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暁の歌、響け世界に2 《空の巻》  作者: John B. Rabitan
第7部 彩実祭
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4 再会計画

 それからというもの、俺は頭を抱えてしまった。

 俺が出会った、同じバッジを持つ人たちをなんとか集めたい。でも、あの日、チャコたちと話したようにかなり難しい。

 境遇的に気楽に接することができるのは、同性で今は東京にいて、そして同じ大学一年生であるあの鷲尾さんの彼氏だ。確か杉本といっていた。

 でも、あまりにも接点が弱すぎる。たった一回、わずかニ十分ほど乗った電車で話したきりだ。その後、連絡も取っていない。いや、取りようがない。

 その気になれば、同じクラスだった鷲尾さんのことだから、やはり同じクラスだった人に聞けば誰かは鷲尾さんの今の連絡先も知っているだろうし、その鷲尾さん経由で直接杉本君と連絡はとれるだろう。

 だが、高校の後輩の鎌田聖香の中学時代の友人の二人はやっかいだ。幼馴染の富永裕香(ゆか)に聞けば聖香の連絡先は分かるだろうし、聖香ならあの二人とも連絡が取れるだろう。だけれどもまず聖香と連絡を取る理由を裕香に説明するのが面倒だし、あからさまに本当のことを言うわけにもいかない。言っても信用してくれるはずはない。

 それに相手は二人ともまだまだ高校生で、しかも女子だ。変に勘繰られて、絶対に痛くもない腹を探られるに決まっている。

 これが一番難しい。

 やはり気軽なのがバイトで知り合った男子高校生二人で、連絡先もばっちりだ。だけれども、いかんせんこの二人は長野県に住んでいる。

 依然として大学では、この件に関してチャコと二人きりで話す機会はなかなか訪れない。ごくたまにほかの三人がいないこともあるけれど、結局は進展がないのだから相談のしようもない。

 やはり、あの日に出た結論通り、しばらく様子見しかないようだった。

 だからチャコとは毎日顔は合わせているけれど、夏休み前と同様の仲良しグループの一員同士でしかなくなっていた。


 こうして、秋は深まっていった。


 いつもともに行動する仲間以外にも、結構知り合いも増えている。なにしろ四月はよそ行きの顔をしていた連中も、このころではすっかり本性を現しているからだ。

 かねてからの懸案は全く進展しないけれど、俺は焦らないことにした。

 まずは、今高校生である四人が来年無事に大学に進学してくれることを祈って、来年の四月になったらまた具体的に動き出そうと思う。

 チャコにも美貴にもその旨をLINEで伝え、賛同を得ている。

 そんなときである。

 突然、LINEの着信を知らせて携帯が短く震えた。

 ケルブからだった。


[お久しぶりです]


 俺は一瞬、どう返していいかわからなかった。続いて何か用事を告げて来るのかと思って少し待ったけれど、それ以上来ない。俺の返事を待っているようだ。


 ――[こんばんは。久しぶりですね]


 送信と同時に既読がついて、返事はすぐに来た。


[例のバッジの件ですけど、その後どうですか?]


 どうですかと聞かれても、なんて答えたらいいんだ? ってか、この人は、バッジを持った人を俺が集めようとしていることなんか知らないはずだけど。

 それ以上に、俺がいにバッジを持つ人が現れたことも知らないだろう。

 チャコと美貴のことすら、話してはいない。


 ――[その後……というと?]


[もう、何人か同じバッジを持つ人が身近に現れているはずです」


 え?――と、俺は思わず声を挙げてしまった。


[その人たちを、何とか集めてください]


 ――[それは僕も考えたのだけど、状況的にかなり厳しい]


[お願いです。なんとか集めてください]


 ――[来年の春じゃダメですか?]


[それじゃあ遅いです。もう時間がないんです。どうしてもお伝えしなければならないことがあるんです]


 時間がないにしてはずいぶん長い間連絡が来なかったけど……。ずっと音沙汰なくて、ある日突然連絡来て、それで「時間がない」はないだろう……そうは思うけど、あえて言わなかった。


 ――[その大部分が高校三年生、つまり受験生なんです。ケルブさんもそうですよね?]


[強く念じてください。念じれば仕組まれます」


 そういわれてもなあ。俺の質問はスルーされたけど……


 ――[了解しました]


 今はそう言うしかない


 するとかわいいイラストの天使がぺこんと頭を下げ、「お願いします」なんてセリフも入っているスタンプが送られてきた。


 このことはすぐに、チャコと美貴にもLINEした。


[困ったねえ]


[何かいい案、ある?]


 あったら悩んでいないと思ったけど、あえて言わなかった。


 ――[とりあえず念じてみるか]


 ただ念じる野は現実逃避のような気もするけど、今はそれしかない。

 俺は祈るような気持ちで、念じてみた。


 そして、まずは手っ取り早いところから鷲尾さんの彼氏の杉本君だと思い、とにかく俺は知ってる限りの昔同じクラスだったやつらにLINEするかあるいはメールした。

 当然、ほとんどが男子だ。なかなか鷲尾さんの連絡先を知っている人はいなかったし、でも「知らない」で終わらず、それからいろいろと自分の近況報告をしてきたり俺のことを聞いてきたりするやつも多いので、そのやり取りに時間を食われた。

 だが何人目かで、自分は直接は知らないけれど鈴木さんの連絡先なら知っていて、その鈴木さんなら知っているだろうと教えてくれた人がいた。クラスに鈴木は二人いてどちらも女子だったが、クラス委員長をやっていた背の高い鈴木未来(みく)の方だという。

 さっそく俺は教えられた鈴木未来さんにLINEし、どうしても連絡を取4りたいからと言って鷲尾さんのメールアドレスを聞きだした。

 そして鷲尾さんにメールし、杉本君に会いたい旨を告げると、アドレスやIDは個人情報だから教えるのはためらわれるので、鷲尾さんが自分から杉本に連絡して俺に連絡させるという形になった。

 それ以前の鈴木さんや鷲尾さんのアドレを簡単に教えたやつは、個人情報の観念が欠如してるなと思うが、かつてのクラスメート同士だからということもあるのだろう。だから、杉本君はそうはいかないようだった。

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