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ダンジョンへGO!?

 シェリルが行こうとしていたダンジョンは、街道から外れて東に一日ほど進んだところにあった。

 鬱蒼と茂る森の奥にたたずむ不気味なダンジョン。

 なんだか、リザードマンの討伐に行った時のことを思い出すな。

 危険度は段違いだけど……。


「ここからは歩きだね。二人とも準備はいい?」


「もちろんじゃ。いざ行かん、冒険の地へ!」


「俺だけ留守番とかダメですかね?」


「それじゃあ、張り切ってレッツゴー!」


「おーっ!」


「…………」


 念のため聞いてみたが、体よく無視された。

 仕方ない。

 俺も一応魔王(笑)だ。セシリア曰く、龍種に体当たりされても死なないくらいのタフネスは持っているみたいだし、そうそう滅多なことにもならないだろう。

 ここはシェリルの「全然オッケー!」発言を信じて、腹をくくるとするか。


 俺は足取り軽く森へ侵入する二人のバカに続いて、森の中へ分け入った。


「そう言えばシェリルよぉ。お前、これから行くダンジョンを『低難度』とか言っていたけど、そのダンジョンって、もう踏破したやつが他にいるのか?」


「当たり前じゃん。この世界にあるダンジョンと言われるもので、今だ踏破されていないものなんてほとんどないよ」


 なぜか自信満々に言うシェリル。

 いや、なんでお前がそう偉そうなんだ。別にお前がすべて踏破したわけじゃないだろうが。こういうところもセシリアそっくりだ。

 ……まあいい。


「でもそれってさ、今更ダンジョン潜る意味あんの? 前に踏破者がいるってことは、お宝なんて根こそぎ刈りつくされているだろう」


「その点は大丈夫。お宝になりそうなのは、今でもうじゃうじゃいるから」


「うん。その返し、明らかにおかしいよね」


 今のじゃあ、まるでお宝が生きているみたいじゃないか。

 そう。例えば、モン……。


「どこもおかしくないよ。今回ハントするのは、お金になるレアモンスターだから。今回行くダンジョンは、奥にクリスタルゴーレムっていう宝石でできた高レベルモンスターがいるの。片腕くらいもいでこれば、半年は遊んで暮らせるよ」


「さて、帰り道はこっちだったかな」


 回れ右して、来た道を戻ろうとする。

 当然だ。宝箱でも探しに行くのかと思いきや、なんで好き好んでモンスターと戦いに行かねばならんのだ。しかも、高レベルモンスターって……。

 君子危うきに近寄らず。

 賢い俺様は、危険な橋を渡らないのだ。

 人間、堅実に稼ぐのが一番!


「いまさら何を言っておるのじゃ。わらわが行くのだから、お主も行くに決まっておろう。第一、よっぽどのことがなければ死なんのじゃから、気にすることではないじゃろうが」


 さっさと帰ろうとしたら、セシリアに腕を掴まれた。

 チッ!

 面倒なヤツだ。


「それ、攻撃受けても死なないだけで死ぬほど痛い思いするって話だろうが! 俺は嫌だぞ! 痛い思いするのをわかってて、なんでわざわざ高レベルモンスターに勝負を挑まねばならんのじゃ。断固拒否する」


 だが、ここは曲げられん。

 断固たる決意を持って、俺は逃げる!


「そう言わずに行くのじゃよ。お主ならきっと、超役に立つでな。お主こそ、わらわたちの切り札じゃ!」


 制止を振り切って帰ろうとする俺を、セシリアがさらに引き止める。

 ん? なんだ、こいつ。今日はやけに低姿勢だな。

 こいつがおためごかしとか、初めて見たぞ。


「当然じゃ。何たって、お主がいるかどうかでパーティーの生存率がかなり変わってくるでな。よっ! パーティーの要!」


 これまで見たことないくらい俺を立てるセシリア。


 ほうほう。

 ようやくこいつも俺の偉大さがわかってきたか。

 まあ、セシリアといっしょの俺には大魔法もあるからな。

 頼りたい気持ちもわからんではない。

 ムフフ。苦しゅうないぞ。(←調子に乗っている男の図)


「フッフッフ! 仕方ないな。お前がそこまで言うなら、パーティーの要、ガッツリ果たしてやろうではないか!」


「うむ! お主がいるだけで、モンスターのヘイトがすべてそっちに向くでな。しかも、頑丈にしてあるからなかなか死なない。正にパーティー生存の要じゃな。お主がいれば、シェリルも安全に戦えるし、わらわも安全に観戦できるのじゃ!」


「単なる囮じゃねえか! ふざけんじゃねえぞ、クソ邪神!?」


 なんだよ、いるだけで俺にヘイトが向くって。

 冗談じゃねえぞ、ゴルァ!


 しかもなんだ!

 お前、見ているだけかよ。

 先陣切って歩いているんだったら、てめえも戦え! 


「戦えるか、ボケェ! わらわ、か弱いキュートな女の子様じゃぞ!」


「何が『か弱くてキュート』だ。てめえこそお得意の毒舌で、モンスターのハートをガッチリ鷲掴みにしてろや。その間に俺が貴様ごと魔法で吹き飛ばしてやる!!」


「かわいいパートナーに向かって何という言い草じゃ。言われんでも盾になって守るくらいできんのか、肉の壁!」


「誰が肉の壁だ! そこまで言うなら、てめえを盾装備にして突貫してやらぁ!」


「はいはい、二人とも。パートナーだったら喧嘩しないの」


 恒例の魔王&邪神による最終戦争勃発。

 ――と思いきや、今回は横から第三勢力が入ってきやがった。


「ほらほら、仲良く行こうよ。目指す目的地は、目と鼻の先なんだから!」 


「はぁ? ちょっと待てや、シェリル。だから、俺は行かないって何度も……」


「別にあたしは、あんたに戦力になってもらおうなんて思ってないわよ。あんた達はあたしがちゃんと守ってあげるから、安心してダンジョン探索でも楽しんでなさい」


 ピシャリと言い切るシェリルさん。

 うん、無茶苦茶男前ッスな。超美人なのに。


「というわけで、ここまで来たなら覚悟を決めなさい。あんまり喚いていると、男が廃るわよ」


 シェリルが挑発するような目で俺を見つめる。

 ぐぬぬ……。

 さすがにここまで言われると、逃げ帰る理由が見つからない……。

 てか、逃げ帰ると俺の沽券に関わるじゃん、これ。


 あと、シェリルの言葉に仲間ができたと思ったのか、便乗するバカが一人――。 


「そうじゃ、そうじゃ! この根性なし、臆病者、恋愛弱者!?」


「恋愛弱者関係ないだろうが、ロリババア!」 


「貴様、決して言ってはいけないワードを!」


「お互い様だ、ボケナス!」


「はいはい。だから、喧嘩しないの。も~、何度繰り返すの、このやり取り。いいから、さっさと先に進むよ」


 俺たちの醜い言い争いに、いい加減、業を煮やしたのだろう。

 シェリルは俺とセシリアの襟首を掴み、ズルズルと引き摺って行った。

 こうして、俺はセシリアと殴り合いをしながら、シェリルに引き摺られてダンジョンに突入したのだった。

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