5話 遭遇
参った。ひじょーーーーに! なんだよクソッ! なぁにが調査の為立ち入り禁止だよ! やっと見つけた穴場だったんだぞ……森の入口付近に自生するヨクキクを見つけられたってのに! ナイキクより4倍近い値段で買取ってもらえるんだぞ!?
「アリシア! 俺は行くぞ! ヨクキク取りに!」
「待ってくださいカンネルさん! ギルドの規制に逆らったら」
「それでもだ! アレがあれば3食飯付きに、風呂までついてる宿に泊まっても余裕ができるんだぞ!? 今の馬小屋から脱却することができるんだぞ!? この時期に馬小屋とか凍え死ぬぞッ!」
「気持ちはよく分かります! でもダメです! これはギルドマスターの命令ですよ! 違反なんかしたら冒険者資格剥奪じゃ済みませんよ!」
分かってる……分かってるさ。アリシアの言うことは正しい。でもダンジョン発見の報告の次の日、たまたま見つけたヨクキクを持って帰って納品した時、あの金額で買取ってもらえるなんて知った時には……やっと馬小屋を脱出できると思ったんだ。
勿論全て取り尽くすつもりは無い。そんな事をしてしまえばまた馬小屋生活に逆戻りだ。そう思って少量しか取ってこなかったのに……
「ギルドマスターの命令です。西の森周辺への立ち入りは調査クエストを受注した者のみに規制させていただきます」
そんなアナウンスが入ったんだ。なんだってんだよ……ただのダンジョンだろ? そのうち冒険者がダンジョンボス倒して消えるだろうに……
「カンネルさん。仕方ないですよ。暫くは別の場所で他の採取クエストをこなしましょう? ダンジョンの調査が終わればまた取りに行きましょうよ!」
「いや……こうなったら」
「え?」
「ダンジョン調査に行くぞ! アリシア!」
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
俺はダンジョン調査に行く。調査の名目なら西の森に立入ることもできるし、ただの調査だ。モンスターが出たなら逃げればいい。そのモンスターの情報をギルドに提出すれば臨時報酬も出る。
「流石に危険ですよ! 私たちモンスターに襲われたら何も出来ないんですよ!? いくらなんでも」
「逃げることならできるさ。俺は騎士だ。ヘイト稼ぎは得意だ。ヘイトを稼ぎながら逃げて森の入口付近にいる、冒険者に助けてもらえばいい。アリシアも安全。俺も安全」
「危険すぎますよ……確かに私も逃げることだけなら出来ますけど、モンスターが一体だけとも限りません。少なからずリスクは控えるべきですよ」
「生活がかかっているんだ。納得出来ないのなら俺一人で行く。報酬はちゃんと分けるから安心してくれ」
そう言って俺はクエストボードへ向かう。目標はただ1つ。ギルド調査クエストだ!
「待って! 待ってください! カンネルさんが行くなら私も行きますよ! 私達はパーティーなんですから……だから出来れば今後はちゃんと話し合いをしましょう。
今回は私も生活のことを天秤にかけるのであれば多少のリスクは負いますが、できる限り今後はこんな危険なことはしないでください」
そうして俺たちは新規ダンジョンの調査クエストを受けることとした。
〜〜〜西の森の入口〜〜〜
普段と余り変わらない。強いて言うなら王国の兵士が検問所のようなものを用意している程度か。これなら忍び込むことも可能だろう。まぁ、森の中も巡回をしているのだろうしバレないってことは無さそうだが。
「調査に来た冒険者です。こちら受注証明書になります。確認お願いします」
「ふむ、パーティーランクは……灰色? 流石に厳しいんじゃないか? 辞めろとは言わないが危険だぞ?」
「分かっていますよ。でもこの森で採取したいものもありますし、そのついでにちょこっと覗いて行こうかな?って思いまして」
「そうか、一応入口付近にも衛兵が立っている。その付近に近付かなければそこまで危険はないだろう。森の周辺の調査なら危険も少ないとはいえ、気を付けてくれ」
「ありがとう。気を付けるよ」
森に入ることは出来た。今の所は普段と変わらない風景だが……
「カンネルさん、なんか……不気味な位静かじゃないですか?」
アリシアの言う通りだ。異常なまでに静かだ。普段であれば動物の鳴き声とかそういう音が聞こえて来るはずなのだが、今の森には、まるで音が無いようだった。
「静かだな……木の葉の擦れる音すら不気味に聞こえるほどだ。ダンジョンが出現したことで周りのモンスターも含めて、兵士が討伐して回ってるんじゃないか?」
「それなら良いのですが……もし何かあったら即座に引き返しましょうね?」
もちろんそうするつもりだ。ただの動物ですら俺にとっては脅威だしな。
それからしばらく目的地に向かって歩みを進める俺達。相変わらず静かな森を進み続ける。音の無い森は陽の光が当たらないことも相まって不気味さが増加する。
「この先の広場が目的地ですよね? 何だか……すごく冷たい空気を感じますが」
「まさかダンジョンの生成場所がここだったなんてことは無いよな? それだと危険を犯した意味が無いんだが……」
不安な思いを募らせながら目的地の広場へと足を踏み入れる。丁度道からは死角になる木の隙間を通り抜けたその場所に目的のヨクキクが群生している広場があるはずだったのだが
「誰か居ませんか?」
先客が居た。まさか俺達の穴場が見つかったのだろうか……とても困るのだが
「あの〜冒険者の方でしょうか?」
「……」
「すみません? その、出来ればこの場所のことを秘密にして」
そこまで言って俺は気がついた。この距離で話しかけても反応しない異質さに。そしてソレが何かを咀嚼していることに
そして咀嚼されているソレが人の頭だということに
一応毎週日曜日の朝に更新したいと思っているのですが、仕事の休みと被るため寝過ごしてしまうことが・・・
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