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捨てられたヒト、拾われた瞬間  作者: 桜井良樹
14/14

写し出される真実

子供の為の、正義の刃を振るう。

 いつも、優しかった。

どんなに辛くても、悲しくても、いつも一緒に居てくれた。

どんな我儘を言っても、笑って許してくれた。

ずっと、嬉しかった。

花奏が話し掛けたら、いつでも答えてくれる。

いつも笑って、明るい声で。


花奏が大好きな、お(・)父(・)さ(・)ん(・)は(・)、も(・)う(・)い(・)な(・)い(・)。(・)







『すごい。』ただ、この一言でしか表せない。


 彼は、無傷でそこに立っている。

何度も、体と首を切り離した。

微々たりとも、動じていない。

体も震えていなければ、体の切れる音を聞いても一切動じない。

 これが、戦(・)士(・)。

僕が今まで見てきた兵士よりも、動きが美しい。


その時。

 ヤヨイは、僕(・)の(・)憧(・)れ(・)に(・)な(・)っ(・)た(・)。

その美しさを僕も成したい。

自分の正義、価値観を貫き通したい。

そして、誰(・)か(・)を(・)、ヤ(・)ヨ(・)イ(・)み(・)た(・)い(・)に(・)魅(・)せ(・)た(・)い(・)。



「大丈夫だったかな。」

「えっ、あ、ありがとう。」

幼い少年に、話しかける。

女の様な格好をした少年。まるで本人の意見など一切気にしない大人が作り上げた、着せ替え人形みたいだ。


「気にする事は無いよ。君達は、一切悪くない。もしもまた、君達が殺される様な事があれば僕が助けよう。」

「ほ、本当にありがとう。」

「ここに居るのが、全ての子供じゃないだろう。他の子達は何処に居る?教えてくれないか?」

「えっ、えっと、多分、地下だと思う。」

少し自信が無さそうに、少年は答えた。

でも、仕方がない。他の子達は疲れて眠っている。

それか、僕(・)に(・)怯(・)え(・)た(・)か(・)だが。

「ありがとう。

 カゲアキ、アルダンテ。地下に向かい、子供たちを助け出して来てくれ。僕は上で、子供を保護しておく。」


「わかりました。僕が全ての子供を助け出します。任せてください。」

「あ、ああ分かった。」

「じゃあ、そこまで彼らを案内してくれないかな?」

「は、はい!わかりました。こっちです。」



俺達は少年に着いて行き、一つのドアの前まで来た。

「この先が、地下へ続く階段です。」

「ありがとう。」

「えっ、こ、このくらい大したことないです。どうか、頑張って下さい。」


 俺は、扉を開けた。

先には薄暗い階段が続いている。

足を踏み出し、その階段を降って行く。

その階段を降り続けた。


アルダンテが降りながら呟いた。

「この下に少女が居る。早く行かないと。それが今、僕に出来るた(・)だ(・)唯(・)一(・)の(・)事(・)だ(・)か(・)ら(・)。」

その呟きは俺を惹きつけた決意とは違う、信念を少し、俺は感じた。


 地下の階段を見ると、あの夜を思い出す。

体の痛さを振り切って走り切った階段。

あの痛さを思い出すと嫌になる。

あの男を殺した時の自分の馬(・)鹿(・)ら(・)し(・)さ(・)を。

俺があの男に突き刺され、怒った事を思い出すと、正(・)直(・)恥(・)ず(・)か(・)し(・)い(・)。


まるで、俺(・)が(・)俺(・)を(・)求(・)め(・)て(・)い(・)る(・)みたいで気持ち悪い。

自分が自分じゃないような感じがした。そしてそれは、さっき駆けようと思った事と、同じように感じる。


と言うか、どうして俺は駆(・)け(・)よ(・)う(・)と(・)し(・)た(・)ん(・)だ(・)?(・)


俺達は、階段を降り切った。

その光景は、あの牢獄と殆(・)ど(・)一(・)緒(・)だ。

土壁に、薄暗い長く続く廊下、錆びた鉄格子。

本当に一緒で、驚いてしまう。

何度見直しても、本当に変わらない。

不(・)思(・)議(・)な(・)く(・)ら(・)い(・)に(・)。

 俺は見直すと奥に、少女が立って居るのに気が付いた。

その少女は何処か心細そうに立って居る。


「あれが、お前の言っていた少女か?」


俺がそう話しかけると、アルダンテの目が変わった。

「彼女だ。良かった。僕は、間(・)違(・)っ(・)て(・)い(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)んだ。本当に、良かった。」

