4歩目 森の中へ
教会は、孤児院も併設していました。
その日は、そこに泊まる事になったのですが他所から来た僕に子供達が興味深々でもみくちゃにされました。
色々な出来事があり、疲れていたのでぐっすりと寝てしまいました。
目が覚めると皆が祈りを捧げていました。
(僕を取り囲み)
「神・ルンよ、この迷える魂を導きたまへ。」
「えっ?!」
「っち、起きたのかよ。」
「起きますよ! 縁起でもない事は、止めて下さい!!」
「せっかく、神様に近づける様にしてやったのに。」
何故か不満を言われ、取り囲んでいた子供達も僕を冷ややかな目で見てきました。
ここは、教会などではなく、敵地のど真ん中である事に気づいたのです。
「は、早く、次の英雄パーティーの方の所へ向かいましょう!」
「やけに張り切ってるな。」
「それはそうでしょう! 一刻を争う事態です!!」
いろんな意味で!
「良し、俺も付いて行ってやろう!」
止めて!
危険が回避出来ないから!
「んだば、オラ畑仕事があるから帰るだよ?」
止めて!
一人にしないで!
僕は、今まで一番の速さでユイシャさんの腕を掴んだ。
何としてでもこの手を離すものかと!
「おお、ユイシャを捕まえるとは、なかなかだな。 今度から掴みの勇者と名乗るが良い。」
凄くダサい称号貰ってしまった!
「い、いえ、結構です。 それよりも早く、次の方の元へ行きましょう! 3人で!!」
聖女マコ様を置いて行く事が叶わなければユイシャさんを何としてでも連れて行きます!
そして、僕達は、早々に準備を済ませて森へと向かいました。
次は、英雄パーティーのリーダーであり、守護神とまで言われる方です。
真っ当である事を祈り、森の中を進んで行きます。
「大分、奥に入ってきましたね。」
「リーダーは、獣人だから森の奥の方が好きなんだよ。」
「なるほど。」
「リーダーの種族も大変なんだべ。」
そして、小一時間ほど森の中を進むと何やら生き物が騒いでいる声がします。
そして、さらに進んで行くと騒ぎ声と一緒に戦闘音が聴こえてきました。
「・・・・これって?」
「誰かが魔物と戦ってるだべよ。」
僕は警戒しながら2人の後をついて行くとそこには、倒れている獣人に襲い掛かっている魔物の群れがありました!
僕は、すぐに声をかけます。
「大変です! 助けないと!!」
「心配しなくても良いべよ。」
「えっ?」
その疑問は、すぐに困惑へと変わりました。
魔物の群れの中から声が聞こえてきました。
「どうした! その程度の攻撃でいは、我には、傷一つ付けられんぞ!」
「「「「「ガウガウ!」」」」」
「「「「「ワンワン!」」」」」
「・・・・?」
「ん? そこにいるのは、マコ達か?」
ムクリと起き上がった獣人は、襲い掛かっていた魔物達を剥いでは捨て、剥いでは捨てを繰り返し、近づいてきました。
次第に全貌が明らかになり、2メートルを軽く超え、傷一つ無い筋骨隆々のまさに獣人の王の様な姿でした。
僕は、逃げだしたい気持ちを必死に抑え話かけます。
「・・・・、もしかして、英雄パーティーの方ですか?」
「うむ、我は、英雄パーティーのリーダーをしている、レンチョンと言う!」
「は、初めまして、国王様から任務を任されましたフルッチと言います!」
「ほう、国王の使いの者だったか。 ご苦労!」
緊張しながらもビシッ!と敬礼をして、たどたどしく国王様からの依頼を伝えました。
僕を労ってくれるあたり、今まで出会った中で一番マトモな人なのかもしれない思いました。
そして、森の中で立ち話もあれなので次の方の元へと向かいます。
道中、レンチョン様とも次第に打ち解けて行き、大岩の様に見上げていた姿に次第に慣れてきました。
「そうか、それは苦労したのだな。」
「私なんかの話を聞いて頂き、ありがとうございます。」
「フフフ、気にするな!」
何て良い人なのだろうか!
打ち解けすぎて、心なしか目線も見上げなくて良くなってきました。
僕は、レンチョン様のおかげで任務を安心してやり遂げれる気がしてきました!
「所でレンチョン様は、お強いのですね! ・・・・?」
「そうか? ん? どうかしたか?」
「い、いえ、た、ぶん気のせいです。」
「そうか。」
おかしい。
いくら打ち解けからとは言え、レンチョン様を少し、見下ろす様になっています。
僕は、そこまで天狗になったつもりなど無いのに?
しっかり、目をこすり、再度見て見ました。
ち、縮んでる!!!!!!?
レンチョン様は、もうすぐで1メートル切ろうかというサイズになっていました!
「あ、あの、レンチョン様・・・・。」
「どうした?」
「お、お姿が・・・・。」
「ああ、これはな、危ない!!」
何処からか矢が無数に飛んできて、レンチョン様が僕を庇います!
「レンチョン様!」
「大丈夫か?」
あ、ちょっと、大きくなって、心なしか顔もツヤツヤしています。
再び矢が飛んできましたがそれも全てレンチョン様が受け止めてくれました。
外れていた矢まで。
「リーダーは、ダメージ受けると回復するだよ。」
「えっ?」
「ダメージ受けないとしぼんで消えちまうけどな。」
「ええぇぇぇ!?」
「フフフ、我は、幼少期から体が弱くてな、それに獣人は、力こそ全ての世界、親にも虐待されてな、そして、我は、ついに目覚めたのだ! 何者にも負けない鉄壁の体を!!」
「はぁ・・・・?」
「だたダメージを負わないのではない! 回復し、気持ち良さまで感じる最強の能力なのだ!」
あれ?
この能力ってひょっとして・・・・
僕は、これ以上の思考を止め、真顔で次の方の元へと急いだのだった。