34 目覚め
ピピピピ……という電子音に目を覚ます。時刻は六時。冬の夜明けは遅いうえに、閉め切った雨戸のせいで光は入って来ない。オレンジ色の豆電球がぼんやり灯る薄暗い部屋の中、たっぷりと掛けた布団の下でおれはもぞりと体を動かした。
「おはよう……葵」
薄暗い中でも葵の顔は見えた。相変わらずの体勢で眠り続ける葵の顔が。
葵の眠っている和室に布団を並べ、ベビーベッドを持ち込んでふゆと三人一緒に寝る日が続いていた。最初の頃は居間で赤ん坊と二人寝ていたのだが、夜泣きしてもバタバタ動いていても葵が起きないことに気が付いてからは、和室に少し暖房を掛け一緒に眠ることにしたのだ。
「フユは……まだ寝てるか」
立ち上がりベビーベッドの中を覗き込み、すやすやと眠るふゆの頭をそっと撫でた。一緒の布団で寝てもいいのだが、うっかりつぶしてしまったりしないかが心配で、結局柵付きのベッドで寝かせている。
ふゆの夜泣きはそんなにひどくはない。産まれたばかりの頃は何時間かおきに起きてしまっていたが、最近は少し収まってきている。おれもゆっくり眠れて助かる。
「う~ん……と」
両腕を上に突き上げてぐっと背伸びをする。縮こまっていた筋肉が伸びる感覚が気持ちいい。深く息を吐いて着替えに取り掛かる。が、いろいろ着込んだ最後に靴下がないことに気づいた。昨日用意したつもりだったのに。
「あれ……取りに行かなきゃだ。……大丈夫だろ、まだ寝てるしな」
おれはベビーベッドの上のふゆをちらっと見て、起きる気配のない葵を見て、障子を開けて二階へ向かった。素足の足裏に伝わってくる冬の冷たさ。暗いけれど歩き慣れた廊下を危なげなく進んでいく。
「ふー寒い」
閉め切った家の中なのに今日は特別寒い気もする。一月も下旬であるが、今日雪が降るなんて言ってなかった気がするけど、もう一枚着るものを増やした方がいいかもしれないなぁ、なんて思いながら箪笥をごそごそ探り、温かいセーターを発掘した。去年葵が編んでくれたものだ。お袋に習って一生懸命作ってくれた。おれと子供たちの分を編んで、自分のを編み始める前に春になっちゃったんだよな。
靴下をはき、セーターを着込んで温かくなったおれは、子供部屋をひょいと覗き異常がないことを確認してから下に下りた。
今日の朝ご飯は何にしようか……といってもソーセージを焼いて卵焼きを作るくらいしかできないけど……。味噌汁の具は何にしようかな、なんてそんなことを考えながら和室に戻った。布団を畳まなければならなかったから。
でもおれはその場で立ち尽くした。布団のことなんてすぐに頭から消え去った。
豆電球の薄明かりに照らされた人影。暗がりの中、ベビーベッドの傍に立っている人の姿。
この家に大人の身長の人間はいない。泥棒でも入らないかぎり、おれと、葵しかいないのだ。
「あ……おはよう、栄……」
暗くても、ふにゃりと笑ったのが分かった。いつもの、あの笑顔で、葵が笑うのが。
「あ……おい……?」
「うん、ごめんね。また眠りっぱなしで。もう大丈夫だから」
おれは踏みしめている畳の感覚も掴めないまま、ふらりと和室に入った。あおい。葵がいる。
あれほど待ち望んだ日が、また唐突にやってきた。何日も何日もただ願うばかりで、待つばかりで、どうしようもない感情にばかり捕らわれる日々が、ようやく……。
「葵……よかった……」
おれは葵の腕を取った。一瞬よろけたがすぐにおれに体重を預けてくれた葵の腕が、当たり前のように背中に回る。そのぬくもりと、柔らかさと、手触りと、存在全てを確かめるように必死で抱きしめた。
「栄、ありがとう。赤ちゃん、元気そう……」
