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コーヒーの香りと一緒に。

作者: 奈々


自粛ムードが本格化してきて、仕事では在宅ワーク。

フリーターをしていた友達は生活が継続できるかと不安に思っている。


幸い、仕事を失うことはなくなったが外出を避け

1人の時間を悶々と過ごす日々。

30代半ばになって、こんな日が来るとは思いもしなかった。


僕は今日も自宅で仕事をしている。

システム開発のパーツ作成。

会社に通わなくていいのはストレスもたまらないし

元々引きこもりの自分には性に合っている。


「ポン」

スマホが鳴った。


君からのライン「今晩、何か作りに行くよ。」

彼女と付き合い始めたのはもう2年前のこと。

年上でしっかりしている彼女。

あまり、2人の話題にはならないが、彼女は結婚を意識してるとは思う。


「結婚しよう」と一言伝えられない自分の情けなさがたまに責められてるような気持ちになる。


その晩、彼女がうちへ来た。

自粛ムードと言えど、事務職の子はどうしても出勤しなければならないのだという。


「ちゃんとご飯食べてた?」


まるで、親みたいな心配だな。っと思いつつも

その思いやりが嬉しかった。

「うん、食べてたよ。ありがとう。2人で料理するの久しぶりだね。」


「そういえば、そうだったかも」

彼女は少し照れ臭そうに笑った。


「今日の晩ご飯の予定は?」

自粛ムードで彼女と会う回数も減り

近くに住んでいる割には月に2度程度になった。

この距離感も愛しさに繋がっているのかな。


「今日は簡単にできるように、肉じゃがとサラダだよ。お米炊いといてくれる?」


「わかったよ。ありがとう。」


彼女が食材を切っている音がする。

トントントントン

とてもリズミカルなんだ。


炊飯の準備をし終わった僕は手持ち無沙汰なこともあって、そっと彼女の頭に顔を埋めた。

「危ないよ〜座って待っててくれたらいいから。」っと笑う彼女


正直、寂しかったような気がする。

彼女がそばにいて初めて気づくような気持ち。


一緒にご飯を用意して、洗い物じゃんけんをした。

30代カップルとは思えないほど楽しい時間。


コーヒーは僕が煎れる。

食後のコーヒーを飲みながら談話してテレビを見る。

別に1人でできることなのに、彼女がいるから特別に感じられる。


コーヒーを飲み終えて洗い物をしてると君がキッチンへ来た。

2人の空気が少し色っぽい。


いつもなら、こんなに緊張なんてしないのに。

そう思いながら君の方を向く。


ただ見つめ合う時間。




そっとキスをした。



2人ともコーヒーの匂いがする。

君の匂いなのか僕の匂いなのかわからないけど。


君はいま何を考えてるんだろう。



もう一度、キスをした。





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