第四編「この声に応えるまでは」
彼女を初めて見たとき、僕の頭は爆発した。
いや、比喩ではない。
本当に頭が爆ぜて、体もろとも飛び散ったのだ。
何? 普通は死ぬって? そうだ。死ぬ……そのはずだ。
──だってのに、また今日も、僕は生きてる。
何度繰り返したのだろう。
彼女を見て爆死するが、時が戻り、生き返る。
これは俗にいう、タイムループというヤツなのだろうか。
記憶はあるのだから、彼女を見なければ、回避出来るのだろうか。
……いいや。そんなこと、無理だ。
「おはよう」
と、背後から彼女に声を掛けられた。
段々と物理的にも、彼女との距離が縮まってきてる気がする。
声も、さっきより近く聞こえた。
僕は我慢できず、そちらへ振り返り──また、爆死した。
……ああ。また戻された。五体満足な体を見回し、ため息をつく。
いつまで、このループは続くのだろう。
そして、彼女は誰なのだろう。
何故僕に、こんなことが起こったのだろう。
何もかも、ひとつもわからない。
彼女を無視すればいいって?
冗談じゃない。そんなこと、出来るものか。
だってまだ、僕からは一言も、声を掛けれていないのだ。
「おはよう」
また聞こえた、彼女の甘やかな、優しい声。
この声を聞けるのなら、僕は何度死んだって構わない。
いいや。彼女の声に応えるまでは、僕はこのループから抜け出す気などないのだ。