くぐもった声が胸の辺りから聞こえた。抱きしめすぎたか、と少し腕を緩めると、葵がまっすぐにおれを見上げて笑っていた。
ああよかった。葵も元気そうだ。なんだか一回り痩せたような気がしなくもないけど、いつもの葵だ。ケロッと起きてくれた。もう、それだけで、いい。
「うん、元気だよ、すごく。でも……ごめん、葵が眠ってる間におっぱいあげたりとか……勝手しちゃったんだけど」
ミルクに関してはどうも一日二回は葵の母乳でないと嫌がるのでそうしてやっていた。葵自身の水分が足りなくなるといけないと思ったので、葵にも数時間おきに水をあげていた。手段は……おれが嬉しいので口移しであった。……ごめん、葵。勝手ばっかりした。
けれども葵は笑ったままで首を振った。うん、多分気にしないって言ってくれるだろうとも思っていた。仕方ない部分も多かったしな。
「えっと、それで……な。赤ん坊の名前だけど……出生届の期限があって、間に合わなそうだったから……おれ、出してきちゃったんだ」
ずっと心に引っかかっていたことだったので懺悔するような気持ちで話題に出してしまったが、その瞬間、葵の瞳がきらりと光ったように感じた。……うっ、本当によかったんだろうか、おれが漢字を選んでしまって。
「うん、栄が決めてくれたならそれでいいよ……? どんな名前……?」
葵の心の内は分からなかったが、優しく微笑んでくれたので意を決した。ごくりと唾を飲みこんで、和室の柱に張った命名の紙を指差す。
「名前は、ふゆ、だよ……。多分音はふゆで間違いないだろうと思ったんだけど、漢字は……分からなかったから。ハルと一緒に辞書引いて選んだんだ。葵が好きそうな漢字を。……どう、かな……?」
親父の達筆で書いてもらった、『芙柚』の字。
芙は蓮の意味だ。別名で芙蓉というらしい。柚は言わずと知れたゆずのこと。葵が好きな植物を表す漢字を拾ったのだが。
おれに抱きしめられたまま、葵は柱の名前をじっと見つめていたが、しばらくしてほっと息を吐き、すり寄るようにしておれの胸に頬を押し付けてきた。
「……うん、素敵な字だと思うわ……。ふふ、好きよ。ありがとう、栄……」
蕩けるような瞳でうっとりと名前を見続けている葵だったが、おれは不安が拭えなくて確認してしまう。
「ほ、本当か? よかったのか? そもそも音は、ふゆで間違いなかったか?」
「うん、もちろん。はる、なつ、あき、ふゆで揃えたかったの。これで四季が揃ったね……本当にありがとう、栄」
ああよかった、と安堵感が一気に押し寄せ、脱力と共にまた葵の身体を抱きしめた。葵の髪に頬ずりをし、つむじにキスを落とす。葵はくすぐったそうに身じろぎしたが、また背中に腕を回してぎゅっと力を込めてくれた。
「栄……本当に本当にありがとう……」
囁くように告げた言葉の意味も捉えられなかった。葵の吐息の温かさがおれの胸に伝わって、どうしようもなく嬉しくて。
葵がいること。ここに、おれの前に。また元気に起き上がって話をしてくれて、抱きついてくれて。
そのすべてがどうしようもなく愛おしくて、狂おしいほどに大切で。
自分の身の内から突き上げる衝動のままに、ほんの少しだけ体を離して距離を開け、そのまま唇にキスをした。
「んっ……」
久しぶりのキスに戸惑うように声を漏らした葵であったが、おれは葵の様子に構う余裕もなく、しばらくの間キスに夢中になった。
いつの間にか目を覚ました芙柚が、ベビーベッドから不満げな顔で存在を主張してくるまで。
*
起きてきた子供たちの第一声は騒がしいものだった。
「お父さん、今日の朝ご飯は……え!? お母さん!?」
「ま、ママっ、おか……おかーさん! おかあさん!」
