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64 ダンジョン攻略④

 休憩を済ませ、ガーゴイルの居た部屋を抜けるとまた下り階段だ。

 今度はハリファーは階段も念入りに調べながら進んでいた。


 階段を下りきるとまた大きなフロアに出た。

 そのフロアの奥には大きな箱が二個、横に並べて置いてあり、ハリファーが「絶対罠だろ」と呟いた。


「みんな、あの宝箱はこの調子だと罠だろうと思う。気を付けてくれ」


 ハリファーのその一言で全員が慎重にフロアに入る。

 彼はまずは宝箱の周辺を調べ、それからポケットから薬瓶を取り出すと左右の宝箱に均等に振りまいた。


「あれは?」


 俺の質問にゴモスが答えてくれた。


「ミミック炙り出し用の薬品だな。ミミックは柑橘系の匂いを極端に嫌うんだ。ああやって撒けば嫌がってガタゴト動く」


【解。ミミックは粘液質の魔物。箱や壁の隙間を好む特性を利用され、宝箱などに押し込まれ、あるいは自発的に潜り込んで天然の罠と化す。酸性の体液で対象を溶かして捕食する】


 右の宝箱がガタゴト言い始め、その宝箱の中からズルリ、と粘液質の生き物が外に出てきた。

 ハリファーがこちらに引き返してくると、メアが軽く詠唱し、次の瞬間ミミックの下から渦巻く火炎が吹き上がり、そのままそのモンスターを焼き殺した。


「流石は魔道騎士。ミミック相手には火炎系に切り替える辺り、手慣れているな」

「火炎系も<炎熱の槍>までは習得済みです。<火柱>程度なら初歩ですしね」


 ゴモスの言葉にメアが返すのを横目で見ながらハリファーは移動し、もう一つの宝箱に取り掛かり始めた。


「こっちは……」


 彼は独り事を言いながら宝箱の蓋を小型のバールの様な工具で少しだけ開くと、ペンを取り出しそのペンの先端を噛んだ。

 ペン先は淡く白色に光り、さしずめペンライトになる。

 そしてそのペンライトを宝箱の内部に差し込むと、彼は内部を細かく見始めた。


「中身は毒霧だな。喜び勇んで開封すると紐で吊るしてある瓶が落下して破損。そこから毒の霧が出てもがき苦しんで死ぬ」


 何と言うか、ダンジョンの所有者もお宝を奪われまいと必至だな。

 

