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 来客が予想以上に早く帰って行き時間が余った。


 アフタヌーンティーという習慣は今の自分には体重増加まっしぐらになりそうなのでお土産で頂いた緑茶を再度用意してくれるように頼み、書斎に置いてあった資料をいくつか夕日が落ちるまでは温かいこのティールームで読むことにした。


 マギーが新しく淹れたお茶のセットを置いてくれたので、温かいお茶を口にしながら資料に目を通す。勿論家の領地の管理や公爵家として行わなくてはならない書類はあるがそれ以外が山のようだ。


 最近読まなくちゃいけない資料が溜まりすぎている。


 持ってきた資料だけでは足りないと思い、部屋を出ようと思ったのも束の間、遠くから聞こえてきた「お待ちください」と騒ぐ召使い達の声。


 我が家の人間を困らせている来客の声は、遠くから聞いてもはっきり分かる。


(噂をすれば影? あの声。まさか帰国したのか)


 そうやって騒がしく現れる人間は、一人しかいない。


 お陰で自然と眉間に皺が寄る。

 家の召使いの案内など全く無視して、ノックもなしに勝手に勢い良く観音開きのドアを開け、「レナ! ちょっと、頼みがあるんだ!」と、ずかずかと我が物顔で入ってきた騒々しい人物はやはり予想通りだった。


 現れた厚かましい男は正式にはジュリアン・ラジエル・ブラックバーン・レッドフォードという。


 王宮で五本の指に入る有能な政治家で運輸大臣を務める私の伯父カスパールを父に持ち、私と同じ黒髪青目の従兄弟殿はブラックバーン伯爵を名乗っている。


「やっぱり、ジュリアン・ラジエル・ブラックバーン。


 いったい人の家を何だと思っているの!」


「久しぶりなのにきついなあ」


「それはジュリアンにだけよ。

 で、何の用?」


「何の用って。ほんとつれない奴だな。

 そうだ、そうだ。あのさ、ちょっと話聞いてくれない?」


 いきなり神妙な声になられて、思わず調子が狂う。

 私は机の上にあった資料達をサイドボードの上に移してさっきまで座っていた椅子に座った。


「話って恋のお話だったら、お茶頭から被って帰ることになるわよ」


 その言葉を理解した瞬間、ジュリアンの目線がテーブルの上の白いティーポットに向けられる。

 こいつなら、恋の話じゃなくても気に障ったらやりかねないと言わんばかりの表情をした彼に思わずニヤッと笑ってしまうけれど、これぐらいの意地悪は良いわよね。

 従兄弟殿は私の気性をよく知っている。


 そーっと自分の傍らにティーポットを持っていき、こわばった笑顔で「恋の話じゃないんだ、あのさ」と恐る恐る話を切り出した。



読んでくださってありがとうございます。

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