「ふえ~ん、おかあさん、おかあさんがいる~!」
三者三様であったが、声を上げた後の行動は一緒だった。
「もう、皆でくっついちゃって。くっつかれたらお母さん動けないわ。ご飯ができないわよ?」
三匹の引っ付き虫にくっつかれた葵は、菜箸を持ったまま苦笑した。どうしたらいい? と言う顔でおれを見たので、おれも笑いながら首を振った。諦めて相手した方がいい、という気持ちで。すると葵はちょっと思案した後でコンロの火を消し、菜箸を置いて三人を抱きしめた。
「三人ともごめんね……? お母さんずっとねむちゃってて……」
羽留はともかく、双子はまだ葵の腰くらいまでしか身長がない。二人の髪を優しく撫で、そして羽留の背中に手を回してとんとん、と叩く。
「おかあさ~ん……」
葵にぴったりとくっつきながら呟いたのは誰だったんだろう。でも三人みんな同じように思っているに違いなかった。
ほんの数週間のことだったけれど、母親とふれあえなかったのは子供にとって辛い経験だったのだ。眠っている葵の傍に行って静かに話しかけたり、添い寝したり、結構好き勝手にやってるなと思って見ていたけれど、語りかけても返事がなかったり、抱きしめ返してもらえないのは堪えたのだろう。一方通行は辛い。
おれも同じだったけど、子供たちにとって『お母さん』の占める割合はすごく高かったみたいだ。
三人はしばらくの間葵にくっつき、顔を擦りつけていたが、落ち着いてくるとゆっくり顔を上げてまじまじと葵を見上げた。
「お母さん……なんかやせた?」
最初に口を開いたのは羽留だった。心配そうに見上げるその様子に、葵は羽留の髪をそっと撫でて返す。
「ちょっと、やせたかもね。でも大丈夫、これからたくさん食べるから、すぐ元に戻るわよ。心配しないで」
おどけたように言う葵に、羽留はひとまず納得したようだった。
「おかあさん、これからずっとおきてる?」
次に声を掛けたのは奈津だ。葵は笑って答えた。
「うん、起きてるわよ。夜は普通に寝るけどね、朝になったらちゃんと起きるから」
奈津も髪を撫でられ、照れくさそうだがすごく嬉しそうだ。
「これからは、おかあさんがごはんつくってくれる……?」
亜希の発言に葵は一瞬きょとんとして、おれを見た。そんなにおれの作る料理はまずかったか。おれは苦い顔で葵を見つめ返したが、葵は首を傾げて亜希に返事をした。
「うん、作るわよ。そうだ、今度からアキも一緒に作ろうか? お母さんの料理教えてあげるね」
葵は腰を屈め、亜希に目線を合わせて言った。亜希はぴょんぴょん跳ねながら「わーい」と喜びをあらわにしている。隣で「おかあさん、おれもいっしょにやるー!」と元気よく手を挙げたのはもちろん奈津で、羽留はクールな笑みを浮かべて三人の様子を見ていたが、その内心はおれには分かっている。……分かるぞ、羽留。だが、生暖かい視線を送っているのがバレたのか、羽留は一瞬こっちを見て嫌そうな表情を浮かべた。なんと。自分はおれとは違うと言いたいのだろうか。いや、料理下手同盟はおれとお前で組むしかないと思うぞ、多分……。
しばらくそんな感じで盛り上がっていたのだが、ひとしきり騒いだ亜希のお腹がぐーっと鳴ったところで解散し、葵は朝ご飯を作るのを再開した。
子供たちを洗面所に行かせた後、おれは葵の傍に行って、葵がフライパンを器用に操りながら卵焼きを作っていくのを見ていた。
「……卵焼きくらいなら自分でもうまく作れると思ってたんだけど……やっぱりダメなんだなぁ」
