伝説の勇者が異世界に転生したら現代日本だった件
ある所に、魔王に支配された世界がありました。
魔王は、自然が人間に破壊されないよう、モンスター(魔物)を世に放ちました。
モンスターは人が住む街を襲う事はありませんでしたが、人が街から出ると、自然が破壊されないよう攻撃を仕掛けてきました。
人々は、人にとって害のある生き物(害獣:モンスター)を駆除する為、一人の勇者を仕立て上げる事にしました。
そして伝説の勇者に選ばれたのは、「永久乃シンジ」という一人の少年でした。
「永久乃シンジ」という名前は、作者が名前を考えるのがめんどくさい時にテキトーに付ける名前なので、後で変更されるかもしれません。
そしてシンジは、ある日突然予言がどーたらこーたらと言われ、何か無理やりに勇者にさせられてしまいました。
仕方なしに魔王討伐の冒険に出るシンジ。
しかしかろうじて魔王城にたどり着くも、力及ばず魔王に殺されてしまいました。
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そしてふと気が付くと、シンジは雲の上に立っていました。
顔を上げると、そこには羽の生えた大きな人が浮いていました。
「私は全知全能の神ナロー。おお勇者よ、死んでしまうとは何事だ」
神ナローは悲しそうに言いました。
「この世界のルールとして、お前を異世界に転生させなければならなくなりました。ニポーンという国で人生をやり直すといいでしょう」
シンジはナロー神が何を言っているのか分かりませんでした。
「あの、ちょっとま
目の前が真っ白になりました。
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気が付くとそこは、知らない世界でした。
石でもレンガでもない材質で出来た道路や建物。
そして沢山の鉄の箱で出来た乗り物が、道路をものすごいスピードで走って行きます。
(凄いな…。ここがニポーンとかいう国だろうか)
シンジが辺りを見回していると、二人の男が近付いてきました。
「君々、駄目じゃないか。コスプレだけならまだしも、そんな剣の造り物を持って外を出歩いちゃあ」
(こ…こすぷれ…?)
言っている意味は分かりませんでしたが、まずい雰囲気である事だけは分かりました。
「ちょっと署
「”ネイム”!」
シンジは睡眠の呪文を唱え、警察官二人を眠らせると、とんずらをこく事にしました。
人気のない裏路地で息をつくシンジ。
早くもこのニポーンには、自分の居場所が無いんだという事を思い知らされ、涙目になっていました。
「おや!こんなところに『タビジのユクエ』のコスプレをしている御仁が!ぐふふ!」
振り返ると、一人の少女が近付いて来ました。
ビン底の様な分厚いメガネに、もじゃもじゃの前髪で目元を隠しているので、どんな顔をしているのかは分かりません。
「た…『タビジのユクエ』ですか…?」
「そう、インターネットに公開されるも全く閲覧数が伸びなかった漫画、『タビジのユクエ』!でも拙者は名作だったと思っておりまするぞ~!まさか趣味を同じくする心の友が、こんな所におられるとわ!」
(い…いんたーねっと…?まんが…?)
言っている意味は分かりませんが、悪い人では無さそうだとシンジは思いました。
「おっと申し遅れました!拙者、「御宅アキハ」と申す者。よろしければ、あなたの名前を伺ってもよろしいですかな?」
「永久乃シンジと言います」
「おお~良い真名でゴザルな!『永久の真実』でゴザルか!本当に、二次元の世界から出てきた様なオーラがありまするな~!ぐふふ」
「はぁ…。ありがとうございます…」
シンジがたじろぎながらそう返事をした時でした。
御宅アキハと同じくらいの年の女子学生数人が、近くを通りかかりました。
アキハを見てひそひそと話し始めます。
「あ、見て~あの娘、御宅さんじゃない?学校サボってコスプレ男をナンパしてる~」「超ウケル~」
女子学生が通り過ぎた後も、二人は動けませんでした。
アキハはぎこちなく笑います。
「たはは…これはお恥ずかしい所を見られてしまいましたな…。拙者、三次元には居場所がない流浪の浪人でゴザリましてな…それゆえ、二次元に逃げているのでゴザリまするよ…」
先程まで明るかったアキハの顔が曇ります。
「いや、これは失礼つかまつりました。何分、同じ趣味を持つ御仁と出会えた事は初めてでゴザリましてな…少々取り乱してしまいました」
アキハは深々と頭を下げました。
「拙者、ここで永久乃殿に出逢えた事、一生の思い出にいたしますぞ!永久乃殿のますますの御健勝の事、願っておりますぞ~!ぐふふ!」
そう言うと、アキハは背を向けて去っていきました。
残されたシンジは何となく気になって、アキハが消えた交差点へ向かってみる事にしました。
ドンッ!
「キャーッ!」
その時、悲鳴が上がりました。
慌ててシンジが向かってみると、アキハが鉄の箱の乗り物に引かれて倒れていました。
アキハが守ったのか、猫が走って逃げて行きます。
シンジは駆け寄りました。
「アキハさん!大丈夫ですか!?」
「おや…永久乃殿…。またまたお恥ずかしい所を見られてしまいましたな…」
弱々しくアキハは答えます。
「これでいいのでゴザルよ…。この日を待っていたのでゴザル…。これでようやく、二次元の世界に行けるでゴザルからな…」
アキハの周りに、血が広がっていきます。
「拙者、知っているのでゴザルよ…。この世界で死んだ人間は、ナロー神によって異世界に転生させて貰えるという事を…。二次元の世界に、拙者の居場所に…。…ぐふ…ふ…」
シンジは言いました。
「居場所なんてありません…!向こうにも、居場所なんて無かったんです…!」
アキハはシンジを見つめました。
「…そうでゴザッたか…。…永久乃殿は、本当に二次元の世界からやって来たのでゴザルのか…。そして向こうにも、居場所は無かったでゴザルのか…」
アキハはゆっくりと目を閉じます。
「…永久乃殿…。…拙者たちは、一体どこへ向かったら…居場所を見付ける事が出来たのでゴザルかな…」
「分かりません…!ただ、一緒に探す事は出来ます!二人で、一緒に…!」
アキハの目に涙が浮かびました。
「…そうで…ゴザルな…。一人では見付けられなくても…二人なら…見付けられるかも…知れないでゴザルな…」
シンジは魔力を込めました。
「でも…もう手遅れでゴザルなぁ…。…一度だけで良いから…二人で居場所を探すチャンスが…欲しかったでゴザルなぁ…。…一度だけで良いから…!」
シンジは回復の呪文を唱えました。
「”イーネ”!」
光が、溢れました。
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そして。
今、シンジはアキハと二人で旅をしています。
二人の、居場所を探すための旅を。
シンジは聞きました。
「アキハさん、僕たちの居場所は、見付かるかな?」
アキハは答えました。
「拙者、もう居場所は見付けたでゴザルよ、永久乃殿!ぐふふ!」
シンジは笑うと、二人は並んで、歩きだしました。
完
エブリスタの方で書いている「有魂のアニミジオン(仮)」が行き詰まったので、リズムを取り戻すために書いてみたら何故か結構すらすら書ける不思議…。
なぜでしょうか~…?
んが~…。