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ダンジョンは罠いっぱい!

 シェリルが言っていたダンジョンは、洞窟を改造して作られたダンジョンだった。

 魔法か何か知らないが、洞窟の壁に発光する石が埋まっているおかげで、灯りなしでも進める。

 ただ、ダンジョンの中は迷路のようになっていて、そこかしこに罠が仕掛けられていた。

 と言っても、槍天井に落とし穴、どこからともなく飛んでくる矢といった、ベターなものばかりだがな。

 この手の罠はシェリルが逐一教えてくれるので、大助かりだ。

 おかげで俺たちは、何の障害もなくダンジョンを奥へと進んでいった。


「なんつうか、まんまゲームの中に入っちまった気分だな」


 ゆっくりと持ち上げられていく天井を見つめながら、一人呟く。

 すると、前を歩いていたシェリルが「え? ゲーム?」と食いついてきた。


「ヨシマサ、ゲームって何?」


「なんでもねえよ。それよりさ、このダンジョンって誰が作ったんだ? 全自動の罠に光る石とか、人の仕業には思えないんだが」


「神話の時代に神様が作ったって聞いているよ。神代の時代、暇を持て余した神様が道楽でこの類のダンジョンを世界各地に作ったんだって」


「神様が、ねぇ……」


 呟きながら、隣を歩くセシリアを見る。


「あん? なんじゃい」


「いや、なんでも」


 前にこいつから聞いた話だと、この世界の神様って調子に乗って終末戦争始めちゃったような連中なんだよな。

 そんな連中が作ったダンジョンか……。しかも、暇つぶしの道楽とか……。

 正直、遠慮したい要素満点だな。

 どんな笑えん罠が仕掛けられているか、わかったもんじゃない。


「そういったダンジョンはエンドレスで罠や宝箱やモンスターが装填され続けるから、トレジャーハンター内ではかなり重宝されているよ。まあ、中にはえげつないくらいに高難度のダンジョンもあるから、毎年結構な犠牲者が出ているけどね」


「さいですか」


 やっぱりか。

 うちのロリ邪神を見ていると、この世界の神様ってロクなのいそうにないって感じだからな。

 えげつなさも一級品でしょうな。


「けど、ここはアホ神どもが作った中でも割と良心的なダンジョンっていうわけだろう。今んところ注意してれば何とかなるって感じだし、ビビりまくって損したぜ」


 とりあえず、ここがそれほど高難易度なダンジョンじゃなくて助かったぜ。


 モンスターも罠もシェリルが何とかしてくれるらしいしな。

 これじゃあ、本当にただのダンジョン観光だ。

 今のところヤバそうな気配もないし、拍子抜けもいいところだな。(←油断している三下の図)

 

「ああ、うん。確かに良心的なダンジョンだけど……」


 そうとわかりゃ、適当に楽しむと……、


 ――カチッ!


 ……ん? 


「そこの罠、このダンジョンで一番危険なやつだよ。――って、遅かったか」


 シェリルの参った参った~という声が響く。

 同時に、俺は思い出した。

 ここまでは無事に来られたが、このダンジョンはそもそも死亡率20%の危険ダンジョンであったということを……。


 ――ガコンッ!


 仕掛けが動き、何かが装填される音が響く。


『Target rock on』


 どこかから聞こえてくる電子音。

 無駄にハイテクだな。どうやってんだ。

 と思う間に、セシリアを小脇に抱えて退避していくシェリルちゃん。


「――って、ちょっと待て! 俺を置いて逃げんな!?」


「いや、だってこの罠、掛かった人間だけを追い詰めるものだから……」


「大人しく一人で逝って来い。骨くらいは後で拾ってやる」


 二人揃って、思いっきり見捨てる気満々でした。

 ちくしょう!

 薄情な連中め!

 死んだら化けて出てやる。一生ストーカーしてやる!


