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祝! 初逮捕(されました……)

 野を越え、川底を越え、万桜号を走らせ続けること約二日。

 とうとうヴァン王国とやらへたどり着いた。


 ちなみにこの二日間、俺はセシリアからこの世界の情報を引き出すことに苦心し続けていた。

 こいつ、どうでもいいことはペラペラしゃべるくせに、肝心なことはほとんど「知らん!」の一言で済ましちまうんだわ。しかも、別に意地悪しているわけでもなく、本当に知らない様子。こいつ、今まで一体どんな風に生きてきたんだか……。

 で、何とか引き出した情報からわかったことは、こんな感じだ。



①この世界の人間は魔法が使える。


 つまり、この世界の住人はそこらにいる一般人でも魔法が使える。

 ただし、ふつうは火を起こしたりライト代わりの灯りをともす程度が限界。持続時間も数秒から数分程度。

 職業的に魔法使いと呼べるレベルの人間は、ほとんどいないらしい。

 もちろん勇者とかのレベルになれば絶大な魔法を使えるというのも、以前のセシリアの話通り。

 なお、俺はこの世界の住人ではないので、セシリアがいなければ魔法を使うことができない。

 ハッハッハ! ……詐欺だろ、これ。ちくしょう……。


②文明レベルはルネサンス的な?


 聞いている限り、文明レベルはそれ程高くないようだ。

 あ、でも魔法があるせいか妙に文明が発達しているところもあって、映像の投影魔法とかがあるらしい。と言っても、使っているのは金持ちか王族・貴族がほとんど。もしくは大きな町の祭とかで使われるくらいだそうだが……。

 乗り物は馬車が主流で、そこいらにポコポコと王国やら村やらがあるそうだ。

 ちなみにヴァン王国の通貨単位はゴルドだとさ。で、それより小さい単位としてセストというのがあるらしい。換算としては1ゴルド=100セストだ。とりあえず、ドルとセントみたいに考えておこう。


③モンスターや魔族と普通にエンカウントする。


 これは話を聞くまでもなく、ガチで何度も出くわした。(まあ、幸いにも魔族とやらには合わんかったが……)

 こういうところも、まんまRPGっぽいな。

 幸い、向こうもむやみやたらと人間に襲いかかってくることはないから、適度に距離を取っておくのがベストだ。そうしていれば、基本平和だしな。

 ただし、中には高い知能を持ったモンスターもいるそうなので注意が必要だ。そういう連中は、人間を攫ったり、強盗したりとなんでもありらしい。

 くわばら、くわばら……。



 と、そんな前情報を得つつ、ヴァン王国の関所っぽいところの前に付いた俺たちは……。


「なんだ、この乗り物は! 新手の兵器か」


「総員、攻撃に備えよ。中央の近衛騎士団へもすぐ応援要請だ!」


 速攻で兵隊さん方に取り囲まれました。

 ぬかったわ~。

 セシリアがあまりにも普通に万桜号を受け入れていたから、何も考えずにここまで来ちまった。

 よくよく考えれば、ルネサンス期的な世界に自動車なんてモンスターと変わんねえじゃん!


 とりあえず、このままではいきなり逮捕されかねん。

 俺はセシリア共々、事情を説明するために万桜号から降りた。

 ……そしたら、即四方八方から槍を向けられましたよ。切っ先が本物であることを誇示するようにキラリと輝いているね。マジ恐い。


 これはまずいな。出鼻からしくじったかもしれん。

 『サルでもわかる! レメゲドン』くらい持ってくるべきだった。


「貴様ら、何者だ。名を名乗れ!」


 正面に立つ隊長格っぽいのが、問い掛けてきた。

 ふむ……。

 ここで「魔王と邪神です」なんて言ったら、確実に打ち首コースだよな。……魔王の知名度なんて知らんけど。

 ならば、遠方からの旅人を装うのがベストだろう――。


「わらわは邪神セシリア。そして、こやつは新たな魔王ヨシマサじゃ。頭が高いぞ。ひれ伏せぃ、愚民共! ――あいた!?」


 隣のポンコツ邪神が早速やらかしてくれました。

 ゲンコツ叩き込んで黙らせたが、もはや手遅れ。

 兵隊さんたち、ザワザワし始めちゃったし。

 

 ホント、もう嫌!

 こいつバカなの? 


「やい、貴様! 何すんじゃい」


「『何すんじゃい』は俺のセリフだ。てめえ、何余計なこと言ってんだ。見ろ! みなさん早速臨戦態勢に入っちゃったじゃんか」


「名乗れと言われたから正直に名乗っただけじゃろうが。わらわ、悪いことしてないもん!」


「正直すぎるんだ、ボケナス!?」


 槍を向けられる中、醜い仲間割れを繰り広げる俺とセシリア。


 このロリ邪神、今日という今日は許さねえ!

 徹底的に懲らしめてやるわ、ゴルァ!


「お前たち、天下のヴァン王国の門前で魔王と邪神を名乗るとは、いい度胸だ。ちょっとそこの詰所で詳しく話を――」


「うっさい、今忙しいんだ! ちょっと黙ってろや、クソボケが! ――あ……」


 やっべ。

 セシリアとの喧嘩に夢中で何か墓穴を掘ったような……。


 ギギギ……、と油の切れかけたブリキ人形のように声をかけられた方を見てみれば、額に青筋立てた隊長さんが鬼のような形相でこっちを見ていました。


「総員、確保―ッ!」


「おおーっ!」


「ギャーッ! すみませーん!!」


 ……結局しょっぴかれました。


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