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勇者パーティーは本当に(いろんな意味で)レベルが高かった

 勇者の後について富裕街のレストランに行くと、店の入り口で二人の美少女が待っていた。

 身なりからして、あれがセシリアから聞いた噂の姫騎士ちゃんと神官さんだろう。


 姫騎士ちゃんは街の中ということもあってか、白を基調とした軽鎧姿。うんうん。緋色の髪と目が実に栄えるね。清廉な装いの中で、勝ち気で活発そうな瞳が良いアクセントになっている。

 年齢は、大体17~8歳というところだろう。うん、実に好みだ。


 しかし、神官さんの方も聞きしに勝るクォリティ。碧銀の髪にエメラルドの瞳が実にきれいだ。それに、紺を基調とした神官服の上からも、スタイルの良さがよくわかる。

 聖職者のくせに、なんとけしからん人だ。

 マジ最高です! (←いい笑顔でサムズアップ)

 この人は、年齢的に俺と同じくらいだろうな。もう直球ドストライクですわ。


 残りの二人、妖艶な美魔女さんとスタイル抜群な美人格闘家さんがいないのは残念だが、これだけでも十分眼福。


 では、早速……。


「初めまして、お嬢さん方。私、市場街で大道芸人をやっておりますヤマダ・ヨシマサと申します」


 早速お二人の手を取り、挨拶代りのキッスを――しようとしたところで、セシリアからハリセンで叩かれた。


「何すんじゃ、ボケ!」


「貴様こそ何をしておるのじゃ、バカモノが! よりによって、勇者パーティーの姫騎士と神官にナンパなんぞ掛けおって。魔王の名が泣くぞ!」


「知るか、んなもん! 絶世の美少女がいたら、とりあえずナンパする。これは世の真理だ! 第一、この世界で『魔王』って実質的に『アホ』の代名詞だろうが! 名乗るの恥ずかし過ぎて涙が出るわ!」


「違うわい、愚か者! 魔王とは、邪神と並び、この世における至高の存在じゃ!!」


「お前と並んでいる段階で、十分ポンコツじゃねえか! ふざけんじゃねえよ、クソ邪神!?」


「ぐぬぬ! 好き放題言いおッてぇ……。と言うかお主、よくよく思い出してみれば、わらわの時はナンパなんぞせんかったじゃろうが! こんなにも超絶美少女なわらわを前にして!」


「貴様のような人の迷惑考えない寸胴ボディに誰がナンパするか! お呼びじゃないんだよ、チビジャリが!」


 レストランの前で、喧嘩の第3ラウンドを始める俺とセシリア。

 ただ、今回は勇者がすかさず止めに入ってきた。


「はいはい、二人とも。ケンカはそれくらいにしてくれ。せっかくの楽しい食事なんだからね」


 俺とセシリアの額を押さえ、「どうどう、どうどう」と馬でもなだめるように言う勇者。

 つか、なんだこれ!

 勇者に抑えられた瞬間から、俺もセシリアも体を動かせなくなったんだが!


「ヨシマサよ、こいつ魔法使っておるぞ。わらわたちも魔法で対抗するのじゃ」


 そう言って、俺の頭の上に異次元収納空間の出口を開き、『サルでもわかる! レメゲドン』を落としてくるセシリア。

 ちなみにこいつ、勇者成分を摂取し過ぎたせいかトラウマを克服しちまったらしい。勇者嫌いであることに変わりはないが、異様に勇者を怖がったり気絶したりすることはなくなった。

 言い換えれば、弱点が一つなくなっちまったわけだ。勇者め、余計なことをしやがって……。


 ――とそんなことは今、どうでもいい。


 おい、セシリアよ。動けない俺の頭に本を角から落としてきたのは、明らかに悪意あってのことだよな? そうだよな?

 てめえ、勇者の魔法にかこつけて、俺にダメージ与えに来やがったな!


「偶然じゃ、偶然。悪気があったわけではないわい。相変わらず小さいことのこだわる男じゃのう。ぷくく……!」


 その悪意に満ちた笑いは明らかに故意だろうが!

 まったく、胸はないくせにいい度胸だ、クソ邪神。

 このたんこぶの恨み。勇者の前に、てめえへ魔法をぶち込んでやる!


「だから、ケンカはやめなさいって!」


「けぺっ!」


「こけっ!」


 え? 何?

 俺たち、今何された?

 体動かないどころか、急に体の力が抜けちゃったんだけど?

 立っていることすらできなくなっちゃったんだけど!?

 

「うん。二人とも、大人しくなったね。それじゃあ、楽しい食事にレッツゴー!」


「おいコラ勇者! 『レッツゴー!』じゃねえよ! てめえ、俺たちに何をした!」


「おい勇者! 貴様、わらわを荷物のように担ぎおって! 無礼者め! もうちょっと丁重に扱わんか!!」


「それは仕方ないよ。もう片手は、ヨシマサを担ぐのに使っているんだから。無礼で申し訳ないけど、席に着くまで二人とも我慢してくれ」


「「我慢できるかーっ!」」


 二人揃ってギャースギャースと喚くが、体が動かないのでそれ以上の抵抗はできず仕舞い。

 こうして俺たちは、(まさ)しくお荷物扱いでレストランに入店したのだった。

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