた経済力を持ったこの国は、一時期はスガーナ王国を超えるほどの影響力を持ったが、サデールド帝国との戦争において、国内に大打撃を受け、立ち直れない状態でいた。


 スガーナ王国の西に構える国

    「ナーボリック共和国」

謎多き国。誰が統治しているのか分からず、戦争には勝ち続けていた。

 この国には特徴があった。兵には女子供もおり、ここの兵は、()()()()()()()()()

 

 ある町外れ、二人の男性は会話をしていた。


 弥生は二人の男性の会話を盗み聞きした。


「スガーナ王国の王はお亡くなりになってしまった。

スガーナ王国を継いだのはあの第三王子らしい、この国はどうなってしまうのか。

きっと崩壊しちゃうんじゃないのか。」


「ああ、第三王子は傍若無人で得手勝手なヒトらしい。そんな奴がこの国の王になるなんて、俺らもついていないよな。」


 弥生は第三王子が暴君であることを知った。 



 弥生は歩き続けた末に、スガーナ王国の門の前まで着いた。

 

 そこには城下町を守る図体がでかい兵士が十人くらいいた。


一人の兵士は口を開いた。

「おい、身分証明書を見せろ。」


 弥生は身分証明書など持っていなかった。


 弥生はどうしても、ここを通りたかった。


 弥生はもう自分の世間からの目など、どうでもよかった。


彼は門を走り抜けた。

 

 その時、弥生の頭は何かに当たった。

 さっきまではなかった石の壁。


弥生は倒れ落ちた。


兵士は弥生を押さえつけた。


弥生はうつ伏せの状態で、兵士に押さえつけられていた。


「おいお前、スガーナの門を通り抜けようとは、いい度胸じゃねぇか? 俺らも舐められたものだな。

 おいお前ら!こいつを牢へ連れてゆけ。」

 

「は!」

 

 彼は縄で手を縛られた。


 その時彼は信じがたい光景を見た。


兵士たちは縄を()()()()()()()()()()()





弥生はスガーナ王国の地下牢にいた。


薄暗く、土肌が見え、とても冷たかった。


弥生は縄で手を縛られ、明日、拷問を受ける。


弥生はあの光景が忘れられなかった。


兵士達が創り出した縄。


彼はそのことばかり考えながら、少し眠りに着いた。








「起きて 仕事、おくれちゃうよ〜♪」


声が聞こえる。


体を起こし、声のする方向を向くと、愛すべきヒト、仙崎香奈子(せんざきかなこ)がいる。


「おはよう♪」


「おはよう。」


朝の言葉を交わした。


 香奈子はまるで作られた人形のような明るい瞳、明るい茶色のセミロングの髪型、ゆったりとした服を着ている。

そして、お腹は膨らんでいる。


「もー、寝過ぎだよ。昨日、ちゃんと休めたの?」


「僕的には、休めたつもりだっんだけどなぁ。」


「もう、朝ご飯できてるから早く来てね♪」


 香奈子はそう言うと、寝室を出て行った。

 

 着替えを済ませた後、リビングへ向かった。


「おはよう。」


「おはよう。お父さん♪」


香奈子に似た明るい声だ。


少女は黒髪のセミロング、明るく黒い瞳。


少女は守るべきヒト、仙崎花奏(せんざきかなで)


まだ四年しか生きていない。


「お父さん、ゆっくりしてるとおくれちゃうよ。」


「そうだね。早くしないとおくれちゃうね。」

 

朝食を食べている最中、ニュースを見た。


「昨日、○○県□□市にて、放火事件が発生しましたとして矢場宗治(やばむねはる)容疑者が逮捕されました。

死者12名、行方不明者が3名です。

警察は犯行の動機を調べています。」


 少し不思議に思った。

 何故行方不明者が3名も出たのか、それが少し不思議だった。


「行ってきます。」


「行ってきまーす♪」


「行ってらっしゃい♪」


とても明るい声が響いた朝だった。





僕は声が出ない。


娘はきょとんとした顔でこちらを見ている。


「どうしたの? お父さん。」


「な、なんでもないよ。」


「ちょとお父さん、外出てくるね。」


「うん。」


この判断が僕の誤りだった。


僕は見た。体中血だらけの男が交差点に横たわっていた。


「おい、大丈夫か?しっかりしてくれ。

悪かった。僕が悪かった。だから、目を覚ましてくれ、お願いだ、目を覚ましてくれ。」

僕は必死に彼に謝った。


彼は起きない。


その時、更なる地獄が起きた。


「お父さん、どうしたの?」


娘は僕に近づいてきた。


 僕を見た、娘の顔は変わった。


娘の顔は青ざめ、あんなにも明るかった瞳は、僕のような死んだ目に変わった。


 神は、()()()()をしなかった。


トラックが通りかかり、僕ははねられた。


僕はヒトを殺し、自分は死んだ。


そこから先は覚えていなかった。


弥生は目を覚ました。


目の前には、()()()()()

仙崎弥生は彼と出会う。

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