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突撃、魔王砲! (弾丸はオレ……)

「さて、クズは放っておきまして、崖の下では急展開があった模様です。なんと、チーム・フライパン食堂とチーム・セシリアと愉快な仲間たちがファイアドラゴンの(ぬし)に接敵しました!」


「主は50m級の超大物。つまり、これを落とした方が優勝ですね。……落とせればの話ですが」


 興奮した様子の司会と解説の実況。

 と言っても、聞くまでもなく、俺にも見えた。

 なんだ、あのでっかいの。ちょっとスケール違い過ぎだろ。


「あんた! あたしがブレスを引きつけるから、後ろから殴り飛ばしておくれ!」


「いや無理だ、ジル! 背後に回ると、羽が放つ風圧で近づけやしねえ! ラルフも吹き飛ばされちまった!」


 フライパン食堂のおばさんとおっさんも、さすがに攻めあぐねてるぞ。ついでに、どうやらチームメイトがリタイアしちまったらしいな。

 マジでパないな、このドラゴンの主。


 だが、俺には関係ない。

 俺が倒すべき相手はトカゲとセシリア――貴様らだ!


「ただまあ、なんつうかあの主とかいうのを見てると、セシリアたちを乗せたロリコントカゲがカスみたいに見え――」


 ――バフーッ!!


 耳聡いトカゲが俺に向かって火を噴いたので、ひらりと躱してやる。


「くらうか、バカめ!」


 ハハハ!

 正にトカゲの浅知恵。

 彼我の距離はいまだ50m近く。しかも俺は落下速度に落下方向まで変えられる。

 この距離で当たるとでも思っているのなら、大馬鹿――。


 ――シュパ!


 ……おう? 鎖がまたもや巻き付いてきましたよ?


「ハハハ! 油断したな、愚か者め。さっきの炎は単なる目くらましじゃ!」


「てめえ、セシリア! 何しやがんだ」


 投げ縄(鎖製)の先を握るセシリアに、全力で抗議する。

 ふざけんなよ、クソ邪神。

 ちくしょう。

 これじゃあ、あの主を倒せないじゃないか。

 優勝する気ないのか、あのまな板邪神。


「ふざけんなよ、ロリババア。ちくしょう。これじゃあ、てめえらに復讐できないだろうが! 素直にくたばれや、チビガキが!」


「だから、お主はいつも本音がだだ漏れじゃと言っておろうが! というか、誰がロリババアじゃ、誰が!! この先ゥン十年も童貞を予約している分際で粋がるなよ、非モテ日本代表!」


 チッ!

 俺の本心を盗み聞くとは卑怯なヤツだ。

 しかも誰が向こう数十年童貞予約済みだ!

 俺はそのぉ……ちょっと今まで間が悪かっただけだ。

 俺が本気を出せば、ハーレムの一つや二つすぐに……(ごにょごにょ)。


「おっと、この期に及んでチーム・セシリアと愉快な仲間たち、仲間割れのようです! ――ゥン十年予約か。ぷくく。ざまぁ」


「醜い! 仲間を罵倒するとは非モテ日本代表ヨシマサ選手、顔と性格だけでなく行動もすごく醜いですなぁ。モテないわけです。――ところで、『日本』とはどこの地名でしょうか?」


「てめえらまで乗っかってんじゃねえよ! てか、罵倒ならセシリアもしてんじゃねえか!!」


「「ピー、ピー、ピー♪」」(←司会と解説、聞こえないフリ)


 ちくしょう。

 どこもかしこも俺の味方がいねえ。


「ボサッとしている暇はないぞ。お主には少し働いてもらわねばならんのでな! ――やれ、アンデルス」


「了解! ――『クリエイション』!」


 セシリアの号令に合わせて、前魔王がまた何かを練成する。

 できたのは――ヘルメットとプロテクター?

 それらはまるで意志を持っているかのように俺のところまで飛んできて――、


 ――ガション!


 装着完了。

 って、うん?

 なんで俺にヘルメットとプロテクター?