 ハリファーは内部に手を突っ込んで瓶を取り出すとそれを腰の皮袋に押し込んだ。


「ハリファー? そんな所に入れておいて大丈夫なのか?」

「ああ……セイの心配事はそこか。これは魔法のポーチさ。中は異空間になってて小物程度なら自由に入れて自由に取り出せる代物なのさ」


 彼は意気揚々とそんな事を言いながら、宝箱を大きく開いた、その瞬間。


 ドサッ。


 彼の上に粘液質の生き物が落下し、覆いかぶさった。


「こっちが本命かよ!」


 ハリファーが悲鳴を上げる。


【解。スライム。ミミックの近似種だが、こちらのほうがより能動的に獲物を探す。天井の梁や屋根裏、木の枝から落下しての捕獲を好む】


 徐々にそのモンスターに包まれるハリファーに対して、最初に動いたのはベルモアだ。

 彼女は隠しナイフを二本取り出すと一本をイスティリに投げて寄越し、もう一本でスライムを掴むとナイフを横に薙いでスライムを削ぎ始めた。

 意図を察したイスティリも加勢する。


 ゴモスは俺の荷物に飛びついて掌より少し大きい程度の木の枝を出すと、先端を地面に擦った。

 木の枝はさしずめマッチの様に火が付き、彼はそれをスライムに押し付け始めた。


「ピィギィ!?」


 こうなると多勢に無勢で、徐々に力を失うスライムから俺とゴモスでハリファーを引き摺り出した。

 後はメアが<火柱>で始末して事なきを得たのだった。


「はあぁぁぁー。助かったぁぁぁ」


 力無く両手と膝を付いて立ち上がれないハリファーだが、声だけはしっかりと聞こえて皆安堵した。


「良かったな。気管に入られていたら死んでたな」

「ああ……覆いかぶさって来た瞬間、両手で口と鼻だけは守ったぜ」


 ハリファーは俺の荷物から布を出すとガシガシと髪の毛を拭き、それから衣服を雑に拭った。

 俺はもう二枚布を出すとイスティリとベルモアに渡した。


 ハリファーはスライムの粘液を拭うと改めて宝箱に向かう。

 彼はその宝箱の中から水晶玉を取り出すとゴモスに見せた後、俺の背負い鞄に水晶球を放り込んだ。


「多分、何かの『鍵』になるんだと思う。最深部を開く文字通りの鍵か、あるいはこの水晶玉を使って罠を抜けるのか」

「なるほど。まあ水晶玉なんて売ってもたかが知れてるしな。息を整えたらまた降りようか」


 俺たちはハリファーを先頭にまた地下へと下り始めた。

 今までと違い随分と長い階段を下りきるとまたフロアがあるらしかった。

 ハリファーが手で制し、中を覗くとほぼ同時に悲鳴が上がった。


「は、反対側にも階段がある!?」


 その声にギョっとした俺たちは、入口の縁に張り付いて中を覗き込んだ。


 確かに反対側にもこちらと全く同じ作りの階段が見えた。

 よく見ると中央には台座が置いてあり、一つの水晶球がはめ込まれていた。

 どうやら台座にはもう一つ水晶球をはめ込むスペースがあるように見える。


 唐突に音声が流れた。


『ようこそお越しくださいました。ライネスの子孫よ。その台座に水晶球を置き、お二人で秘密の部屋へとお入りください』


 しかし先客がいる可能性が示唆されたゴモスとハリファーは頭を抱え、脂汗をかいていた。


「おいおいおい! 未盗掘じゃなくて単に別の入口から侵入されてただけなのかよ!」

「ちょっと待ってくれ! 俺のギルド長の夢はどこに行くんだぁ!」


 ベルモアは頭を搔きながら「ま、仕方ないか」と割とドライだった。

 イスティリやメアも大して動じて無い様だったが、イズスはがっくりと肩を落としていた。


「せめてセイ殿に購入して貰った杖代だけでも稼ぎたかったのう……」


 なるほど、イズスがダンジョンに潜った理由はそこだったのか。

 そしてハイレアは何故かホッとした様子で笑顔すら見せていたのが意味深だった。


「も、もしかしたら持ち運べなかった財宝が残ってるかも……」

「そ、そうだよな……よし! 水晶球はめ込んで最深部まで行ってみようぜ」


 あきらめきれないゴモスとハリファーがフロアに侵入すると同時に、アラームが鳴り始めた。


『侵入者には死を! 制裁を!』


 これは俺の推測だが、このフロアの定員は二名だったのかも知れない。

 水晶球が置いてあるという事は、もう一人はこの部屋に来ている。

 そして今ゴモスとハリファーが入り、定員オーバーとして罠が発動したのではないか、と。


 室内の壁が二か所崩れ落ち、そこからゴモスの二倍はありそうな金属の像が姿を現した。


「アイアン・ゴーレムだ! しかも二体!?」


 ハリファーが情けない声を出し、素早く階段まで戻ってくる。

 とは言え応戦しないという選択肢は無いらしく、ゴモス・イスティリ・ベルモアが前面に出て、残りの人間がその後ろで援護する形となった。


【解。ゴーレムは呪文によって生を得た魔法生物。材質によって強度が違うが、再利用しやすい土で作られるクレイ・ゴーレムや鋼鉄で作られる強固なアイアン・ゴーレムなどが居る。不死の番兵として活用される事が多い。額に書かれた命令を消せば休止する明確な弱点がある】


 右のゴーレムは黒く塗られており、左のゴーレムは白く塗られていた。

 

「わたくしは順に<俊敏><頑強><剛力>を掛けます。イズス様はそれ以外で学んでいる呪文がございましたら!」

「よし! <鋭利><活力><魔盾>で行くぞ!」


 魔術師二人は連携を取って補助に徹するらしい。


 ハイレアは朗々と詠唱を開始し、俺たちの体に光の波が纏わり付き始める。

 その光は俺たちに勇気と強さを同時に与えてくれてるのだと体感的に分かった。


「ハイレア嬢は流石じゃな! もう<鼓舞>が使えるのか」


 その中でイスティリが白いゴーレムを陽動し、ゴモスとベルモアが黒いゴーレムを叩き始める。

 ベルモアがゴーレムの頭部を執拗に槍で付き、ゴモスが足の関節を狙う。


「チイッ!」

 

 ベルモアが避けそこなって、腕にゴーレムの拳が叩きこまれた。

 槍を取り落とさなかったのは流石だが、もはやその腕は使い物にならないのか槍を持ち換える。


 それを見たハイレアはすかさず呪文を唱える。

 緑色の光がベルモアの腕に吸い込まれて行くが、それだけでは足らないと察したハイレアは再度詠唱に入った。


「うおおおお!」


 ゴモスの渾身の一撃が入り、黒いゴーレムの足が叩き落とされた。

 バランスを失い倒れたゴーレムの隙を付いて、ベルモアはすかさずその額に何度も槍を付き入れた。


「あばよ!」


 ゴーレムの額に書かれていた文字は、彼女の連撃で最早文字としての意味を成さなくなり、そうして黒いゴーレムは機能を停止した。


 イスティリはと言うと、あくまで陽動に徹していた。

 白いゴーレムに付かず離れず回避に専念し、ゴモスとベルモアが来るのを待っていた。


 そして、三人の戦士によって白いゴーレムは高速で倒された。


「ハッ! 俺様達の手に掛かればざっとこんなものよ!」

「しかし豪華な補助魔法だったな。いつもこれ位貰えれば魔獣にだって勝てそうだな」


 フロアにまたあの声が聞こえる。


『ゴーレムを倒した勇者たちよ、見事である。水晶球を台座に置き、報酬を受け取れ』


「よっしゃああ! 何か知らんけどこれってゴーレム討伐で認められたって事か!?」

「かも知れんな。セイ、鞄の中の水晶をはめ込んでくれるか?」


 俺は頷いて水晶を台座に填めた。


 次の瞬間、俺の体が透けてき始めた。


「セイ様!」

「セイ!」

「きゃ!?」


 イズスが俺の肩からポテン、と落ちた。


 そうか、水晶を填めた奴しか入室できないというルールに変更は無いんだな。

 そう思った瞬間、俺は全く別の部屋に移動していた。 

 

 そこには漆黒の法衣を身に纏った骸骨と……一人の少女が熾烈な戦いを繰り広げていた。

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