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村長はスパルタだった

 ヴァン王国を旅立って一日半。

 俺たちは、何の苦もなく目的地のスコット村にたどり着いた。

 本来なら三日くらいかかる道のりを、半分くらいの時間で楽々走破。

 モンスターに遭遇しても、アクセル全開ですぐに振り切れる。

 正に車バンザイって感じだな。


 で、スコット村に着いた俺たちを迎えてくれたのは、ヴァン王国であったじいさんと瓜二つのじいさんだった。

 どうやらこのじいさんが村長のようだ。


「ようこそお出でくださいました。儂はこの村の村長のトルネと申しますじゃ。歓迎いたしますぞ、人身御く……いえ、何でも屋殿」


「おいこら。今、明らかに人身御供って言おうとしたよな。何? あんたら、俺たちを生贄にでもする気か?」


「弟から伝書鳩で話を伺っておりますじゃ。さあさ、こちらへどうぞ」


「おい、無視か。俺の話は一切無視か」


 到着早々、なかなかにユニークな歓迎をしてくれるじいさんだ。

 さすが、一人で俺たちの晩飯まで平らげちまったヴァン王国版じいさんの兄貴だけのことはある。


 ともあれ、じいさん――紛らわしいので村長を先頭に、村の中を歩く。

 案内されたのは、村長の自宅だった。

 どうやら仕事の期間中は、ここに泊めてもらえるらしい。

 村長は俺とセシリアのために、ベッドが二つある客間を貸してくれた。


 よくよく考えてみれば、家の中で寝るっていうのも久しぶりだな。

 この世界に来てからというもの、ずっとセシリアといっしょに万桜号の中で雑魚寝だったし。


 余談だが、セシリアの邪神パワーでパワーアップして以降、万桜号の図書館部分は半異次元化している。なので、外見は変わらないが中の図書館部分は以前の五倍ほどの床面積になっているのだ。

 おかげで、二人が寝るには十分なスペースが確保できているというわけだ。しかも、奥の方にはキッチンとバス・トイレ完備。どこから来るのか知らないが水までちゃんと出る。

 まったく、邪神パワー様々だぜ。


 ――おっと、話がずれたな。


 まあその、なんだ……。元の世界では当たり前だったが、こうしてみるといいものだな。家の中でベッドに寝るというものは……。


 なお、ナーシアさんは村長宅に自分の部屋を持っているらしく、着いて早々、部屋の中へ引っこんでしまった。

 なので、今ここにいるのは俺とセシリアと村長だけだ。


 とりあえず、バックパックにつめてきた荷物をベッドの脇に置いて、一息つく。


 と、村長が好好爺然とした口調でこう言った。


「ほっほっほ。まあ、まずはゆっくりと旅の疲れを癒してくだされ」


「ああ。ありがとう、村長さん」


「――さあ、ゆっくり休めましたかな。では、早速仕事へ行きますのじゃ」


「早えよ!」


 休憩、二秒で終わりかよ。

 なんなんだ、このじいさん!

 どんだけスパルタなんだよ!


「トルネおじいちゃん、準備できたよ」


 と思ったら、ナーシアさんが気合の入った農業装備で部屋にやって来た。

 あれ? ナーシアさん、部屋に入って一分そこそこしか経っていませんよね。

 何? 早着がえですか?

 ここの村って、これがスタンダードなの?


「おお、ナーシア。遅かったな」


 おい村長よ、これでも遅いと申すか。

 ハハハ!

 このじいさん、何様?


「まあ、ちょうど良いタイミングだったのう。何でも屋殿も、ちょうど準備が終わったところじゃ」


 いや、準備なんかこれっぽっちもしていませんが。

 思いっきり、休憩し始めたばっかりですが!

 もっと休んでいたいのですが!?


「では行きましょうか、何でも屋殿」


「ハハハ! ふざけるなよ、クソジジイ」


「ヨシマサさん、お仕事、一緒に頑張りましょうね!」


「ハハハ……。……はい」


「ハァ……。同情を誘う程、情けない姿じゃのう……」


 黙れ、邪神。憐れんだ目でこっちを見るな。

 俺はフェミニストなの! 女の子(邪神除く)の味方なの!

 ナーシアさんからこんな可憐な笑顔で「一緒に」なんて言われたら、「イエス」と言うしかないだろうが。


 結局俺は、両脇を満面の笑顔を浮かべた村長とナーシアさんに固められ、囚人のように連行されましたとさ……。

 ちゃんちゃん。

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