2 安心感のスケルトン
レッドローチがいた道に戻り、歩いていく。
いくつか、分かれ道があったが、左手の法則を思い出し、全部左側の道に行くようにした。
左手の法則ってなんかの漫画で見た気がするが、洞窟内で迷ったら左手を壁に当て、そのまま壁に沿って歩いていくと、出口に辿り着くというものだ。
適当に右左行くよりもいいか、と思いつつ進んでいく。
ぽちゃんと水が滴る音が聞こえ、小走りに音の方に向かってみる。
広々とした空間の中に、水が溜まっているところがある。
特に生き物がいる感じはしなく、水が天井から落ち水面に当たる音だけが部屋に響き渡る。
自分がどんな姿か気になっていたのもあり、水面に反射する自分自身を見てみる。
うん。メガネのスケルトンだ。
地球にいたころにかけていた黒縁のメガネのままだ。
『やっぱりメガネかー。わかっていたけど、見てみると若干ショックだな』
そう思って水面を見ていると、見ていたところから何かが飛び出してきて、咄嗟に後ろに飛び退く。
水面から出てきたのは、毒々しい紫色をしているカエルみたいな魔物だった。
『鑑定』
種族名:ポイズンフロッグ
やっぱり毒系統のカエルのようだ。
後ろの水面から、3、4匹だろうか。ぞろぞろと立て続けに出てくる。
このまま戦うと囲まれそうなため、通路のほうに移動しようとするも、最初に出てきたボイズンフロッグが、口から液体を飛ばしてくる。
『うわっ』
ギリギリで液体を避けるも、後ろのポイズンフロッグたちも液体を飛ばしてくる。
『ファイアウォール』
火の壁をイメージし、魔力を集め魔法を形成。
スケルトンの身長と同じ高さくらいの火の壁を出し、ポイズンフロッグの液体を燃やすも数が多い。
まだ、ファイアウォールに込めている魔力が少ないからか、長時間は維持せず、ポイズンフロッグの液体が当たるたび、ファイアウォールも脆くなっていく。
そのまま後ろに後退しながら、通路に行こうとするも、火の壁を突破してきた液体が体にかかる。
『うっ』
触れた個所が熱い。
たぶん種族名の名前の通り、毒を飛ばしてきたのだろう。
痛みを我慢しながら、もう一度ファイアウォールを出し、なんとか通路に逃げ込む。
「この通路なら、なんとか戦えそうだ」
この洞窟は、光る苔によって、明かりはあるが、ほんのり明るい程度だ。
『くらえっ!必殺メガネフラッシュ!!」
魔力をメガネに込め、左右のレンズより強力な光を浴びせる。
洞窟内でしか暮らしていないであろうポイズンフロッグたちは、突如として浴びせられた強力な光によって、回避行動をとったり、動きを止めたりしている。
「おお!これは思った以上に効いているな。攻撃し放題だぜ」
ポイズンフロッグたちが、混乱している状況でファイアボールを連続して繰り出す。
全部で5匹いたため、4匹をファイアボールで燃やす。
2匹を倒したあたりで、メガネが光った。
残っている1匹は、実験用だ。
『わけがわからない状況だろうが、お前は実験に付き合ってもらうぜ」
今まで、魔法でしか倒してこなかったため、スケルトンの物攻撃はどのくらい強いのかを試したかったのだ。
『おらっ』
地球にいたころでは、暴力行為をすることは一度もなかったため、実際できるのか不安ではあったが、メガネに転生したからか抵抗感なく殴ることができた。
「ぐええっ」
3発ほど殴ったり蹴ったりをすると、ポイズンフロッグも動かなくなる。
最後のポイズンフロッグを倒したところで、再度メガネが光った。
『全部で5匹倒して、二回光ったよな?鑑定」
名称:目鏡 翔
種族:アーティファクト(メガネ)、スケルトン
装着者:スケルトン
ステータス:攻撃力60 魔力8/130 耐久力:12/60(スケルトン)80(翔)
スキル:遠近眼、鑑定、念力、念話、自然治癒、スキル共有、装着、魔法回路、初級剣術、装着者ステータスアップ(極小)、new毒耐性、new麻痺耐性、newマップ作成
毒耐性:毒に対し、耐性がつく
麻痺耐性:麻痺に対し、耐性がつく
マップ作成:今まで歩いた道を記録し、マップ化できる
意外と危なかったのではないか?
耐久力も1/4以下になっているし、魔力もほとんど底をついている。
『まあ、結果オーライか』
少し楽観的過ぎるかなと思いつつ、魔力も耐久力も時間と共に回復するため、休憩しながらスキルの確認をする。
あの液体には、麻痺の効果もあったのだろう。
耐性スキルはいくつあっても嬉しいものだ。
こういうスキルは後々重宝するものと、異世界ものの小説を見ていた記憶を思い出す。
『それにしても、マップ作成か』
マップ作成のスキルを発動してみると、今まで歩いてきた道が、視界に大きく見える。
これ、マップが視界を遮ってるから、見ている時に魔物に襲われそうじゃないか?と思っていると視界の端の方に小さく切り替わる。
『おお、これは便利だな』
一通り、スキルを確認し終わったころには、魔力と耐久力も全回復していた。
『そういえば、スキル装着をポイズンブロックの死体に切り替えることって可能じゃないか?』
そう思うと、早く試したくなり、スケルトンから離れる。
魔法を使っていたからか、念力もスムーズに動かせるようになり、以前のフラフラ感も無くなっていた。
スケルトンから離れた瞬間、スケルトンの体は崩れ落ちる。
『ごめんよ、スケちゃん。すぐ戻るからな。』
少しの間かもしれないが、初めての装着者であり、ここまで一緒に苦楽を共にしてきたスケルトンには愛情を持ってしまう。
ポイズンフロッグの死体にメガネをかけ、スキル装着を発動する。
『やっぱり、スケルトンよりだいぶ視界は低いな。とりあえず、ポイズンフロッグのステータスを確認してみるか』
地球のカエルよりは、全然大きいが、それでもスケルトンと比べると視界は低く、あまり慣れない。
名称:目鏡 翔
種族:アーティファクト(メガネ)、ポイズンフロッグ
装着者:ポイズンフロッグ
ステータス:攻撃力20 魔力130/130 耐久力:3/25(ポイズンフロッグ)80(翔)
スキル:遠近眼、鑑定、念力、念話、自然治癒、スキル共有、装着、魔法回路、装着者ステータスアップ(極小)、毒耐性、麻痺耐性、マップ作成、new粘液、new毒生成
粘液:体内で粘液を生成し、体から出すことが可能。粘液には麻痺効果が付与される。
毒生成:体内で毒を作り出すことが可能。ただし、自分の毒耐性より強いものを作成することは不可。
物理攻撃で、死体が損傷していたからか始めから耐久力がだいぶ低い。
それに、攻撃力や耐久力を考えるとスケルトンって意外と強い方なのではないか。
それに、あと時かかった粘液には、毒生成で作った毒も混ざっていたのだろう。
スキル同士は組み合わせによって、だいぶ強くなるかもしれない。
ポイズンフロッグのステータスを把握した後、またスケルトンまで念力で戻り、装着を発動する。
『スケちゃん、ただいま!』
やっぱりスケルトンの方が、安心感があるな。