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ウルス村の名物夫婦

「『ドラゴンハント』、開始から10分が経過しました。各チーム、ドラゴンの背と崖を駆け抜けつつサイズの大きいターゲットを探しております!」


「前回優勝のチーム・フライパン食堂はさすがの身のこなしですね。――と言いますかジル選手、ファイアドラゴンのブレスをフライパンで弾いていますよ。もはや人間業ではありませんね」


 ようやく他チームのことも実況し始めた司会と解説の声が崖に木霊する。

 ここ、結構うるさいんだけど、よく響くもんだな。

 さすが魔法。


 ちなみに俺たち参加チームには、妙な球体の浮遊物がついてきている。

 こいつが逐一、俺たちの様子を撮影して、映像を司会たちのところや村へ送っているそうだ。

 妙なところでハイテクだな、オヴァノール。

 

 まあ、それは置いといて……。


 他のチームもなかなか頑張っているようだな。

 だが、勝つのは俺たちだ。

 今の内に、精々目立っておくといい。


「おーっと! チーム・フライパン食堂、ファイアドラゴンの火力を使って料理を始めた! 超余裕だ!!」


「正に料理の鉄人。ウルス村が誇る名物夫婦は、やることのスケールが違いますね」


 ……………………。


 うん。

 やっぱ勝てんかもしれん。

 てか、何やっての、あの夫婦。頭おかしいの?


「あ、ヨシマサ。あそこのドラゴンに向かって、僕を投げてくれる?」


 ドラゴンたちが飛んでいる高さまで戻ってきたところで、前魔王が俺の肩を叩きながら言う。

 前魔王が指差す方向を見てみれば、ちょっと小さめのファイアドラゴンがのんきに飛んでいた。


「あいつを仕留める気かよ。あのサイズじゃあ、優勝は絶対無理だぞ」


「違うよ。ちょっと彼に力を貸してもらうだけさ」


「は? 力を貸してもらう?」


 何言ってんだ、こいつ。

 空中に飛び出した恐怖で、頭でもおかしくしたか?


「ビビっておったのはお主だけじゃ。チキンカスが」


「てめえも俺の首に巻き付いて超ビビッていやがっただろうが!」


「ビビっとらんわい。あれはお主に合わせてやっただけじゃ」


 だったら今すぐ、スッポンのように俺の手へ食いつくのをやめろ。

 そしたら今すぐこの雄大な大自然へレシーブしてやるから。


「そんなことしたら落ちてしまうじゃろうが!」


「むしろ落ちてしまえ!」


 セシリアと空中でバチバチ火花を飛ばし合う。

 お約束、お約束。

 すると、前魔王が再び俺の肩を叩いた。


「ヨシマサ、早く! あのドラゴン、行っちゃうから!」


「ああ? いや、でもな……」


 正直、仲間をドラゴンへレシーブするようなマネはしたくないんだが。

 なんかこう、良心の呵責を感じるというか?

 そんなひどいこと、俺にはできません。


「お主、さっきわらわをレシーブどころかダンクしようとしておったじゃろうが。まずはその件について謝ったらどうじゃ?」


「てめえは仲間じゃなくて疫病神だから問題ない」


 睨み合って火花飛ばすまでが1サイクル。

 さて、遊びはこれくらいにしておくか。

 何か策があるみたいだし、ここは前魔王の言うとおりにしておこう。


「んじゃ、投げるぞ~」


「うん、頼むよ」


 前魔王を手のひらに乗せ、仙人の膂力でカタパルト射出。

 打ち出された前魔王は一直線にドラゴンへ飛んで行き――、


「……よっと」


 見事その背に取りついた。

 有無、見事な身のこなしだ。さすがは俺の前任者。(←ナチュラル上から目線)


 で、当然ながら前魔王に取りつかれたドラゴンは暴れ出したわけですが……。


「気持ち良く飛んでいたところ、ごめんね。ちょっと力を貸してくれないかな」


 と前魔王が言ったら、即おとなしくなった。

 何これ。

 前魔王の魔法か?


「あれは魔法じゃない。あやつは昔からモンスターや動物に対して妙なカリスマ性を持っておるのじゃ。わらわがあやつを魔王に仕立て上げたのも、あの能力があればこそというわけじゃ」


「ふーん。カリスマ性ねえ……」


 一応、『魔王』の名は伊達じゃないということか。

 アホのイメージ強いけど、前魔王も魔王になるだけのナチュラルチート的な能力を持っていたということか。


「まあ、言ってしまえばお主のマッチョに対するカリスマ性と同種のものと――」


「その一言はいらんかった気がするが、気のせいか?」


 嫌なことを思い出させてくれるな。

 考えただけで鳥肌が立ってくる。


 などと俺がおぞましい記憶に打ち震えていたら、前魔王がまた何やら変なことを始めた。

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