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婚家の墓守を押しつけられた私、ご先祖様は黄金竜だそうで、親族をこらしめてくださるそうです  作者: 江本マシメサ
第五章 すべての元凶は〝彼〟

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闇魔法

 私の足下に黒い魔法陣が浮かび上がる。


「ひっ!」

「その闇魔法は竜脈との繋がりを作る重要なものだ! 喜べ、お前はヴェルノワ公爵夫人として役に立てる!」


 私を闇魔法の素材として利用するだって? 勝手なことを言ってくれるものだ。

 すぐさま回れ右をし、霊廟の方角に向かって叫んだ。


「ケロ様ーーーー!! 助けてください、ケロ様ーーーーー!!」


 卵がふ化して助けにきてくれないものか。そんな願いと共に叫んだものの、魔法陣の周囲に鉄格子のようなものが突き出て、牢獄に囚われたような状態になってしまう。


「ケロ様ーーーーきゃあ!」


 声が反響し、自分自身の声が耳の鼓膜を突き刺すような勢いで跳ね返ってくる。


「無駄だ。お前の声は誰にも届かない。叫んだとしても、お前自身のダメージとなる」


 絶望し、その場にぺたんと座り込んでしまう。

 邪悪な魔法陣が赤黒い輝きを放っていた。


「実を言えば、このままでは闇魔法は完成しない。ちょっとした要素が必要だ」

「それはなんですか?」 

「お前の体と闇魔法を連鎖リンクさせる必要がある」


 わざわざどうしてそのようなことを言うのか。首を傾げていたら、ジェイクさんはとんでもないことを言い出した。


「以前、私が与えた飴を覚えているだろうか?」

「ああ、はい」


 たしかに私はジェイクさんから飴を受け取っていた。

 ただ私は神様に二度と飴を食べないと誓っていたので、口にせずにエリスさんにあげたのだ。


「それがどうしたのですか?」

「あれは闇魔法を練り込んだ飴だったのだ! あの飴を口にすることにより、体内で闇魔法の基礎が完成される。闇魔法との連鎖を作り出し、大魔法に耐えうる体作りを行うのだ!」


 ジェイクさんは勝ち誇ったように笑い始める。


「はははは、あーははははは!! お前が知らないうちに食べていたあの飴は、お前の体を蝕むものだったのだ!!」

「食べていませんけれど」

「は?」

「あの飴、エリスさんにあげたんです」

「お前、どうして!?」

「いや私、飴で虫歯を作ってしまったことがあってー、二度と食べないと神様の前で誓ったんです」

「なぜ、それを言わなかった!?」

「いやーーー、せっかく用意してくれたのに、突き返すのも悪いなーーーと思いまして」

「本当のことを言わずに受け取るほうが悪いと思わなかったのか!?」

「たしかに一理あります」


 悪人のくせに正論を言わないでほしい。


「あ、もしかしてこの魔法って、発動したらエリスさんが犠牲になりますか?」


 ジェイクさんはハッとした様子を見せ、魔法陣を消し去る。

 どうやら正解らしい。私を囲むように魔法陣が発生したようだが、脅しの意味もあったようだ。


「お前のせいで計画が狂った!!」

「いやいや、私にも人生設計というものがありまして、闇魔法の素材になるわけにはいかないのですよ」

「うるさい!!」


 ジェイクさんはそう言って私に飛びかかり首を絞める。


「――っ!」


 じりじり後退するも、背後はバルコニーの手すりだ。その先は地面に真っ逆さまである。

 いっそのこと、ジェイクさんを巻き込んで落ちてみようか。

 ここは二階である。地面は芝生でクッション代わりになりそうな植え込みもある。運がよければ骨が折れる程度で済むだろう。

 バルコニーの手すりを背にすると、ジェイクさんが私にのしかかって、体重をかけつつ首を絞め始めた。

 体が手すりに固定され、体重をかけることによって首を絞める力がさらに大きくなる。


「っ、ぐう!」


 ジェイクさんの体が重くて身動きが取れない。とてもではないが、彼ごと地面に落下させるなんて不可能だ。こうなる前に、なんとか私だけでも落ちていればよかった。


 だんだんと意識が遠のいていく。視界もチカチカと点滅しぼやけてきた。

 脳裏にぼんやりと両親の顔が浮かんだ。

 二人とも笑顔で、こっちにおいでと手招きしているように見える。

 ああ、やっと会えた。

 私はずっと両親に会いたかったのだ。

  喜んで駆け寄っていったが、鮮明になった両親の姿にギョッとする。

 笑顔でこっちにおいでと言ってくれているように思っていたのだが、実際の両親は必死の形相であっちにいけ! と私を追い払うような仕草を取っていたのだ。

 どうして? 小首を傾げた瞬間、背後から〝声〟が聞こえた。


「オデット、すまない、遅くなった!!」

『迎えにきてやったぞ!!』


 振り返ったら、私の視界は黄金色に輝き、光の粒に包まれる。


 ――オデット、愛おしい娘、いってらっしゃい!


 そんな両親の声が聞こえたような気がした。

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