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緋色の月  作者: 紅月
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プロローグ:黒い羽根

その日は、紅い月が月光で路上を照らしていた。

地面と空の間には何も無く、其の光を遮るモノは無い。

高いビルの上で、私は地上を眺めていた。

見えるのは、自動車と小数の人だけ。

探し物が見つかる筈もない。

「…大切な…ネックレスだったのにな…」

私は小さく呟く。

その声は、男性の様に低くなく、女性の様に高くない。

こんな声に成ったのはあの日からか。

「もう、12年か……」

私は思わずため息を尽く。

時は無情なモノだ。

全てを変える。

全ては不滅だったとしても、不変ではない。

不滅だからこそ変化を恐れる。

「………なんてね」

私は落下防止の柵から飛び降りる。

私が地面に触れる事はない。

私には黒い翼が在るのだから。

翼は私の意思とは別に勝手に動き、私の死を拒絶する。

地面にゆっくりと降りる頃には、翼は消えていた。

毎度の事ながら都合の良い翼だ。「もう行くか…ネックレスには名前が刻まれてるし」

運が良ければ、誰か拾って交番にでも届けるだろう。

私は、紅い月を眺めながら人混みを歩きだした。

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