「それは御免こうむりたいが……ヨシマサよ、準備が整ったようじゃぞ」


 セシリアが言うと同時、俺とセシリアたちの間に妙な金属製の枠みたいなものが下りてきた。

 通路にぴったりと収まるサイズの金属枠。

 そこには2センチ間隔くらいで小さな穴が開いており……。


『Ignition』


 ――パシュン!


 穴から赤い光が飛び出し、枠の中に縦横無数の線が走る。

 それはまるで、赤い光の線でできた網のようで……。


「…………」


 試しにそこらに落ちていた石を投げてみる。

 枠を――というか、赤い光の網を通過した瞬間、ジュッという音&煙と共に、ところてんのようにスライスされた。

 

 ……ヤバい。

 これは以前、バ○オハザードで見た例のアレと同種のものなのでは? 

 最高の切れ味で、胴体をサイコロステーキにしてくれる系のアレなのでは!?


『Start』


「のォオオオオオオオオオおおおおおおっ!?」


 迫る、枠。

 逃げる、俺。


 なんだこれ!

 ファンタジー世界のくせに、なんでSFチックな罠を仕掛けてやがるんだ!

 ふざけんなよ、クソ神が!


 ――カチリ!


 足の裏から何かを踏み抜いた感触が伝わってきた。

 同時に通路の前方の壁に穴が開き、赤黒い何かが付いた刃が振り子のように行き来し始めた。

 数は十。

 ちょっと神様、殺意高すぎやしませんか?

 もしかして、『クソ神』って言ったこと根に持っています?

 

 ――カチリ!


 再び何かを踏んだ感触。

 ハハハ。またですか。

 次は、振り子の刃の向こうで矢が飛び交い始めた。

 すんません、神様!

 マジで謝るんで、いい加減にして下さい!?

 

「って、そんなことしている場合じゃねえ! ――とう!!」


 振り子の間隔に合わせ、刃の間をすり抜ける。

 ちなみに後ろでは、役目を終えた刃がレーザー網によってサイコロにされていた。

 威力高すぎだろう、あのレーザー!


 そうしている間にも次の矢のスコールゾーンがやって来る。

 縦横次々飛び出してくる矢を、出会いを求めて通ったダンス教室仕込みの華麗なステップで交わしていく。

 ちくしょう!

 せめてセシリアだけでも巻き込んどくべきだったぜ。

 そうすりゃ、魔法で何とかできたかもしれないのに!

 つか、俺とあいつは一蓮托生なんだから、あいつを盾に――もとい、この苦労も二人で分け合うべきだろう!


「ハッハッハ! 一人で苦しむがいいわ、愚か者め~!?」


 通路の後ろの方から、エコー付きのセシリアの声が聞こえてくる。

 ただし、姿は見えない。よっぽど後ろの安全圏から観戦しているようだ。

 このヤロウ!

 あとで覚えていろよ!

 というか、こっちの状況がわかってんなら、せめて罠の後ろからついてこいや。

 そうすれば魔法が使えるのに!


「生憎、今手が離せないのじゃ~――はぐはぐ。うーむ♪ ダンジョンで食べるクッキーは絶品なのじゃ」


「明らかにおやつ食ってますよね? 俺が大変な時に、お気楽極楽にのんびりおやつ食ってますよね、どちくしょうーっ!!」


 あのクソ邪神、俺がピンチの時におやつタイムしてやがった。

 こうなったら、最後の望みはシェリルのみ。

 何たってあいつは、俺たちを守ると言い切ったんだ。

 あの男前な美少女なら、きっとすぐにでも助けに来てくれるはず!

 マジで信じてるぜ、シェリ――。


「ヨシマサ~、このクッキー、あんたが焼いたんだって~? すごくおいしいよ~」


「てめえも食ってないでさっさと助けにこいや~!?」


 最悪だった。あの二人、揃いも揃って最悪だった。

 ちくしょう!

 あいつらぜってぇ許さねえ!


「おめえら、覚えてろよ!」


 ――カチリ! (←壁から火炎放射開始)


「アーッ!」


 俺の悲鳴がダンジョン中に木霊した。


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