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王国学校の異端児  作者: あまあん
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入学試験その4

4時58分。戦闘試験開始の2分前だ。前には既に相手がいて、周りはテープで囲まれていて、その外には18と書かれた立て札が立っている。


心臓の音がやけに大きく聞こえる。ドクンドクンとまるで耳の真横に心臓があるみたいだ。足が震え、嫌な汗が流れる。ここまで緊張するものなのか。


自信はある。あるはずなのに、もしも上手くいかなかったらと思うと落ち着かなくなる。


緊張しない方が良いパフォーマンスができる。そう分かっていながら体が言うことを聞かない。あと1分でなんとかしなきゃ。そう思えば思うほど心臓の音が大きくなる。


「カザノさん!!ファイトオ!!」


突然のことだった。ミルノの声だ。後ろを振り返ると、そこには右の口の端だけ吊り上げ、悪そうな笑顔で右腕を大きく突き出す彼女がいた。俺は一瞬驚き、何か言おうと口を開けるもその口はすぐに閉まった。だけど彼女は、悪そうな笑みは崩さずに突き出した腕を自分の胸に2回トントンと当てて、今度は親指を上げて腕を突き出した。


本当、彼女には救われる。


フーっと息を吐く。見えなくなっていた視界が元に戻る。両足でしっかりと地面を踏み、剣を持っていない方の腕で目元まで伸びている邪魔な髪をかきあげる。


うるさくて仕方がなかった心臓の音が消えていく。よし。


「お願いします」


前にいた、教師と思われる男の人が少し驚いたような顔をする。


「ふむ。こちらこそよろしく頼む。いつでもかかってきていいよ」


右手だけで持っていた剣を、両手で滑らないように強く握る。


相手の得物も両手剣だ。構えを見ても何を警戒すればいいか分からない。自分のできることをするだけだ。


魔力を筋力へと変換。パワーエイジと呼ばれる初歩的な技だ。


強く踏み込み相手の左肩を狙い袈裟斬り。相手はそれを、力をぶつからせるというより流すように、剣でいなした。俺は間髪入れずに剣をそのまま右から左に、相手の左脇腹を狙い力を込める。


しかし、踏み込みのないその剣は相手の剣で簡単に防がれる。俺は、剣が弾かれないように力を加減しつつ、魔力を本来通らないはずの剣の先に通し、魔力を炎に変換し爆発させる。ファイアボムと呼ばれる簡単な魔法だ。火力は低いが、ここまでの至近距離で喰らえば話は別だ。


「っあああ!」


そう言って相手は焼けた右脇腹を抑え、うずくまる。すぐさま救護隊が駆けつけ、彼を搬送していく。あのくらいなら後遺症なども残らない。


もう一度、フーっと息を吐き心拍数を元に戻す。恐らく勝利というのは相当得点として高いはずだ。少し怪我させてしまったことへの罪悪感もあるが、やはりそれよりも喜びの方が大きかった。小さく「よし」と呟く。


後ろを振り返りミルノにブイサインを送る。しかしミルノは目を見開き呆然としていた。


すると彼女はテープをくぐり抜けこちらに駆け寄ってきて、どれだけ遠くても聞こえるような大きな声で叫んだ。


「何が起こっ、した、何をしたんですか!!!」

「まず落ち着け」


感情の起伏が激しいなぁ、と伸びをしつつ苦笑いをする。ミルノは1度だけ大きく息を吸い込んで出したと思ったらすぐに


「落ち着きました!何をしたんですか!」


と言った。何をした…か。簡単に言えば…


「ファイアボムで相手を倒した」

「それは分かります!どうやってファイアボムを使ったんですか!」

「あれだ。気合いとか」

「誤魔化さないでください」


と、彼女は底冷えするような声で言った。寒暖差で風邪をひきそうだ。


「冗談だよ冗談。はは。そうだな…俺って少し魔力が特殊でさ」


何と説明しおうか少し考える。その間も彼女はじっとこちらの目を食い入るように見ていた。


「あー。普通って魔力はさ、魔精樹でできた杖にしか通らないよね」


魔精樹というのは、魔力のみを養分として育つ木のことだ。養分とする魔力は星や、近くを通りかかった生き物や魔物を根で捕まえて取り入れる。


「そうです。それなのにファイアボムは剣の先で発動してました」

「うん。それが俺の魔力の特性で、あらゆるものに魔力が通るんだ」

「うそっ…」


彼女はそう言って何か考え始めた。

すぐにもう1人の教師らしき人が来て、戦闘試験の終了を告げられた。

テープをくぐり抜け、歩きながらふと彼女の試験はどうなったのだろうと思う。後ろを振り返り、同じくテープをくぐり抜けた彼女に聞いた。


「そんなことはいいとして、ミルノの試験はどうだったの?」

「そ、そんなことで済む話じゃありませんよ!そんな魔力…どうなってるんですか!」

「うーん、どうなっていると言われても、生まれつきとしか言えんし俺もよくわからないんだ」


それでも何か言おうとする彼女の声を遮りもう一度繰り返す。


「ともかく俺はミルノがどうだったのか知りたいんだ。試験はどうだったんだ?」


彼女は少し不服そうにしつつも、話してくれた。


「全部いい感じに出来ましたし多分大丈夫だと思いますよ。明日の試験でミスがあれば分からなくなりますけど」

「討伐試験か。番号は何番だった?」

「249でしたよ」

「惜しいな。俺は251番だ」


ポケットからカードを出してひらひらと振る。


番号が近いのは彼女の方が早く会場に入りカードを貰ったからだろうか。いや、流石にそこまでいい加減に配ってはいないか。


「カザノさん私の少し後に入ってましたもんね。私は入口前にいた友達と一緒にカードを貰ったので同じチームでしたよ」

「カード配布、雑過ぎないか?」

「んー…元々入学希望者が何人くるかも分かりませんし、バラバラに配ってチームメイトがいない人が出ないようにするためじゃないですか?」

「ああ、なるほど」


確かにその通りだ。何気にミルノって頭良いな。貴族だから当然か。


校門の近くまで来た時、彼女は少し申し訳なさそうにしながら言った。


「ごめんなさい。このあと友達と会う約束をしてるので一緒には帰れません…」


一緒に帰るつもりだったのか…彼女との距離感が分からない。


「そうか。じゃあもしも会えたらまた明日な」

「はい。また明日」


彼女は笑顔で手を振った。俺も軽く手を振ってから学校を出る。


明日は最後の、討伐試験だ。

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