「ヨシマサ~! ぼくの最大魔力を込めて作ったから、何があっても壊れないはずだよ~」


「あー、うん。……ありがとう?」


 ドラゴンの背からブンブンと手を振ってくる前魔王に、とりあえず感謝の言葉を伝えておく。

 でも、ごめん。

 俺のためにすごく頑張ってくれたみたいだけど、これ、何の為かまったく分かんないんだが。


「ヨシマサ~! セシリアから聞いたよ~。あんな危ない作戦の実行役に自分から立候補するなんて、やっぱり君はすごいよ~。ぼく、すごく尊敬する~!」


「ちょっと待て! それはどういう意味だ!」


 今あいつ、満面の笑顔で明らかに雲行き怪しいこと言ったぞ。

 そこら辺の話、詳しくプリーズ。


「チッ! アンデルス、余計なことは言わんでいい。――ドラゴン、やつが勘付く前にやってしまうのじゃ!」


「キシャーッ!」


「こら待てや、セシリア。てめえ、今度は何を企んで……」


「GO!!」


 ――ギュィイイイイイイイイイインッ!


「のぉおおおおおおおおおお! またかぁああああああああああ!」


 ドラゴンの尻尾で再び高速回転させられる俺。

 ヘルメットとプロテクターで重量が増えたせいか、さらにスピードアップしたように感じるぞ。


「なっはっは! これぞ、さっきヨシマサが飛んで行った時に思いついた起死回生の策。名付けて『ハンマー投げ作戦』じゃ!」


 やろう、てめえ!

 俺を主にぶつけるつもりか!


「ぬふふ。安心せい。お主の犠牲はムダにはせん。末代まで笑い話として語り継いでやるわい。未練を残さず逝って来い」


「最悪だよ、このツルペタババ――」


「発射!」(←こめかみに青筋)


「キシャー!」


 ――ブォン!


 俺が言い切る前に投てきさせやがった。


 だが、甘かったな、セシリア。

 俺も――ただでは死なん!

 轟け、空気。唸れ、俺の仙人パワー!


「てめえも道連れだーっ!」


「ん? ――のわぁあああああああああ!」


 ロリコントカゲの尻尾から鎖が離れた瞬間、空気を操って鎖の端をセシリアに巻きつけ、一本釣りにしてやった。

 ハーッハッハ!

 見たか、性悪邪神。

 これが魔王の力だ!


「何すんじゃ、貴様! 逝くなら一人で逝け!」


 上空に打ち上げられながら、セシリアが喚き散らす。

 ハハハ。

 何を言ってるんだ、貴様。 


「つれないこと言うなよ。俺たちパートナーじゃないか。どんな時だっていっしょだぜ!」(←超あくどい笑顔)


「だったら、その防具をよこすのじゃ」


「だが断る」


 鎖を伝って移動してきたセシリアの頭を片手で押さえつける。

 腕のリーチの差は絶対だ。貴様では、俺に勝てん!


 さあ、これで形勢逆転だ。

 俺は防具があるが、貴様は丸腰。

 これでおとなしく逝くのは貴様の方だ!


「さて、それでは受け身の準備を……」(←ドラゴンの方を見てピシリと固まった)


「ん? どうしたのじゃ? ――にゃああああああああああ!」(←ドラゴンの方を見て取り乱した)


「おーっと! 起死回生の一手としてドラゴンの主に特攻を仕掛けたヨシマサ選手とセシリア選手! しかし、これは――」(←満面の笑顔)


「はい。――食べられますね」(←満面の笑顔その2)


 司会と解説のうれしそうな実況を聞きながら、目の前に迫ったドラゴンの口の中をのぞきこむ。

 争っていたことも忘れ、ガッシリ抱き合う俺とセシリア。


「おい、ヨシマサ! さっさと脱出せんか。マジで食われるぞ!」


「もう手遅れだ。間に合わん!」


「使えんヤツじゃな。役立たずめ!」


「だったらてめえがなんとかしろ!」


「できるかボケーッ!」


 この期に及んで互いを罵り合う俺たち。

 その間にもドラゴンの口はせまって来て――。


「「ぎゃぁああああああああああ!」」


 ――パクリ!


 ドラゴンの主に、おいしくいただかれました。

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