黄金竜に愛されし一族よ
ハッと意識が戻ると、黄金色の輝きに包まれているのに気づいた。
同時にジェイクさんの叫びが聞こえた。
「ぎゃあ!!」
私の首を絞めていたはずなのに、体が吹き飛ばされている。
『我がブレスは悪しき者のみをこらしめるものぞ! ぞんぶんに味わえ!』
厳格な女性を思わせる凜々しい声を振り返る。
そこにいたのは、空を舞う美しい黄金竜だった。その背には金髪に青い瞳を持つ、白い外套を合わせた制服姿の男性が乗っていた。
「オデット!」
「ブリザール様?」
その姿は夢でみたブリザール様の姿そのものだった。
呪いが解けたのだろうか? ようやくその姿で会えたのだ。
ブリザール様がバルコニーに降り立った瞬間、ジェイクさんが闇魔法を展開させる。
「おのれ、ブリザールめ!」
黒魔法で作った黒い球が放たれたが、ブリザール様が展開させた結界が跳ね返す。
そのままジェイクさんに当たり、ダメージを受けていた。
「こ、こしゃくな……!!」
立ち上がって新たな闇魔法で攻撃しようとしたものの、再度ジェイクさんはブレス攻撃に晒される。
「うわあああああああ!!!!」
『そのように金が好きならば、我がブレスの中で息絶えるとよい!!』
ケロ様は何か思うところがあったのか、殺さずに失神させるだけに止めたようだ。
ジェイクさんは倒れ、白目を剥いたまま意識を失っている。
『ブリザールよ、その男を騎士隊に突き出せ!』
「もちろんそのつもりだ」
ブリザール様は魔法で作った縄でジェイクさんを縛り、目と口元には布を当てていた。これで悪さはできないだろう。
ブリザール様が魔法で騎士隊に通報すると、すぐに駆けつけてくれた。
自分の力で歩かせようとケロ様が提案したので、ジェイクさんは目覚める。
「なんだ、こいつらは! 私はヴェルノワ公爵家の当主となる男だぞ!」
「何を言っているんだ! 大人しくついてこい!」
「おい、乱暴に扱うな! というか、この拘束はなんだ!」
「黙って歩け!」
あまりにも抵抗を繰り返すので、最後は引きずられて連行されていった。
その様子を見てぽつりと呟く。
「ブリザール様、すべて終わったのですか?」
「ああ、終わった」
「よ、よかったあ~~~~~」
今度は喜びの涙が溢れ出る。そんな私をケロ様は優しげな瞳で見守り、ブリザール様はそっと抱きしめてくれた。
「ブリザール様のお体が黒い炎に包まれたとき、もう終わったと思いました」
「私もそう思っていた」
けれども運よく攻撃を受けた瞬間、呪いが解けたという。
「呪いが解けたら、本体に意識が戻るようにしていたんだ」
「そうだったのですね」
ただ、どうして突然呪いが解けたのか。それはロマン君の活躍があったらしい。
「ロマンが最後の石版の欠片を発見し、霊廟へ運んでくれたようだ」
『すべての石版が集まると、我もふ化できたのだ!』
ブリザール様へかけられた呪いは、ケロ様の力で相殺させたようだ。
復活し元の姿となったケロ様と、呪いが解けたブリザール様は揃ってやってきたという。
「本当に助かりました」
「それはこっちの台詞だ。オデットのおかげで、私達は助かったのだ」
『そうぞ!』
ロマン君は離れで待っているという。早く帰って感謝しなければ。
「ブリザール様、ケロ様、私達の家に帰りましょう」
「ああ」
『そうだな!』
ケロ様はお馴染みのカエルの姿と化し、私の胸に飛び込んできた。
『皆と過ごすには、竜の姿は不便だからな』
「はい!」
「何をしている。行くぞ」
みんなで離れに帰ったのだった。
ロマン君は離れの玄関先に座り込み、私達の帰りを待っていてくれたようだ。
「オデットお姉さん!!」
「ロマン君!!」
駆け寄ってきたロマン君をぎゅ~~~っと抱きしめる。
「ただいま帰りました!」
「お帰りなさい」
そんな言葉を言い合えることがどれだけ嬉しいか。胸がいっぱいになる。
「ロマン君、ブリザール様の呪いは解けたし、ケロ様の力も元に戻りました。それから、悪い人も捕まりましたよ」
「はい――!」
何もかも解決した。二度と、呪いに怯える日々を過ごさなくてもよくなったのだ。




