「ゴキブリくん!」
誰もが嫌いなゴキブリを主人公に、少年と心通わせる友情温まるストーリー。
「ゴキブリくん!」 石橋千晶
みんなは、なぜ、ゴキブリが嫌いなのでしょうか?
黒や茶色で大きいから?
すぱしっこく飛んだりするから?
家の中で衛生的に害だから?
私もとても苦手です。でも、どうして?と聞かれると分かりません。
だって見方をかえると、カブトムシやクワ
ガタに似ているとも思いませんか?
さて、悪者とされているゴキブリくんは今日もやってきました。
ガサガサ、ガサガサ。
「うわ!ゴキブリが出た~!早く殺虫剤!」と、トモくんは叫びました。
すると、ゴキブリくんは「待って…殺さないで。」と慌てて言いました。
トモくんは、ゴキブリがしゃべったことにもびっくり!
「僕、別の家でも足を叩かれて、必死で逃げてきたんだ」と、ゴキブリくん。
トモくんは少し可哀想になって「わかったよ、ベランダを開けるから外に逃げなよ。」と言いました。
ゴキブリくんは、「ありがとう。でもどうして僕たちのことを人間は嫌いなんだろう?」
「そりゃ、ゴキブリが好きな人なんかいないよ。家の中に出てきたら黒いし、早く逃げるし、汚いところ
に出てくるから…。」と、トモくんはゴキブリが嫌いな理由を言いました。
「でも僕たちゴキブリは、人を危険な目に合わせないのに、どうして?」ゴキブリくんは訴えます。
「それもそうだけど…」と、トモくんは考え込みました。
たしかに見た目は黒くて気持ち悪いし、飛ぶこともあるけど、見た目だけで判断してるだけなんじゃない
かと。
「僕はトモくんの嫌がるようなことはしない。だから友達になってよ!」と、ゴキブリ君は言いました。
「分かったよ。でも家では飼えないよ。だってゴキブリを飼っているなんて誰にも言えないからね。」
「やったぁ!人間の友達が出来た!と、ゴキブリくんは大喜び。
それからの、トモくんとゴキブリくんは、夜になると部屋のベランダを開けて、おやつを分けて一緒に
食べたり、夜空を楽しんだりして遊びました。
「きゃっ、出たぁ~!」
学校の教室でゴキブリが出ました。
黒くて大きくてすばしっこいゴキブリです。
先生がつかまえて殺そうとした時です。
トモくんがサッと帽子でかばい、外に逃がしました。
「ええっ!トモって優しいんだね。だってゴキブリなんて逃がすんだもん。」みんな驚いて、拍手です。
トモくんは照れて、「だって見かけは気持ち悪いけど、別に悪いことしないし…。」
それからもトモくんは、どんなに気持ち悪いゴキブリが出てきても、決して殺さず逃がしてあげるの
でした。
おわり
「見た目で判断しないことが大切」というテーマで描きました。