灰かぶりのカボチャぱんつ
灰かぶり姿のシンデレラは掃除の手を止めて、つぶやきました。
「お母様もお姉様も、今頃はお城で舞踏会なのでしょうね。ああ、わたしも行きたかったなあ」
「その願い、かなえてあげよう」
すると、いきなり煙とともにローブ姿のお婆さんが、どこからともなく現れた。
「ワシは魔法使い。シンデレラや。魔法でお前をお城の舞踏会に連れて行ってやろう」
「でも、わたしには舞踏会に着てゆくような、綺麗なドレスはないわ」
「心配ご無用。ほれっ!」
魔法使いが杖を振ると、灰かぶりのみすぼらしい服はドレスに、ネズミは馬車を引く御者になりました。
ところがここで、魔法使いは困り顔。
「どうなさったの、魔法使いさん」
「いやな魔法でカボチャを馬車に変えるつもりじゃったのだが、この家にカボチャはないのかね」
「カボチャなら昨夜の夕餉に出してしまって、それきりよ」
「そそそ、それは困る。どうにかしてカボチャ的なモノで構わないから持ってきてくれんか。でないとシンデレラ、おぬしも舞踏会へ行けぬぞ」
いわれて家捜ししたシンデレラが持ってきたのは、カボチャぱんつでした。
「いや確かに、カボチャみたいなモノでもとはいったけれど。コレ下着じゃん、野菜ですらないじゃん」
「仕方ないじゃない。他に見つからなかったんだもの」
「むむう。こうなったら、破れかぶれじゃ。はあっ!」
魔法使いはカボチャぱんつに向かって、杖を振り下ろしました。するとカボチャぱんつは、ぱんつ型の大きな馬車へと早変わり。
「……うわあ(ドン引き)」
「いや魔法使いさん。舞踏会へは行きたいけれど、さすがにこの馬車に乗る勇気だけはないわー」
「うん。魔法を使ったワシもさすがにナシだわ」
「どうにかしてカボチャの形に変えられないかしら?」
「お、おう。やってみよう。はあーっ!」
魔法使いが再び杖を振ると、カボチャぱんつ型の馬車は、今度こそカボチャ型の馬車へと姿を変えました。
「まあ何て素敵な馬車!」
「さあさシンデレラ、舞踏会が終わってしまう。早く城へお行きなさい」
「ありがとう、魔法使いさん。このご恩は忘れません……」
と馬車に乗り込んだシンデレラ。ネズミの御者が馬車を進めた、途端に大きな破裂音がして馬車は止まってしまいました。
「何、何? どうしたの」
シンデレラは慌てて馬車から降りると、魔法使いはしまったという表情で頭を抱えています。
「カボチャぱんつの馬車を、魔法で強引にカボチャの馬車に変えてしまった。無理がたたってしまったようだわい。この部分を見てごらん」
魔法使いが指し示す箇所を見ると、馬車に「つ」という字が書かれてあります。が「つ」の字は独りでに動き出したかと思うと、「く」の字になってしまいました。
「カボチャぱんつの馬車からカボチャだけ大事にしたまま、ぱんつ部分を変えてみたら。パンツがパンクになって、タイヤが破裂してしまった」