第十二章 ミコとの別れ
寮を出る日の朝、ミコが廊下で待っていた。
お仕着せを着ていた。まだラプラス社の子どもだ。ミコは十七歳まで、あと二年ある。
「行くんだね」
「うん」
「誓いは全部揃った?」
「三つとも、入れてる」
「私はまだ二つ」ミコは言った。「三つ目が決まらない」
「二つでもAIの能力は半分になるんじゃなかったっけ」
「なる。でも、変な誓いを入れるより、今の私にはその方がいい気がして」
「三つ目、ヒント欲しい?」
「ヒントって、あなたが言えること?」
「俺が言えることじゃなくて——ミコ自身が一番怖れてることを、誓いにするのがいいかもしれない、とは思う」
「一番怖れてること?」
「誓いって、向かう方向だと俺は思ってる。向かうのが怖い方向が、一番向かう価値がある方向かもしれない」
ミコはしばらく俺を見た。
「それって、私が一番怖れてることは何だって聞いてる?」
「聞いてる」
ミコは少し下を向いた。
「……間違えること」ミコは言った。「何かを間違えて、それが取り返せないことになること」
「それが一番怖い?」
「うん」
「じゃあ——間違えたとき、立て直す力を持つこと、とか?」
「……それって、誓いになる?」
「なると思う。間違えないことを目指すんじゃなくて、間違えた後に戻れることを目指す」
ミコはしばらく、静かに考えていた。
「考えてみる」とミコは言った。
「うん。時間はある」
「あなたとは、また会える?」
「制度の中で生きてたら、どこかで重なると思う」
「数字の上で重なるのか、それ以外で重なるのか」
「両方かもしれない」
「両方か」ミコは少し笑った。「あなたらしい」
「なんで」
「どっちかじゃなくて、どっちも、って言う人だから」