アルダンテの目からは、涙が零れ落ちていた。


「良かったな。」

俺は、何の言葉を掛ければいいか分からなかったが、一応言葉を掛けた。

「ああ、本当に良かった。本当に嬉しい。早く少女の元に行かなくちゃ。」


その時、少女がこちらを向き、俺達の方を見た。

あちらもこちらに気付いたらしい。

少女は、こちらへ走ってやって来る。

その足並みは、まるで迷子の子が親を見つけたように、安心しているように見えた。

「ほ、本当来てくれたの。」

少女は潤んだ声を上げ、必死に話す。

「本当に、来たよ。それが、僕に出来る事だから。もう大丈夫だよ。もう君を縛る者は居ない。安心して。」

「あ、ありがとう!!もう、苦しまなくていいんだね。ありがとう。ありがとう。」

少女は、アルダンテに抱き着いた。その時の少女は満(・)面(・)の(・)笑(・)み(・)だった。

その時のアルダンテは、とても嬉しそうな顔をしていて少し、照れていた。

「そ、そこまで感謝されても、ぼ、僕は最低限の事しか出来てい、いないよ。」

「それでも、嬉しいの。」



これが、本(・)物(・)の(・)感(・)謝(・)か。

泣いて喜ぶ。心から相手へのお礼を言う。その形をもので表したり、行動で表したりする。

これが、感謝か。

俺も誰かに、さ《・》れ(・)て(・)み(・)た(・)か(・)っ(・)た(・)な(・)。


「他の子達は何処に居る?」

俺は少女に尋ねた。

 聞いた時、少女は感謝からの興奮から落ち着た後、答えた。

「みんな、死んじゃった。」

その声は、何処か悔しそうだった。

「そ、それは本当?」

アルダンテは尋ねる。きっと、信じたくないのだろう。

「そ、そんな嘘。吐きたくないよ。」

「ど、どうして死んでしまったの?」

「、、、、、み、皆んな、何(・)も(・)食(・)べ(・)れ(・)な(・)く(・)て(・)。私達は、お客様の接客が下手くそだから。何も貰えないの。」

改めて少女を見ると



それを聞いた僕は、堪忍袋の尾が切れた。

「ふ、、、、ふざけるな!!本当に、何なんだよ。

子供使った商売なのに、子供すら格差をつけるのかよ。どうしてこんな店が、合(・)法(・)なんだよ。どうして僕は、知(・)ら(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)ん(・)だ(・)よ(・)。ぼ、僕は皆(・)ん(・)な(・)を(・)幸(・)せ(・)に(・)す(・)る(・)側(・)の(・)人(・)間(・)な(・)の(・)に(・)。」

「そ、そこまで気にする事じゃないよ。わ、私が助けを求めるたのも遅かったからみ、皆んな死んじゃった。」

「君が責任を背負う必要は無い。これは僕の責任だ。僕がもう少し早くここへ来ていれば、助かったかもしれないのに、僕が臆病だから、誰かがいないと、動けないから。」


「別に、どっちも悪くないだろ。変な責任を背負うのはやめておけ。後から恥ずかしくなるぞ。」

「で、でも。」

「もう、ここに誰も居ないなら、戻るぞ。」

「あ、は、はい。」


 変な責任は、自(・)分(・)を壊す。

相手が悪いのに、自分にも非があったと考え続け、変なストレスを溜める。

 俺はそんな奴を、ずっと間近で観てきた。

あいつはずっと言っていた。

「僕が、みんなと話せないから。」


「僕が、自分の意見を述べないから。」


「僕が、皆(・)ん(・)な(・)と(・)違(・)う(・)から。」


そんな責任を負うのは相手のツボだ。

そのストレスが、自分の行動を締め付け、相手の行動範囲を広げる。

自分が一(・)人(・)苦しんでいるのに、相手は、恋(・)人(・)、友(・)達(・)と楽しく、優雅に過ごす。

 その一方で、自分は一人、ポジティブに考えようとしても責任が邪魔をして、ネガティブに考えてしまう。

 そんなヒトを、もう観たく無い。

だったら、俺が止(・)め(・)る(・)し(・)か(・)、選(・)択(・)肢(・)は(・)無(・)い(・)。


俺は階段を登り、きた道を振り返って行く。


牢獄内にはどれだけの骨があるのか考えると、あまりいい気はしない。

その骨は小さく、中がスカスカでとても軽いだろう。

将来を夢見た少年少女が、大人達の都合で、運命が決まる。その辛さを俺は全て理解することが出来ないが、きっとそれは、俺の考えている何倍も辛くて、苦しい事なのだろう。

そんな事を思いながら、階段をのぼり続けた。



 地上に着き、廊下を歩いていく、薄暗い廊下には、朝の明かりが入って来ている。もう夜が明けたらしい。


耳を澄ます。

すると、床が軋む音が聞こえる。


この廊下の軋む音ではない。

最初歩いた時、音は一切しなかった。

そしてこの音は、廊下の先のヤヨイが居る部屋からは聞こえない。


ま(・)だ(・)、子(・)供(・)が(・)残(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)。


そう思った。

他にある部屋の何処かに、まだ子供が居る。


「すまない。先にヤヨイの元へ向かってくれ。俺は少し調べたい事がある。」

「は、はい。分かりました。さっ、行こうか。」

「う、うん。」


二人の少年少女は手(・)も(・)繋(・)い(・)で(・)向かった。

それを後ろから眺める時俺は、何処か嬉(・)し(・)か(・)っ(・)た(・)。


 俺は、向かう。


軋む音が、聞こえる部屋へ。

微かな音だが、聞こえる。

その音はまるで家(・)のような安心感が、俺にはある。

 

 聴き慣れていた音。

その微かな音を頼りに進んで行く。


そして、扉を開けた。


「あっ、み、見つかっちゃった。ご、ごめんなさい。」


 そこには、セミロングの黒髪の、紺色のワンピースに白いカーデガンを着た少女が立っている。


俺は、その少女の顔を見た。


俺は、思い出した。

こ(・)の(・)顔(・)を(・)知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)。


あの写真で見た少女が、そこに、立(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)。







その少女を、見たことがある。








読んで頂きありがとうございました。

良かったら、評価して頂けると、とても嬉しいです。どうかよろしくお願いします。


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