奈津がお母さんの大きな卵焼きが食べたいと言っていたのを思い出して苦笑いする。おれに作れるのは卵焼きと言ってもスクランブルエッグなのだ。しっかり形のある出し巻き卵風のこういうのはできない。それに多分味付けも違うんだろう。
「私が寝ている間、栄が作ってくれていたの? 栄って料理できたっけ。私そう言えばみたことない……」
きれいに焼き上がった卵焼きをひっくり返して皿に乗せながら葵が言った。
「いや、がんばって作ってはみたけどさ、やっぱりうまくはできないよ。ご飯くらいは炊けるから、後はもうすっごく簡単な炒め物とか……肉焼いたり魚焼いたり……。でも子供たちは葵のご飯食べたがってしょうがなかったよ。よかった、ほんとに。これ以上葵が起きてきてくれなかったら、もう繰り返しの料理に飽きて子供たちが発狂するとこだったかも」
冗談半分、本気半分で言うと、葵はあははと楽しそうに笑った。
「下手でもいいよ、私も栄の料理食べてみたいな。今度一緒に作ろうね……」
「おう」と返事をしながら、明るい光の中で改めて葵の顔を眺めた。まじまじと見つめてみると、なんだか憑き物が落ちたような、すごくすっきりした表情をしていた。いや、朝日がきらきらと反射していただけなのかもしれないけれど。
「……ん? 何かついてる?」
葵が顔を押さえて首を傾げるのを、今度はこっちが笑みを浮かべて返す。
「いや、葵楽しそうだなぁと思って。なんだか輝いて見えるよ、リフレッシュしたっていうかさ」
すると葵は「りふれっしゅ?」と一瞬考え込んだ後、納得したように頷いて微笑んだ。
「……そうだね、リフレッシュしたかも。これからは、毎日楽しく過ごすのを目標に生きていこうと思うわ。忙しくなりそう!」
大輪の花が咲くように鮮やかな笑みを浮かべて、葵はそんなことを言った。ついさっきまで数週間眠り続けていたとは思えないほどに軽やかで、いきいきした表情。
おれは何か違和感のようなものを覚えたが、それが形になる前に他のことに気を取られた。
わーん、と響いてきた声は芙柚だ。葵が起きたあと芙柚も目を覚ましたので居間に連れてきて、コタツの布団の上に転がしておいたらまた眠ってしまったからそのままにしていたのだが、さすがにお腹が空いたんだろう。
「はいはい、今行くよ」
卵焼きを切り分けようと包丁を握った葵が動こうとするのを制しておれが動いた。
葵は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべて頷いた。よろしく、と任された気がしておれも嬉しくなる。
芙柚を抱き上げて台所へ戻ると、洗顔を終えて戻ってきた羽留がてきぱきとミルクを作っていた。奈津と亜希はテーブルを拭いたり食器を出したりして朝ご飯の準備をしている。そしてそれを呆然と見る葵の顔を言ったら。
こちらを見てぱちぱちと瞬きをする葵に、おれは苦笑で返す。だって子供たちがいろいろできるようになったのは、ダメな父親であるおれを助けてくれたからなのだ。別に葵が眠っている間にスパルタ教育で仕込んだわけでも、おれがやれと言ったわけではない。強いて言うなら心根の優しい子供に育ってくれたことに感動を覚えるだけで、すべてはおれの家事能力の足りないところに帰結してしまうのだ。
「……本当に……」
葵が何かをぼそっと呟いたけれど、うまく聞き取れなかった。笑っているのにどこか泣きそうな表情に見えたのは気のせいだろうか。
「あおい?」
尋ねたけれど、葵は笑って首を振った。
「子供たちの成長が楽しみだねって思っただけ」
さっき本当に、そう言ったのか? と頭の中では思ったけれど、それをぶつける気にはなれなかった。だって今朝は本当に楽しい笑顔で溢れているのだ。新しい日の光が窓から差し込み、子供たちは笑っている。ただそれだけで寒い空気すら包み込んで温めていくようだった。家の中だけ春になったような。
