飲めばわかる水
コンビニで、見慣れないブランドの水を見つけた。
説明書付きの水なんて珍しい。
「この水を一口飲むと友人が見えます」
「この水を二口飲むと家族が見えます」
「この水を三口飲むと世界が見えます」
「この水を飲み干すと真実が訪れます」
冗談だと思って面白半分で買い、軽い気持ちで一口飲んだ。
すると、部屋の隅にいた“黒い影”に気付いた。
見えていなかっただけで最初からいたらしい。
二口目で、家族の“皮”がずれているのが見えた。
まるで中に別の何かが入っているようだった。
三口目。
壁の模様が人の顔で出来ていた。
この水を飲み干すと真実が訪れる。
でももう飲まない。
冷蔵庫に入っていた他の飲料水も、すべて中身が透けて見えるようになった。
全部の水に、何かが浮いている。
「最初から見えてた方がよかったのか、見えないほうが幸せだったのか」
ぼくにはもう、わからない。