第六編「理解者」
事故に遭い、僕の右手は義手になった。
仕方がない。
命があっただけでも、物種だ。
だがリハビリを始め、今の姿を人の目にさらすことが多くなると、周りの視線に気づいた。
それはまるで、憐れむような、怖れるような視線だということに。
人間は、自分と違う者を恐れ、遠ざけようとするのだろう。
それに気づくと、僕は誰かれ構わず、握手を求めるようになった。
誰かに、奇異の目で見られるというのは、とても不快で、……悲しいものだ。
だったら僕も、彼らが怖れるようなことをしたっていいだろう。
ほんの、意趣返しだ。
ところがある日、僕が差し出した義手を、笑顔で握り返してきた男性がいた。
彼の目からは、同情も怖れも感じられない。
本心から、僕を受け入れてくれているようだった。
──そうだ。僕が本当に求めていたのは、こういうことだったんだ。
例え、世界中の誰が僕を恐れようと、たったひとりだけでも理解してくれる人がいるのなら。
僕は喜び勇んで、彼の手を握り返す。
彼はにこにこしながら、自己紹介をしてきた。
僕も同じように、名前、年齢、症状などを話してゆく。
そして彼は最後に、
「ほら。俺の場合、こっちなんだ」
と、ズボンの裾をめくり上げながら、それを見せてきた。
銀色に輝く、右の義足を。