子供たちのきゃらきゃら騒ぐ声を耳にしながら、おれは言葉を飲み込んで障りのない返事をした。
「ああ……そうだな」
そんな声と同じように落ちた視線が、腕の中の芙柚を捉えた。口を開いて、こちらに手を伸ばして何かを訴えている。葵に似た芙柚の大きな瞳は、茶色の中にうっすら緑が滲むような色をしているのだが、その大きな瞳が何かを言っている。
「どうした、ミルクはもうちょっと待ってろ、今冷ましてるから」
揺すってあやすと芙柚は瞬きを二つしてから不意に泣き出した。
「わー、だから待ってろって」
「お父さん、はい、温度どうかな。大丈夫そうだけど」
羽留がナイスタイミングで哺乳瓶を渡してくれた。羽留のミルク作成も手慣れたものだ。料理はできないけど、ミルクはオッケーなのだ。基本は器用で賢いからな。
おれは自分の頬に哺乳瓶を当て、温度を確認してから芙柚の口元へ持って行った。だが、一度口に含んで飲みだしたものの、なぜか首を振って飲もうとはしない。
「あれ、なんでだろ、いつもと同じなのにおいしくないのかな」
羽留が心配そうに言うと、食卓の支度を終えた葵がやってきて芙柚を覗き込んだ。
「栄、私がやってみる」
「ああ」
葵は危なげなく芙柚を抱き上げると、芙柚の顔をじっと見た。芙柚も抱いている人が変わったのが分かったのか、不意に泣くのを止めてじっと葵を見上げていた。ダイニングの椅子に腰掛け安定した後で哺乳瓶を差し出すと、芙柚は問題もなく元気にミルクを飲み始めた。
「……なんだったんだろうね」
呆れたように、不思議そうに肩を竦める羽留に、おれも肩を竦めて返す。
「結局、お母さんがいいってことなんじゃないか?」
……まぁ、実は昔、羽留が小さかったときに似たようなことを経験したけどなぁ、と口には出さずに思い返す。
まさか芙柚もテレパシーとかやりださないよな、と一瞬思ったが、今していないんだからないだろうとも思う。羽留の時は生まれてすぐに使っていたし。芙柚の力は封印したってアンナさんも言ってたしな。お母さんが一番落ち着くのだろう、きっと。生まれてからほとんど抱っこしていたのはおれだったとしてもだ。
「みんな先に食べ始めていいわよ、お腹空いたでしょう?」
芙柚にミルクをあげながら、葵はそう言った。居間のコタツテーブルに陣取っている亜希と奈津はすでに箸を握ってそわそわしているのだ。ほんと可愛いなぁと思いながらおれもそちらに移動した。
「でもおかあさんといっしょにたべたいから」
「まってる」
健気にもそう言ってじっとしている双子に葵は笑み崩れ、「じゃあそっちに行くわ」と立ち上がった。
それぞれの定位置に座っての朝食。ひさしぶりの感覚になんだかちょっとわくわくする。
「あ、ご飯」
「いいよ、僕がよそうから」
「はるにいちゃん、おれおおもりね!」
「わたしもー!」
「おいおい、そんな急にたくさん食べれるのか?」
「ふふ、いっぱい食べて。おかずもたくさん作ったから」
久しぶりの家族団らんに、浮かれているのはおれだけではなかった。また今日から、こんな温かい時間が流れるのだと思うと感慨もひとしおだった。笑顔の中心にいる葵にちらりと視線を向けて、にやけてしまう顔を隠すためにご飯をかきこんだ。飯のうまさも格別だ、昨日の夜セットしたのはおれだからいつも通りだっていうのに。
子供たちもおいしい、おいしいと言いながら箸を進める。
ああ、いつまでもこんな日々が続くといい。
いつまでもこんな風に楽しく過ごしていきたい。
葵がいる日々が、いつまでも続きますように。