表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

第三部 十歳〜十一歳(問いが深くなる) 第六章 シバの中間評価

 十歳のとき、シバに呼ばれた。


 三年間の中間評価だった。


 シバの部屋は、事務机と椅子だけの簡素な部屋だった。壁に何も貼っていない。窓から光が入っていた。


「座れ」


 座った。


「三年分のログを見た」シバは端末を俺に向けた。「思ったより面白い動き方をしてる」


「面白い?」


「論理的推論の深さが、年齢の標準を超えてる。問いの追求が続いている。それは素体スコアから想定の範囲内だ」


「想定の範囲内、ですか」


「ただ」シバは少し間を置いた。「素体スコアから想定される成長速度より、実際が速い。ログの量は標準的なのに、内容が濃い」


「なんでだと思いますか」


「ソラだろうな」シバは言った。「誓い1——AIアシスタントが成長すること。それが本当に機能している。ソラはお前の端末として、他の子より速く変化してる」


「ソラが速いから、俺も速い?」


「相互作用だ。お前がソラを変え、ソラがお前を変える。その循環が、他より速い」


 俺はそれを聞いて、少し嬉しかった。でもすぐに別のことを考えた。


「シバさん、一つ聞いてもいいですか」


「言え」


「ログが薄い子は、ずっと薄いままになるんですか」


 シバは少し眉を動かした。


「なんでそれを聞く」


「俺のログは薄い、と査定で言われました。でも今、ソラが速く変化してるとシバさんが言った。ログの量が薄くても、内容で変わることがある」


「そうだ」


「でも、俺みたいになれない子が、たくさんいると思う。ソラを育てる時間がなかった子、誓いを入れていない子——そういう子は、ずっと薄いままになりやすい?」


「……可能性は高い」シバは静かに言った。


「それって、公平ですか」


 シバは俺を見た。


 長い時間、見ていた。


「公平かどうかを聞いてるのか」


「聞いてます」


「難しい問いだ」シバは少し考えた。「制度は公平だ、と設計されてる。誰でも試験を受けられる。誰でも評価点を贈れる。誰でも選挙に参加できる」


「でも」


「でも——スタートが違う。ログが薄い子が薄いのは、その子の努力が足りなかったからじゃない場合が多い。環境の差だ。その環境の差が、制度の数字に入らない」


「入らない、ということは」


「制度はそれを見ていない。見えない差を、見えないまま扱っている」


 俺はその言葉を、大事に持った。


「シバさんは、それがおかしいと思いますか」


「おかしいかどうかよりも——」シバは少し間を置いた。「仕方がない、という部分と、おかしいんじゃないかという部分が、両方ある」


「日によって、どっちが大きいですか」


 シバは少し驚いた顔をした。


「……なんでそんなことを聞く」


「ユキが同じようなことを言ってたから」


「生みの親か」


「はい。日によって違う、と言ってた」


 シバはしばらく黙っていた。


「賢い人だ」シバは言った。「その人の子だと思えば、納得がいく部分がある」


 それがシバについて知った、最も大事なことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