イタイ人
処女作です。生温かい目で見てください。
この世界では黒い髪や目を持つ人がいないらしい。
それに気づいたとのはなんと間抜けなことに異世界トリップしてから1ヶ月も経ってからのことだった。
いきなり知らない場所に来て、気が動転している私に親切にも面倒を見てくれていた家族は、実は珍しい黒髪黒目の私を奴隷商に売るために生かしていただけに過ぎなかったのだ。
それもそうか、自分の畑にいた怪しい女の言うこと信じるなんてことができるわけないよなぁ…なんて今なら思えるけど、やっぱり1ヶ月も信頼してた分、流石に落ち込んだ。
これから私は売られるらしい。のっぺりした純日本人の私の顔は微妙なのだろうけど、この髪と目はかなり気に入られてるみたいで、私を買おうとしてる人も結構いた。でも、奴隷商はがめつく、かなりの高値を言ってるので、まだ買う人はでていなかったんだけど、遂に今日は売られるらしい。
私を買おうとする人は大抵貴族で成金趣味のような服装をしてた。そして、私を買う人もそうだろう。最悪の一言だ。
「来い、195番。」
奴隷商の声がする。嫌だ、行きたくない。絶対、最悪の人生の始まりだ。
「おい!さっさとしろよ!」
恐る恐る奴隷商の元に向かうとザ成金という格好の男がいた。顔は帽子を目深に被っていて全然見えないけど、20代ぐらいだと思う。
奴隷商 から渡された鍵を持った男は、私の首輪を外した。少し触れた肌にぞくりとした感覚がはしる。
固まった私に焦れたのか、新しい主人は私の手首を掴み、足早に去る。後ろの奴隷商の機嫌の良い声がもう遠い。引きづられないようにほぼ走るように着いて行くと人気のない裏路地に出た。いきなり男は止まった。
「あの、」
「しっかり掴まって。」
私を片手で抱き締めらようにした男に呆気にとられてると、周りの景色がぐにゃりと歪む。酷い目眩に襲われたような感じがして、つい、私を支える腕を必死に掴む。上で行きを呑むような声がしたような気がしたけど、それどころじゃなかった。
ジェットコースターで下るときみたいな胃がふわっとする感覚が消えて、恐る恐る目を開けると、甘ったるい目をした超美形が微笑んでいる。
…眩しい
見覚えない人物に固まっていると、その人は私を持ち上げて何処かに向かう。持ち方はまさかのお姫様抱っこ。本当にいたたまれない。
まじまじと彼の顔を見ると、私の目線に気づいて、すっごい色っぽい流し目をしてくれた。
ギャァァァァァ…
あまりの破壊力にライフ0になり、目を違うところに向けると、見覚えある服が目に入る。信じられないことに、私を買った男はこの超絶美形らしい。
「着いたよ。」
甘いマスクによく似合う甘ったるい声に顔をまた男の方にむける。
「ここが今日から、僕達の家だよ。2人で愛を育もうね、僕の愛しい人」
どうやら、私はとんでもないご主人様のところに来てしまったようです…。